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高校時代の自分と重ねて|#わたしと出停記念日

札幌を拠点に活動する劇団・弦巻楽団が、2021年夏に上演する『出停記念日』。高校演劇の名作をみずみずしい演出で上演します。
作品の魅力をたくさんの人に知ってもらうべく、作家・演出家・出演者のメッセージを掲載。テーマは  #わたしと出停記念日  です。

出演者一人ひとりの #わたしと出停記念日

作品に出演する俳優の方々に、「わたしと出停記念日」をテーマに作文していただきました。稽古で楽しいこと・大変なこと、それぞれ高校時代の思い出、再演に向けての意気込みなど。

作品をもっと楽しんでいただける内容となっています。ぜひご一読ください。


吉井 裕香

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わたしが『出停記念日』と出会ったのは、4年前の春。大学生なりたてで、弦巻楽団の演技講座に通い始めたてでした。女子高生を終えてすぐのはずでしたが、「普通の女子高生を演じる」ことは難しかったです。普通って何だ?もしかして、自分の普通って普通じゃない?この課題は昨年の再演でも残ったままでした。自分の普通と人から見た普通は違うことを痛烈に感じ続けた稽古期間でした。

さて、今年です。昨年に引き続きそれこそ「普通」ではない世の中。今は鼻水や咳の症状が出たら学校は休まなければいけないそうです。それは風邪ではなく、出席停止…つまり出停という扱いです。今まで出停なんてあまり聞かなかったのに、毎日のように聞くようになってしまったとか。

普通は普遍ではないのかもしれません。時代的にも。あと、空間的にも。この間稽古のとき、台本の中の「意外と空も広いと思わない。」という台詞にひっかかりました。意外と?空も?
住んでいるところに海が近くにないわたしは、空は広いのは当たり前と思っていましたが、沖縄に住む人たちにとっては、海の方が身近で、広いのかもしれない。また、沖縄の空の状況を考えると…などなど、自分の普通が普通ではないことを改めて感じました。
今年も、普通について試行錯誤しながらの稽古になりそうです。

柾 明日花

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ここ最近、「高校生の時、どんなことを考えて過ごしていたんだっけ」と過去を振り返るようになった。

高校を卒業してからの時の流れは異常に早く感じて、二十歳を過ぎても、年齢に中身が追いついていない感じがして不思議な心地だった。
まだまだ高校生気分なのにな、と思っているつもりだったけれど、この作品に関わるようになってから、意外と大人になっていることに気づいた。

それは、考え方が大人になったとかいうよりも、子供の頃の方が考えていたことを大人になってからは考えていなかった、ということだった。

特に作品の台詞中にもある生と死については、子供の頃、全く同じことを考えたことがありハッとさせられた。しかし歳を重ねる毎に、あまりそれについては考えなくなった。考えたくなくなってしまったのだろうか。

高校生の頃は、体と心のバランスが不安定ながらも、自分の中で哲学みたいなものを深めることにハマっていた気がする。
作品中の女子高生達を演じていると、その当時の自分の不安定さを思い出す。そんな高校生独特の「不安定さ」や「脆さ」が漂う作品に大人になってから関われるこの機会を活かして、久々に自分の中の哲学を深めてみようと思ったりしている。

柳田 裕美

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稽古は全部が大変で、全部が楽しいです。役をローテーションするので、今話している相手が自分でもあり、役をチェンジすると、今までの自分が今度は相手になるという状況に戸惑うこともありますが、自分の役は誰にでもできると考えながら演じるのはワクワクします。

高校時代はとにかく部活に熱中していました。中学に続いてソフトテニス部に所属し、強豪でも弱小でもありませんでしたが、勝ち負けを気にせず、気の置けない仲間と好きなことをやって過ごす時間はとても楽しかったことを覚えています。

自分の高校生の頃に近いと思う役はさやかです。部活とは違い、クラスにいるときの私は人見知りの極みで、できるかぎり目立たず、いかに平和に放課後まで乗り切るかを考えていました。人嫌いではないけれど、人付き合いが得意ではないところが似ているんじゃないかと思います。

同じことをやろうと決めてしまうのではなく、新しいことをやろうとこだわるのでもなく、今できる面白い作品になるように取り組んでいきます。無理のない範囲で劇場に足を運んでいただけたら幸いです。よろしくお願いします!

