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詩を感じる瞬間|#わたしと出停記念日

札幌を拠点に活動する劇団・弦巻楽団が、2021年夏に上演する『出停記念日』。高校演劇の名作をみずみずしい演出で上演します。
作品の魅力をたくさんの人に知ってもらうべく、作家・演出家・出演者のメッセージを掲載。テーマは  #わたしと出停記念日  です。

脚本家・島元要の #わたしと出停記念日

おめでとうございます。好評を得ての凱旋公演というのは素敵ですね。
ありがとうございます。日本の両端にある沖縄と北海道。地理的には遠くても、それぞれ日本のカテゴリーに収りきれない独特の風土と文化を持つ共通点があります。南の島のささやかな物語が、本土をはるばると跨いで北の大地に着地し開花する。胸が高鳴ります。

拙作に貴劇団や関係者の皆様が、真摯に取り組んでこられたこと。作者冥利につきます。いや、作者冥利なんて本当は口幅ったい。自分の拙い台本による上演を最後まで見るのは辛いことが多いですが、去年の札幌公演を、DVDの映像で拝見して深い感銘を受けました。斬新な演出と、その演出に応えたスタッフ、キャストの皆様に敬意を覚えます。新鮮な観劇体験。自分で書いた台本なのに、未知の作品のように見ることが出来ました。「出停記念日?昔見たよ」という方にも是非お勧めしたいです。これを是非、生の舞台で見たい。見せたい。この思いが膨れ上がっていました。

この夏、沖縄で、あの豊かな舞台表現に触れられる。個人的にも待望の公演です。

「出停記念日」。思い入れのある作品です。台本は、私が顧問をしていた高校で、当時の演劇部員4人+その友人1人の計5人に宛てて書きました。
2001年11月8日が私たち演劇部による初演。沖縄県の高校演劇秋季大会でした。20年近く前のことです。
「全員が主人公だ。オールスターキャスト」と部員たちに宣言して台本を書きました。それぞれに本質に関わる大切なセリフ、見せ場があります。宛て書きにすることで、一人一人が物語を都合よく進めるための駒ではなく、生きた人間として存在出来る気がしました。部員一人一人へ贈る手紙のつもりで書きました。

だから、台本上では5人の登場人物を、8人の役者でシャッフルする演出は衝撃でした。役柄と演じ手が目まぐるしく変わる。眩暈がしました。万華鏡のようです。役柄や演じ手の色合い、その残像、そのグラデーションの伸び縮み。劇団ツイッターへの投稿にもありましたが、一瞬も見逃せないですね。

演じ手は異なる役柄を行き来し、男性の演じ手も少女になる。個性の向こう側にある「少女」の普遍性というものを思いました。少女というものは性別ではなく、また年齢ではなく、感受性や視点であり、全ての老若男女の中に生きている気がします。役柄それぞれの個が、その普遍性で溶けて、誰の言葉ということもない。言葉が役柄を離れて粒立ってくる。詩を感じる瞬間がありました。

演劇の豊かさに触れられる公演になると思います。

島元 要

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公演情報

ティザー映像



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