『ザ・ディプロマット』

70/100


とにかく挙げたらキリがないほどにさまざまなトピックがてんこ盛りでありながらも、畳みかけまくる会話劇がそのひとつひとつを簡潔かつ的確に掬い上げていく、高密度な人間ドラマ。舞台は政治だが、描かれているのはあくまで人間である。

とりわけ主人公のケイトの描かれ方はとても繊細で生々しい。あれだけの能力と実績を持ちながらも、彼女を不安にさせるのはたとえば、食事をこぼさず食べることが難しいというささやかでありながらも重大な事実である。自分は夫に迷惑をかけられていると思っているが、彼女自身も相当に夫を振り回しており、そしてそこには気づけていない。そこに気づけないほどに彼女は人道的に仕事を成し遂げることに過集中である。彼女の美しさが際立つのは、ノーメイクのボサボサ頭を隠すことなく必死の形相で奔走し何かを捲し立てているとき。ありのままで思うがままに振る舞うケイトが、「人間の複雑さ」を実に自然に嫌味なく証明してみせている。夫との関係もある意味ではそれほど「奇妙」ではなく、実はむしろリアルなのでは。

シーズン1の終わり方はさすがに「おい〜」と声が漏れたわけだが、このドラマがどのように着地するのかは知りたい。シーズン2も観る。

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