【初演の感想】むらかみなおさん「自分と母の歩いてきた道を、振り返らずにはいられない題材」|#39『ピース・ピース』札幌演劇シーズン2024-冬
むらかみなおさん(宣伝美術/デザイナー)
「実験的な企画です」
弦巻さんより初演のビジュアル制作のご依頼をいただいた際に、そう伺いました。
脚本やあらすじもまだ未定。決まっているのはキャストのみ。
「3人の女性キャストから何が生まれるか」をイメージできるようなビジュアルで、というご依頼でした。
そのような創作の過程に興味を惹かれたのもあって、チラシを納品して以降、その後の過程をあえて見ずに本編を見ようと決めました。
SNSからの情報も一切入れないよう、1ヶ月慎重に過ごして劇場に足を運びました。一体どんな作品なんだろう、というワクワクした気持ちでした。
結果、2022年の観劇で一番泣きました。
「3組の母と娘の関係」という、自分と母の歩いてきた道を振り返らずにはいられない題材が、胸に真っ直ぐ刺さってしまったからです。
個人的な話になりますが、その年はちょうど結婚というライフステージの変化があった年でした。
そして、それに続く次のライフステージについても考えなくてはいけない、そのタイミングにこの劇の主題は非常に強く入ってきました。
本編で特に印象に残っているシーンはと聞かれても意外とすぐ思い当たらなくて、要所要所で鋭く切り込んでくるから、細切れにずっと涙が出ていたような気がします。「なんでそんな悲しいことに……」とか「そりゃどうしようもないけどさあ……」とか、とにかく刺してくる。
自分と母とのエピソードなんて、いいこともわるいことも語りはじめるといつまでも終わることがありません。それらがいくつも思い出されて、自分の中での母の存在の大きさに対して涙が止まらなくなっていました。
目の前で繰り広げられる、三者三様のエピソードに対して感情が高まると同時に、自分の内側を引き出されるような、不思議な体験でした。
母・娘・語り部の3人の調和、役割が受け継がれてループする展開、それらが技巧的に積み上げられていく心地よさ。
今回の宣伝美術は、その観劇体験を濃く反映したものになっているので、ぜひ細部までご覧いただければ幸いです。
そして、2024年、舞台をコンカリーニョに移した「ピース・ピース」はどのような作品となるのでしょうか。
ぜひ多くの方にご覧いただき、刺さっていっていただきたいなと思います。(そして私もまたあの体験ができる!)
初演は一人で観劇したのを非常に後悔したので、次は誰かを連れていこうかな。すでにすごく楽しみです。
弦巻楽団#39『ピース・ピース』
舞台には3人の女優。かわるがわるそれぞれが「母」について語り、少し奇妙な、しかしありふれた母と娘の姿が描かれる。
彼女たちの口から語られる「母」の姿は、『冷たい女』、『弱い女』、そして——。
「母」について語り、同時に「母」を演じる3人の女優。
母として、時に娘としてそこに現れる彼女たちの姿から、母から娘へ引き継がれる祈り、願い、あるいは呪縛を描きます。モノローグのような、ダイアローグのような、そこにあるのは不思議な心の安らぎ。
出演
赤川楓
佐久間優香
佐藤寧珠
日時
2024年1月27日(土)〜2月3日(土)
会場
生活支援型文化施設コンカリーニョ
札幌市西区八軒1条西1丁目 ザ・タワープレイス1F(JR琴似駅直結)
TEL 011-615-4859
→Googleマップを開く
料金
前売・当日ともに
一般:3,000円
U-25:2,000円
高校生以下:1,500円
その他お得な回数券もあり! 詳細は札幌演劇シーズン公式サイトをご確認ください。
スタッフ
作・演出:弦巻啓太
照明:手嶋浩二郎
音響:山口愛由美
舞台美術:藤沢レオ
楽曲提供:橋本啓一
宣伝美術:むらかみなお
制作:佐久間泉真 ほか
主催:札幌演劇シーズン実行委員会、演劇創造都市札幌プロジェクト、北海道演劇財団、コンカリーニョ、BLOCH、札幌市教育文化会館(札幌市芸術文化財団)、北海道立道民活動センター(道民活動振興センター)、北海道文化財団、ノヴェロ、札幌市
後援:札幌市教育委員会、北海道新聞社、朝日新聞北海道支社、毎日新聞北海道支社、読売新聞北海道支社、日本経済新聞社札幌支社、HBC北海道放送、STV札幌テレビ放送、HTB北海道テレビ、UHB北海道文化放送、TVhテレビ北海道、STVラジオ、AIR-G’エフエム北海道、FMノースウェーブ、FMアップル、三角山放送局、北海道
連携:札幌国際芸術祭実行委員会
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