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自選句集『俳句幼稚園』全111句

(前書)

主に、
note 上での俳句投句の場であり、
そのコメント交流の場でありました、
俳句幼稚園で詠ませていただいた
拙句より、
自選した全111句をここに記しておきます。

設立当初、昨年(2021年)11月からの
拙句群です。

元園医 つる


1.水鳥の響灘へと渡りけり

するすみ さんとのコメントの
やり取りの弾んだ一句。
響灘(ひびきなだ)。
九州北部に面する海域です。


2.園児たち十一月を歩みをり

俳句幼稚園児さんに掛けた一句。


3.三歳や中身を知らず千歳あめ

白園長とコメント、
やり取りさせていただいた
ような。


4.ひと息の北風や立つ五六軒

蕪村の、
鳥羽殿へ五六騎いそぐ野分かな
あたりから取ったかな。


5.メビウスの輪を巡るかな冬日和

aloha さんに気に入っていただいた
一句。


6.冬座敷ランプ及ばず獣棲む

たしか、瑠璃星さん企画
だったかな。写真で詠む、
だったでしょうか。


7.鞘ふかく刀しづまれ冬がゆく

不思議と調子に乗って、
こんな詠みもしていた。


8.酸性のうれしさうな手みかん食む

よく分からないが、
みかんの句は、沢山詠ませて
いただきました。


9.座布団に蜜柑を置いてあそびゆく

気に入っている一句です。


10.学校へ行きたくないや冬の星

紫乃 さんに、感心いただいた。


11.杖つきて過ぐ学校の門の冬

老人が学校の前を通るイメージで、
詠みました。


12.学校へ閑かな遅刻寒椿

園児さんに気に入っていただいた。


13.くべてまた暖炉のほどを見つめをり

気に入っている一句です。
孤独に浸る句は好きかもしれない。


14.辿り着け中間点へゼノン問ふ

哲学的思考の一句。
ギリシャの哲学者、ゼノンの
パラドクスより。

おいもさんが、
サイエンス俳句をおすすめして
いたので、詠みました。
おいもさんは、天体望遠鏡で
詠まれていたかな。
名前を忘れてしまった。
ウェッブス?みたいな。


