今日の妄想【日記#2】
お疲れ様です。土日なのにnoteを綴っている つれづれ です。
昨日と今日の妄想という名の出来事を書いていきます。
前の日記で「早く寝てください」とお願いしてきたAさん。手術はどうなったでしょうか。
手術室入室は基本的に9時です。まず麻酔をして人工呼吸器にのせます。その後体位をとり、Navigation(MRIなどの画像と実際の患者さんの位置を合わせる)をおこないます。準備万端です。
まずタイムアウトという左右に間違いがないか、どんな経緯で手術に至ったかなどの確認を行います。そして手術開始。
20分程度で開頭(皮膚を切って骨を外すこと)が終わります。Navigationをつかって【ここに腫瘍があるよね】を確認します。
そのあと硬膜を切って、腫瘍を取っていきます。
実際に腫瘍を取るんだけど、まずはちょっとだけとって術中迅速診断(手術中にこれの可能性が高いよという病理医の診断)に出します。40分程度かかります。
腫瘍はメタ(転移)だと思っていたので、境界を探しグリオーシス部分を吸いながら腫瘍を一塊にしてとっていきます。
そんなこんなを続けていると、手術室の電話が鳴ります。
そして病理医から「神経膠腫、grade3相当の可能性が高い」と言われます。
「え???」
腫瘍は境界もはっきりしていて、転移と考えていました。術前も転移と考えていました。でも脳原発の神経膠腫ですか?画像的にはgrade4の膠芽腫じゃないですか?
境界明瞭だし、「神経膠腫で本当にいいのか?」、「膠芽腫だったら、8割以上は取れるし、合併症起こさないことが優先となるのか?FLAIR高信号までなんて取れないよ。」「Awake(覚醒下手術:手術中に起こして合併症が出ない範囲で細小でとる)のほうがよかったんじゃないのか?」
などが頭でよぎります。
でも手術中です。最も良い選択をしないといけません。結局、境界明瞭だから、そこを追ってすべて取るという選択としました。
手術は5時間程度を予想していたのに2時間半で終わりました。境界が明瞭ってホント素敵。
麻酔から覚ますときはいつも凄いプレッシャーがかかります。私の髪の毛の半分はこのプレッシャーで抜けているんだと思います。
そして麻酔科の先生が「わかりますかぁ、手握ってください。」と患者さんに話しかけます。
そして患者さんが手を握ったあと、ズボボボボボと挿管チューブを抜くのです。麻酔科の先生、うまいっす、血圧全然上がってないっす。
だんだんとAさんが覚醒してきます。
手も握れるし足も動かせる。少なくとも麻痺症状はなかったです。つづいて運動性失語です。抜管直後はのども痛くてあまり話したくないはずですが、声が出せるか聞いてみました。
わたし「Aさん、こえでますか?」
Aさん「・・・・・・・・・・・・・・」
わたし「手術終わりましたよ。」
Aさん「つれづれ先生、ありがとう、ありがとう」
まったく術後の合併症はありませんでした。今までで最速の「ありがとう」でした。ほっと胸をなでおろしました。
CTでも後出血などありませんでした。
今日の回診でも、術前にあった失語、巧緻運動障害はすべて改善していました。
1週間程度で病理の確定診断がでます。
凄く感謝されているけど、確定診断が膠芽腫だったら本当につらい未来をつたえないといけないなと思うつれづれでした。
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