鈴山 あおい

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「学生の頃の一番の思い出は?」
と聞かれると、わたしは必ずこう答える。

「学生の時の記憶は、ほとんどないです!」

本当にありません。
「心に残ってる思い出」というのが、一つもないんです。

私は昔から「学校」が嫌いでした。
思い返すと、小学校高学年の頃から。
正確に言うと「組織」に属するのが、苦手でした。
決められた場所、決められた時間で決められた事をこなすというのがどうしても好きではありませんでした。
学業に不安があったわけでも、虐められてた訳でも、何か嫌なことがあった訳でもなく、ただ単に「面倒」で「窮屈」だったんです。

そんな私が去年に引き続き、学校がテーマの「出停記念日」に出演することになりました。
8人の出演者で役柄をシャッフルするという演出は、私にとって新たな挑戦であり、とてもやり甲斐を感じています。
「色々な役をやらなきゃならないって大変でしょ?」と昨年観劇してくださった方に言われましたが、私は出演者よりそれを見るお客様の方が大変(混乱するという意味で)では…?と思っています。なので、大変な思いをさせないよう(?)、よりパワーアップした「出停記念日」をお届け出来るよう、全力で取り組みます。

島田 彩華

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私が初めて『出停記念日』に出会ったのは4年前、まだ楽団員になる前でした。
弦巻楽団の演技講座発表会でお客さんとして『出停記念日』を観劇しました。
その時の演出も、出演者が代わる代わる役を交代するものでした。

一番最初のチェンジを目の当たりにした時、ぶわっと鳥肌が立ったのを今でも強く覚えています。全く予想だにしていなかったというのもありますが、立ち位置だけでなく小道具の受け渡しまで一瞬にしてやってのける技、一瞬にして違う役になる役者を見て「どうして私は今回この講座に参加していなかったのか!」とひどく後悔をしました。

そして昨年、『出停記念日』を公演することが決まり「ついに!」という気持ちでいっぱいになりました。役をチェンジする演出も変わらないこと聞きワクワクが止まりませんでした。

役を一瞬で変えるというのはやはり容易ではなく、役それぞれの理解を深める必要がありました。いつもは1役だけ、1人の事を考えればいいのに『出停記念日』は6人全員の事を考えなくてはいけないのです。6倍です。正直昨年の公演では役の事を理解しきれていない部分があり後悔が残っていたので、今年の再演は何一つ後悔することが無いよう、台本をさらに読み込み、意見を交換していきたいです。そして私が初めて見た時と同じように、作品の透明感と、ぶわっと鳥肌が立つ感覚を味わっていただきたいです。

相馬 日奈

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私は小さい頃から「女子高生」に憧れています。
校則と進路に縛られながらも3年間という短い期間を自由に生き(てるように見え)る彼女たちがなんか儚くて好きです。自分が「女子高生」になればなくなる感情だと思っていたのですが、24歳の今でも何故だがとても憧れています。自分が女子高生だった時、女子高生の自分を物理的に見られなかったからでしょうか?(当たり前)。

女子高生になっても私は私でしたし友達も友達でしたし、さほど自由でもなかったです。だから今でも「女子高生」として街を歩くどこかの誰かに夢を見て憧れてしまうのかもしれません。ただ、同時にこの感覚は失礼だとも感じます。1人ひとり性格も、抱えるものも違うのに、「女子高生」というカテゴリーで彼女達を1つに括り、“だから好き”というのは、自分がされたらなんだか気分が悪い気がします。

