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葵花さんの連作短歌『やさしさは売り切れ』を読んで ~感想~ (1116字)

毎日短歌を詠まれている、葵花@365短歌 さん。

今回の私の note は、
『やさしさは売り切れ』という連作を
読んでの感想を書きたいと思います。

タグに「現代短歌」とお書きになられている
ように、
詠みぶりはそれと思わせる三首を
読ませていただきました。
作品の引用をお赦しいただければと思います。
(不都合ございましたら、本記事削除いたします)

まず一首目です。

もしという日没みたいな可能性浮かんだままに買ったカフェラテ

葵花@365短歌さん、連作『やさしさは売り切れ』より

豊かな詩情を感じる一首です。
「もしという」から始まり、
「カフェラテ」で終わる詠みぶりを
澱みなく読み切りまして、
カフェラテへ至る思いが豊かに
綴られています。

日没みたいな可能性、という表現に
ハッとさせられるものがありまして、
日没をこのように比喩表現なさるセンスに
脱帽いたします。

生きるという可能性を示唆しながらも、
買うカフェラテへの逡巡たる思いを
見るかのようです。

微妙な言語感覚にやはり注目します。

二首目へまいります。

やさしさは売り切れなんです ポケットに入れっぱなしの黒の手袋

葵花@365短歌さん、連作『やさしさは売り切れ』より

こちらも、微妙な心情を吐露した一首を
思いました。
読み手の解釈の別れそうな気もいたしますけれども、
一首の間に余白を挟むことで
気持ちの豊かさ漂う雰囲気作りに買っていると
思われました。

歌を読んで、その一首に思いを巡らせる時間が
とても豊かな気持ちにさせてくれます。
つまり味わい深い一首と思いました。
しばらくのんびりとこの作品と向き合っておりました。

忘れられた存在でしょうか。黒い手袋。
私の想像を置いておきまして、
一首と私の対峙する
関係性にも思いを及ばせておりました。

最後に三首目へ。

もう歩きたくない夜に迷い子のザトウクジラのように泣きたい

葵花@365短歌さん、連作『やさしさは売り切れ』より

クジラって長生きだそうですね。

三首目まで読んで来まして、
三首全体から受ける印象として、
今を生きるというテーマに即した
一連を思いました次第です。

最後の「泣きたい」という措辞が
とても活きる一首の構成を思います。

一首を通る言葉の表記、見た目にも注目されます。
バランス感覚への意識の垣間見える、
すてきな一首です。

「のように」の比喩表現を
王道的に堂々と詠みこなす手腕、
毎日努めて詠まれる実力に感服いたします。

迷い子のザトウクジラのように、
作者の心境のリアルタイムを
封じ込めた一首のやはり素敵です。

☆彡

恐れながら、
葵花さんの御歌を読ませていただきました。
時間を掛けて読む甲斐のある連作、
今後も楽しみに読ませていただきたいと
思う次第です。

つる かく

葵花@365短歌 さん note


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