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【考察】女性の化粧(メイク)と男性のかつら(ウィッグ)はどう違うのだろう。

1.男性のかつら・ウィッグの持つ意味

かつらとウィッグの違いをご存知でしょうか?

厳密には、両者には違いはなく、日本語の「かつら」を英語にすると「ウィッグ」となります。

ですが、私たちの持つイメージは大きく異なるような気がします。

これは私の個人的なイメージなのですが、

かつら=薄毛を隠すもの、男性がするもの、高いもの、年配の方向け
ウィッグ=おしゃれなもの、女性がするもの、安いもの、若者向け

同じものでも、言葉が違うだけで正反対のイメージになる、という不思議なもの、それがかつらとウィッグなのです。

日本で「かつら」が世の中に浸透していったのは、1960年代後半と言われています。

この年代はアートネイチャーアデランスといった大手企業が誕生した時代で、薄毛に悩む男性向けにかつら商品が多く広がっていました。

当時のCMを見ると、アデランスは薄毛に悩む男性がかつらをつけることで幸せな家庭生活をおくっており、最後に子供が一言。「パパ、アデランスにしてよかったね」というCMが主流でした。
広告のメッセージとして、かつらをつけることで悩みから解放され、幸せな家庭を築くことができる、ということを伝えたいCMだったと思われます。

一方アートネイチャーはスポーツ選手や演歌歌手など、著名人をCMで起用。かつらをつける前とつけた後でこんなにも印象が変わる、というインパクトをだれもが知っている著名人が実践することで、広げていったCMでした。

時代の変化とともに、商品やCMは変わってきていますが、「薄毛に悩む人のための商品」というメッセージは現代も大きく変わらないでしょう。

最近では、女性用ウィッグの市場も大きくなり、ウィッグという言葉や概念が広がってきており、「メンズウィッグ」も徐々に登場し始めています。

Rakuten市場「メンズウィッグ」検索

2.化粧(メイク)もかつら(ウィッグ)も「理想の自分に近づくためのもの」なのに何が違うのか。

ある時、ふと疑問に思ったのが、
「女性の化粧(メイク)」と「男性のかつら(ウィッグ)」で
どこに違いがあるのか?です。

大きな考え方として、両方とも"より美しく、よりカッコ良く。そういった自分の理想に近づこうと身を飾るすべ"であることは変わりないはずです。

ですが、「男性のかつら(ウィッグ)」は敬遠されがちであるのはなぜなのか。

いろいろと調べるうちにその答えが見つかったような気がしています。

① 数の違い

日本の化粧人口は約5600万人と言われています。
これは日本人の2人に1人が化粧をしていることになります。
もちろん女性の中には化粧(メイク)をされない方もいらっしゃいますが、
「日常に化粧(メイク)をする」という考え方が大多数を占めていることになります。

一方、かつら・ウィッグ人口は、特に男性のみに絞ると約50万人。
つまり化粧人口の約1/100の規模となり、「ウィッグをつける人」が特別で、多数の人がつけないことが日常となっているのです。

②意図の露見

化粧は「より美しく飾ろうとする意図が露見してはいけないもの」である一方で、「実際に化粧(メイク)していることは見た目からわかり、美しくなりたいという意図が露見して構わないもの」なのです。
つまり、「美しくなりたい」という思いと「美しく見える」という実際の見た目が双方向で理解できるものです。

一方、かつら・ウィッグは「薄毛や髪のトラブルを隠したいという意図が露見してはいけないもの」の一方通行であり、相手側も、かつら・ウィッグをつけていることが見た目からはわからないので、ふとしたきっかけでその意図が見つかった時に見てはいけないものを見てしまったという感情になってしまいます。

【参考】
日本語社会 のぞきキャラくり「補遺第4回 化粧について(続)」
https://dictionary.sanseido-publ.co.jp/column/chara-hoi-04

3.かつら・ウィッグの課題は「共有されにくいこと」

YoutubeやSNSの登場により、小顔メイク、韓国アイドル風メイク、はたまたメンズメイクに至るまで、多くのコンテンツが公開されており、私たちはそれをいつでもどこでも探し、見ることができます。

これは、その動画や写真を見た時に、「こんなに変わるんだ!すごい!」「自分もやってみよう!」というように共感・共有がされやすく、それが友人や周りの人から「かわいいね」「キレイだね」と評価されるものという特徴として挙げられます。

一方、かつら・ウィッグは「つけているのがわからないほど見た目が自然である」ことが価値としてあり、友人から「今日のウィッグはイケてるね」と言われることはまずあり得ない状況であるという特殊性があります。

かつら・ウィッグには「毎日の気分に合わせてヘアスタイルを自由に変えられる」という良い点がありますが、なかなかその良さが伝わらない、広がらない、という「共有されにくい」ことが課題なのです。

そのため、特に男性のかつら・ウィッグは「それを使う=隠している、コンプレックスになっている」という、意味が単一化した範囲から抜け出せずに捉えられてしまいがちです。

ふとしたきっかけで、ある人がかつらであることがわかった時に、見てはいけないものを見てしまったという感情になってしまうのは、「本人が隠したいと思っているはずのものを見てしまった」という考え方になってしまうことに起因します。

4.変えるためには意味・解釈を拡げる

確かに最近のかつらやウィッグは技術の進歩により、とても精巧でなかなか気づかれることがないほど自然なものが多くなってきています。

ですが、どこまで技術が発展して"気づかれにくいウィッグ"に近づいていったとしても、「見つかったらどうしよう。。」という不安が100%拭い切れるわけではありません。

極論ですが、ウィッグも5000万人の日本人がつけるようになれば、それは「当たり前」の状態となり、その人が薄毛に悩んでウィッグをつけているのか、おしゃれのためにつけているのか、手軽だからつけているのか、たくさんのウィッグをつける理由が広がっていけば、見つかる不安から解き放たれるのではないでしょうか。

私は、「自然に見える究極のウィッグ」よりも「つける人もつけない人もウィッグっていいよね、と思えるような時代」を創っていきたいのです。

それが、誰もが発信・共有・拡散できる令和の時代だからこそ叶えられると信じています。

最後に. 美容整形も捉え方が変わりつつある

ウィッグとは少し異なりますが、「美容整形」も社会の目が変わりつつあるのをご存知でしょうか。

とあるクリニックのアンケート調査では、
「自分が美容整形したら周囲に言えるか」という問いに、男性82.0% 女性77.4%が「言える」と答えたという結果が出ました。

参照:東京イセアクリニック(医療法人社団心紲会) 2019年調査

まだまだ意見が大きく分かれるのが「美容整形」ですが、年代が若くなるにつれ、美容整形をポジティブに捉える割合が高くなっています。

さまざまな要因が考えられますが、SNSの登場が大きな影響を与えているのは間違いないでしょう。

ダウンタイム、プチ整形、ヒアルロン酸注射、などインフルエンサーや著名人たちがオープンに話をする動画が、年々増えてきているように感じます。

一昔前まで、「あの芸能人はイジってる」「卒業アルバムと今の顔が全然違う」といった、間違い探しで盛り上がっていた時代から、今では自らがその経験を公開し、そうやって美しくなろうと頑張る自分を応援してほしい、という方向にシフトしていっているのです。

賛否両論はありますが、それでも、悩みの底から抜け出せない誰かの一歩を、また違う誰かの言葉や行動で後押しできる時代になってきている。

この時代の流れに乗り遅れないためにも、「ウィッグ」という今はまだ特別なものをもっと多くの人の「当たり前」に広げていきたいと思っています。


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