今回のやり方(1役を8人の役者が舞台上で交換しながら上演)で『出停記念日』に取り組んでいると、登場人物は皆個性的だけど誰が誰だかわからなくなる瞬間があります。それがいつも自分の考える女子高生の存在と似ています。
再演です!もっと皆で一人ひとりを深掘りし、作品を磨きたいと思います。

木村 愛香音

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女子高生の役で学校で友達とお喋りしてる、という設定がもう楽しいです。側から見たらくだらないことやどうでもいい話をしてる時間が大好きで、今思えば学校って友達と毎日お喋りできからめちゃくちゃ最高な場所だったんだな〜〜と。すごいおばさんっぽいけど。でも高校生からしたらおばさんだもの。

教室の暗黙のルールって誰が決めるわけでもないのにどうして出来上がるんでしょうね。
今は多様性が受け入れられる時代ですけど、作中設定の2001年はもっと抑圧が強い印象があります。
大人から「手のかからない優秀な子」を求められ、同級生からは「みんなと同じ」を求められ、自分がどこにいくのかどうなるのか分からないまま漂う感じを受けました。
「自分が無い」ことにみんな不安にならないのか、疑問を感じないのか。
高校生の頃の私はそれがとても嫌で強烈な個性に憧れていました。引っ込み思案で影が薄いところは、さやか(登場人物)に似てるけど、でも自分から変化しようとせず、ひねくれて周りのせいにしてうじうじしているタイプでした。

稽古で「高校生の時教室で何して遊んでた?」って話題になった時にまっっったく何も思い出せなかったので、
そもそも教室で遊んでなかったんだと思います。
放課後は友達とカラオケによく行ってたけど、教室で何かに夢中になって遊んだ記憶は本当にありません。
一人で夢中になるのは得意なのでアニメにどハマりしたりアイドルにどハマりしていたり本もよく読んでました。
それはとても充実していた。
家を出たくて蕎麦屋で3年間バイトして、就職に有利になるからと資格取得の勉強ばかりしてました。全然有効活用できませんでしたが。
学校サボったり、昼休みに学校抜け出してコンビニにアイス買いに行ったり、制服で帰り道にスタバ行ったり、ゴリゴリに可愛い服を着まくったりしとけば良かったな〜、勿体無いことしたな〜。

気心知れてる&信頼できる方達ばかりで稽古はいつも楽しいです。役の切り替えがやはり難しくて、ただの作業やパターンにならないで毎回新鮮にできるように、を目指してます。あと役の方向性とか姿勢や仕草を擦り合わせるのが大変です。
個人的に、日常を切り取った作品が好きです。
何も起こらない。ゆっくりと時間が流れて行く。ぼうっと見ていられるし癒される。
出停記念日も女子高生の学校での日常が描かれていて、
そういう作品に部類されると思います。(私の中では)
彼女たちにとってその日はいつもと同じ日じゃないけれど、鼻歌交じりにスキップするように駆け抜けていきたいです。
皆様のご来場をお待ちしています。
特に、昨年は劇場での観劇が叶わなかった方に足を運んで頂けたら感激です。

阿部邦彦

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昨年に引き続き先生役などを演じさせていただきます、楽団員の阿部です。
女子高生寄りの7名の中に先生や親世代のおっさんが加わる形なのですが、年齢的にも性差的にも一人だけ混ざり切っていない異物感を勝手に抱えながら日々稽古に臨んでいます。

進学のため下宿暮らしを始め、友達が一人もいない状態でスタートした高校生活はもう30年近くも昔の話。
劇中の「奈苗」のように何かに打ち込むでもなく、「さやか」のように一人で強く生きられもしなかったけど、馴染めなかったクラス以外では未だに付き合いのある友達もでき、それなりに楽しい高校生活だったことを思い出します。

この「出停記念日」が高校時代を思い出すきっかけになってくれたら嬉しいですね。

公演情報

お問い合わせ

一般社団法人 劇団弦巻楽団
メール:tsurumakigakudan@yahoo.co.jp
電話:090-2872-9209​

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