15.ゆき組は多し押しくら饅頭なり

余談ですが、私はつき組でした。
リアル幼稚園では。


16.枯園の朝を見やれば妻であり

朝の一場面を詠んだつもり。
フィクションです。


17.大雪の馬頭星雲一騎在り

子供の頃から、その見た目の
分かり易さから気に入っていた
星雲でした。
はらっぱのりすさんに
気に入っていただいた。


18.ボーナスの来る日も来る日も待つ身かな

これもフィクション。
私は、ボーナスを貰うような仕事の
経験はありません。


19.遮断機の上がりて凄き寒暮かな

凄き。先人が詠んでいたようなことを
思い出して使ってみました。


20.下りたればもう暮れてよし山眠る

山眠る、の季語は難しい。
もっと読む経験が欲しいところ。
まずまず気に入っている一句です。


21.鳥が来て日短しとか話すかな

これも気に入っている一句。
絶対会話していると思う、鳥は。


22.欄干の冷たくて見る水底よ

はじめさんと、コメント交流。


23.彼の人も引くなら渡そ風邪薬

かのひとって、誰かを想定して
詠んだ訳でも無く。
いっそのこと、風邪を引く人
みんなに渡したかったのだろうか、
風邪薬を。


24.新年を抱きしめたくてルールルー

全然俳句ぽくないです。
でもなんかいいと思っている。


25.暁を見るためだけの懐炉かな

なごみさんに賞された一句。
これも孤独な一句とは思います。


26.らんとして今に動くやお雛さま

紫乃 さんは人形嫌い。
怖いそうです。
そんなコメントが印象的でした。


27.ひくひくと泣く児なだめつ雛飾り

子供さんは、所構わず、
泣いたり怒ったり。
親の目線を想定して詠みました。


28.横幕のしばしば揺るる新年会

ありそうなことと思い、
詠みましたけれども、
実体験は無いです。


29.七日粥ぼしやぼしやと混ぜ食べにけり

なごみさんに褒めて貰えて、
印象良くした一句です。


30.寒鴉いとおいとおと聞こえけり

これもなごみさんに褒めて
くださり、よくした一句。
こんなおのまとぺでいいのか、
悩んでいました。

31.たまに降る雪ぎゆんとくる片思ひ

独り身なので、恋というと
片思いのことをよく思います。
これもなごみさん、褒めてくれたなぁ。


32.狩りの目や小川に出でて次へゆく

たんたんと仕事をするさまを
描きたかったのでした。


33.遠火事や指人形を止めにして

今では指人形で遊ぶ子も
減ったかな。
そこそこ発想を飛ばせたと
思っています。


34.俳人や吹雪に文字を採りにゆき

一種の境涯俳句のつもり。


35.隼の己が翼よ暮れてゆく

鶫さんに感じてもらえたかな。
コメントのやり取りをしたような
覚えがあります。


36.公園へ走る待春ママの風

自分では上手く詠めないままに
投句して悔んでいたけど、
意外に気に入ってくれる人の居て。


37.ねんねこや水平線を見つめてる

情景描写のつもりです。
母と子を描く句が多い気がされます。


38.水よれて岸へ着くころ月冴ゆる

めろさんにコメントいただいたような
記憶があります。私の詠む「月」に
感銘くださっています。


39.公園の一葉や薄氷のなか

細かい表現にこだわった一句。
句またがり。


40.子を見つつさつと洗ひし水菜かな

これも母と子の情景を詠んでるなぁ。


41.文机の木目好まし春の雪

昔の気分。


42.此の年は心尽くして梅見哉

これも想像の一句。
でも実際に見るなら、
このように気合を込めて見るだろうな。


43.かろがろと軒抜けてゆく眼白かな

かろがろと、の表現は、
先人の句より取っています。


44.いつぽんの糸よれてゆく空の凧

白園長にコメントいただいたかな。
感謝。


45.黒鍵に小指を乗せて雨水待つ

ピアノをする園児さんに、
共感のコメントをいただきました。
ありがたかったです。


46.白磁器の口なぞる指しぐれをり

この句は、note へ来る前に
詠んだもの。
渾身一句企画に応募したかな。

ラベンダーさんに
Camba で画像まで仕立てていただいて、
より思い入れのある一句に
なりました。
今とは、詠みぶりが違う感じが
します。ちょっと堅いかな。


47.春北風をふりきる鳥の飛翔かな

飛翔。私はまず避ける言葉ですが、
この拙句には必要を感じて、
詠みました。


48.暖かを車掌は見つつ京下る

かなり推敲を重ねた挙句、
そんなでもない拙句とは
