『Fleabag』

93/100


驚いた。あまりの面白さに。

以前からあのサムネはたびたび目にしていて、絶対見たくないやつだと思いつつもどうしても目に入ってきてしまう。どうしても目に入ってきて気になるので調べてみたら、意外にも(主観)評価が高く、じゃあ観てみようとなった。2話目あたりまではどちらかといえば嫌悪感が強く、なのに何だか続きを観てしまう。それで気づいたら夢中で観ていて、シーズン1の最終話などはもうフリーバッグへの共感しかない。シーズン2になると、あの真っ赤な口紅が彼女の恐怖と不安と哀しみの表れであったことがくっきりと浮き彫りになり、世代も趣味嗜好も通ってきた道も全然違うのに、途中からはどこか自分を見つめるかのようにフリーバッグを見守っていた。

面白くて涙が出ているのか切なくて涙が出ているのかわからなくなるほどに、人間の複雑な在り方をそのまま複雑に、でも驚くほどシンプルに描き上げているが、それを支えるのは緻密に練り上げられた脚本と、考え抜かれた演出と、素晴らしい役者たち。一切の妥協なく最初から最後まで徹底的に全力投球で作り上げられたことがよくわかる。いつだって私はこういう仕事が見たい。

人間は愚かで可笑しく愛おしいという手垢のついたメッセージをもう一度定義し直して、観るものの心をかき乱す傑作。

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