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1機目:「続・ゆっくり、いそげ」

「続・ゆっくり、いそげ」(影山知明 クルミド出版)

この本、新年に読んでいました。「就活」の違和感をめちゃめちゃ言語化されているな、と感じて、この連載のきっかけとなった1冊。

さて、1機目のヘリコプターに乗り込みましょう。

~~~ここからメモ

人は幼いころ、自分の人生の目的地を動詞のhaveで考える。そこからもう少し大人になると、動詞のdoで考えるようになる。doで人生のゴールを定義することの辛い部分は、多くの場合、それがすぐには達成できないことであることだ。

そこでbe動詞である。
「何を持ちたいか」、「何をしたいか」ではなく
「どうありたいか」。

beの充足は、doの挑戦への前向きな前提条件ともなる。

思うようにお店の売り上げが上がらなかったり、企画したイベントが不発に終わったりしたとしても、それはカフェ店主のとしての自分の「職業技術」だったり「機能性」が十分でなかったからなのであり、自分の「存在」そのものを否定しなくてもいいんだと思えるからだ。

beが満たされている限り、その上で、結果を振り返り、反省し、次はもっとうまくやってやろうと再度挑戦しようという気にもなる。そうして、ちょっとずつでもdoの達成を積み重ねていくことで、自分のありたい姿も、より信じられるようになっていく。

その関係をぼくは、beの充足を根っことし、具体的な行動・挑戦(do)を幹であり枝とする樹形のようにとらえている。

~~~ここまでメモ

昨年「チームひきだし」からの「にいがたイナカレッジ」合宿で考えた「場のチカラ」理論によれば、大切なのは場のチカラであり、場のチカラの中でも「誰とやるか」っていうのは最重要な項目となる。

影山さん的に言えば、「誰とやるか」っていうのは、
「どうあるか」つまりbeの前提条件にもなっている。

「就活の違和感」を的確についている、と思った。

自己分析で「やりたいこと・将来ビジョン」など、doの目標を見つけさせようとするのだけど、本人たちにとっては、beどうありたいか?が大切なのであって、それは言葉にすればまさにイナカレッジが言うような「暮らし方」とかそういう話になるし、「誰と働くか?」っていうことになる。

それなしに「do」の目標だけを設定し、そこに向かって自らを最適化させていくことは、影山さんによれば、根っこなしに植物を育てようとしているようなものだ。

それは植物工場のように、温度管理され、最適な養分が常に流れ込むような環境でしか育たない植物になるリスクを抱えている。そして、その養分となるのがおそらくは「他者からの評価」であり「(金銭的)報酬」である。

そして、僕は2018年は「場のチカラ」がキーワードだった(というか今も)のだけど、影山さんも「場の力」を説明している。

影山さんによれば「場の力」とは、
「空間」×「関係性」×「記憶」なのだという。

おおお。
これは、僕が言っていた「誰とやるか」「いつやるか」「どこでやるか」をもう少し長いスパンで表現したものなのではないか。

影山さんは、「場」をお店のような継続していく場としてとらえ、僕は「場」を、ミーティングやイベント、合宿などの「瞬間」の場として捉えている差なのではないかと思った。

それは僕が落ち着きがないからか、劇団員を志向しているからかどうかはわからないけど。

そして、ここからがこの本のクライマックスが始まる。

「人と場とか、相互作用によってお互いを高めていくさまは身近な事象によっても確認できる。---おでんだ。」

えええ。
おでんっスか!?

クルミドコーヒーと影山さんのスマートなイメージと
「おでん」がギャップがあって萌えた。(笑)

でも、このおでんのたとえにシビれた。

~~~以下一部引用

つゆ(場)の出汁によって、たまごも、だいこんも、こんにゃくもおいしくなるが、そこにはたらきをなしているこんぶやさつまあげや牛すじがある。

個々の具材がいかされているといってもそれらはバラバラに活躍するわけではなく、おでんとしての一体感がある。

具材の中に「引き立てられる」のが上手な具材とむしろ「場を育てる」方面でこそ力を発揮する具材とがあることにも気がつく。

~~~以上一部引用

このあと出てくる、さくらんぼの話も素敵なのだけど、それはぜひ、本書を読んでいただきたい。

このあと、場が力をもつための5か条が書いてあり、影山さんはその章を「カフェこそが、その場である」

と締めくくるのだけど、僕にとっては、「本屋こそが、その場である」、と思った。

カフェにも、空間がもっている「歴史」があるだろう。

でも本屋には、「本を贈る」(三輪舎)に書いてあるような、「思い」のリレーを経た本たちが、そして何より、先人たちの人生そのものが、そこに並んでいるのだ。

「本」という時間軸のラインと。
「場」という空間のデザインと。

それらが交差する場が本屋であると思う。

だから、僕は本屋として、ここにあるのだなあと強く思った1冊。

「就活」前にまず乗ってほしい1機です。

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