なってしまったかな。
車掌には、ドラマを感じます。


49.白魚の見えては見えぬ流れかな

小西来山の句、
白魚やさながら動く水の色
に肉迫する思いで詠みました。


50.如月の飛行機の音消えゆけり

これも白園長にコメントいただいた
ような。


51.鳩尾をさすりて挑む受験子よ

緊張すると、お腹にくると思って、
詠みました。


52.蒲公英は好きと言へるや片思ひ

季感が薄くなるのかな、恋の句は。


53.もも色の長ぐつ根分見つむる子

どうも子供の登場する拙句が多いようだ。


54.春の波ロマン此れより生れにけり

観念的一句と思います。


55.風音のやうに洩れ聞く卒業歌

学校の中は詠めなくて、
学校の外ばかり詠んでいる気がする。


56.地球儀を見てます地虫穴を出づ

長い季語は、大抵句またがりに
頼ります。それでリズム感を
整えるように努めます。
珍しく、取り合わせの一句。


57.羽ばたきや二度上がりゆく春の鳥

鶫さんに感心いただいた一句。
「飛ぶ」という言葉を
使わずに詠めた感じでしょうか。


58.きざはしにふたり座りて春愁ひ

こういうシチュエイションに
憧れて詠んだ一句。
ちなみに、きざはし、は、
階段の意です。
若い頃に経験しておきたかったなぁ。


59.下車すれば汽笛あらゆる暖かさ

一句で、どこまで伝えられるか、
考えます。


60.葦牙の国の山々人々よ

日本の美しさって、どこに
あるだろう。あしかび、季語に頼りました。


61.ダンディズムまなこに宿り鶴帰る

鳥の生態は、ほぼ想像するしかない。
意外とクールかもしれない、
そんなことを思いつつ詠みました。


62.春嶺のところどころのかがよへり

実際は、輝くことのあるだろうか。


63.発てばまた戻る鳥かな紫雲英見ゆ

情景描写のつもり。


64.春コート三たびの風も新しく

季語に託して詠めただろうか。
風、つねに新しき春。


65.木蓮のびやくびゃく上がる空の雲

オノマトペ、効果を発揮して
いるでしょうか。
木蓮、わりと高さのあるので、
「上がる」と詠ませていただきました。


66.陽炎やわたくしと言ひきみと言ひ

観念的かな。


67.初雷やテリーヌ食べて口を拭く

初雷のあったとしても、
淡々として食事する
女性をイメージして詠みました。


68.桟橋へ道なりにゆく桜東風

船の停泊している桟橋へ
向かっているさなか、
桜東風(さくらごち)を受けつつ。


69.春眠も風もゲノムの運びかな

全ては遺伝情報、と仮定して、
詠ませていただきました。


70.清明や日当たりのよき赤レンガ

遮る物が無い、赤レンガをよく思います。


71.鳥雲父さんぼくもそこへゆく

亡き父のもとへ、いずれは。


72.いもうとにしたき苺の花なりき

実際、妹のいるのですが、
男勝りで、私より頼りになります。


73.長き貨車長き鉄橋春暑し

かすかに見た記憶があるかもしれない。


74.薔薇の園母が子の鼻血を見てゐ

シチュエイションを想定した一句。
見てゐ、は、見ている、の意。


75.葉ざくらの葉のうらおもて強き風

年間、わが町、近所では桜の木を
よく見かけます。


76.と思へばすすむすすむやかたつむり

気が付けば、進んでいる蝸牛。
くらいの意味のつもりで詠みました。


77.喫茶店五月も窓は窓のまま

喫茶店で一句を詠む企画だったようです。


78.獲物のみ考へてゆく青大将

見たことは無いですけれども、
こんな感じかと思われて。


79.はじけたら空かなしくてしやぼん玉

俳諧味をあまり意識せず、詠むのでした。


80.それとなく給湯室に新茶かな

これも想像一句。思いやりをイメージして。


81.葉桜の生きて証明書のごとく

あっても、ほとんど見入られる
ことのない葉桜、よくよく
生きていることと思われて、
詠みました。好きな季語です。


82.息をするボルサリーノのパナマ帽

毎朝、紫乃 さんより出される季語は、
大抵初めて見る季語ばかりでした。
パナマ帽もその一つ。
見たことはあっても、言葉は
知らなかったのでした。


83.其の先は少し夢見や麻暖簾

暖簾をくぐる時の気持ちを
思い返しながら、詠みました。


84.打ち水のつひに放ちて二三滴

バケツの水が無くなって、
最後に一振りして水を切る。
そんな所作を詠み込んだつもりです。


85.三振に俯く打者や梅雨に入る

取り合わせ。私は野球少年でした。
拙句で個人的に想像するのは、
学生野球です。


86.鳥たちの脳に知れる植田かな

脳・・・なずき。
鳥の頭の情報には、餌のある所が
インプットされているような気の
されて詠みました。


87.おんぶして浜昼顔にあそびけり

想像一句。憧憬です。


88.わが家も小さき歴史や夏至の雨

昔詠んだ一句があって。
おのおのの世界観かな夏至の雨
ここから今一度詠みました。
夏至は雨になることが多いです。

読みは、
わがいえもちさきれきしやげしのあめ。


89.楊梅を見る狭庭かな屈伸す

あげもも、と読むのだったかな。
庭付きの家に憧れます。


90.かかと裏見て駆け出せり夏の海

さわやかに元気を詠みたかった。
みんなの俳句大会応募作。


91.夏の山来てあらためて家族かな

家族で旅行に行くと、
普段付き合っている様を
改めて見直すことになる、
旅行先でのことを思って、
想定して詠みました。

みんなの俳句大会応募。
大きな賞もいただきました一句です。


92.夏の月ぐずる子抱きて見ずなりき

母親の子に忙しい日々を想像しつつ。
これもみんなの俳句大会応募作。
めろさん、コメントありがとう。


93.蚊の音や調律師とふ一生なり

一生(ひとよ)を調律師という
仕事に傾ける人を思って詠みました。


94.昼寝せし青鬼灯のなかの娘よ

ファンタジーを詠んだ、
私にしては珍しい拙句です。


95.餡蜜のまづ口にしてのち馨る

口にしてから香る、気分ですが
そんな感じかなぁと思いつつ。


96.戻り梅雨坐りなおしてソルフェージュ

楽譜を読む練習、ソルフェージュ。
ピアノを前にして、楽譜に
向き合うさまを詠んだつもりです。


97.家々の影うすうして夏朝日

昔からある季語なのだろうか。


98.風に侘びて泣くごと芒ぼうぼうたる

たまには、字余りでのびのびと
詠んでみたかったのでした。


99.うちの子のでんぐり返し秋立ちぬ

でんぐり返し。結構、人それぞれ
個性が出るのですよね。


100.小夜ひとり読書に耽るオクラ哉

完全に取り合わせのつもりですが、
距離感はどうなのか。
食べるに関する句が多いだろうなと
思って、取り合わせにトライしてみたの
でした。


101.残暑めく馬の毛並を梳きてをり

鶫さんよりコメント。乗馬もなさるそう。


102.魂や指先の先まで阿波踊り

魂(たま)。全国、色々な踊りが
あるようですが、
阿波踊りは特別な感じがします。


103.頂に坐す秋めきの剱岳

知人がこの夏、剣岳を登頂しました。
その話をお聞きして、
想像一句。


104.いつの物やらひと振りす秋あふぎ

扇子は使わないのですが、好きな季語です。


105.見かけても見すごす思ひ芒なり

俳句ポスト365に応募した一句。
私が園医を辞める際に、
ラベンダーさんよりCamba 画像に
仕立てて下さいました。

思い入れのある一句となりました。


106.夢はつね素敵なものよ花野見る

素直な気持ちで詠みました。
紫乃 さんよりコメント。私の風と。


107.秋風にオカリナ吹きて乗せにけり

なごみさんよりコメント賜りました。


108.鈴虫や狭庭に籠を移しつつ

白園長より、付句をいただきました。


109.桃剥きて水気にしかと甘さ哉

平凡な句と思っていましたが、
意外とみなさまよりコメント、
お寄せいただきました。


110.稲妻へ向かう高速道路かな

実際に稲妻に向かって、
高速道路は向かっている訳では
ありませんけれども、
なんとなく気分で。
時間帯は夕方とかのシチュエイションを
想っています。


111.稲妻や竜飛岬に波寄する

俳句幼稚園での最後の一句。
紫乃 さんよりコメントを
最後いただき、終えることに
なりました。


(以上、全111句)


(あとがき)

園医としての意識がまず先に
あったので、
俳句が上手くなりたい、とか
思ってなかったような気がします。

毎朝詠み続けました
けれども、
始めの頃に比べて、
そう上手くなったような感想を
持ちません。

ただ、気楽に作句に
当るようにはなったかも
しれません。
余計な意気込みは無くしつつ。

記録として、
記事にいたします。

お読みくださります方へ、
まことにありがとう、と
申し上げまして、
拙句のまとめとさせて
いただきます。
m(_ _)m


2022年9月2日(金曜日)朝

つる かく🍂

お着物を買うための、 資金とさせていただきます。