アメリカジョッキークラブカップ2022ふりかえり

◆レース回顧

タイム:2:12.7
レースラップ:12.5 - 11.4 - 12.6 - 12.3 - 12.4 - 12.1 - 11.9 - 11.8 - 11.8 - 11.7 - 12.2
※前半61.2-後半59.4

ゆったり入ってラスト6ハロンでロングスパートをかけるような競馬で、スローではありますが前の馬はしんどい展開になりました。後方勢が数多く上位入線しましたが、体力を温存できたことと、もうひとつ想定以上に外の馬場のほうが走りやすいコンディションだったことがあるかもしれません。京成杯で見られた現象がさらに色濃く表れたような印象でした。

◆各馬寸評

1着:キングオブコージ&横山典弘
コーナー通過順:13-13-12-8 上がり3F:34.7秒

飛び上がるようなスタートでダッシュがつかず、内の最後方から。そのまま後方待機で進め、残り1000mからじわりと進出開始。自身に呼応して上がったマイネルファンロン&松岡を見ながら外を回してポジションを上げ直線へ。進路良好でフルスロットル、ジリジリ伸びて坂を上ってからも勢いは衰えず。完勝で重賞2勝目。

外差し有利の流れにうまく乗って末脚を引き出してきました。この辺は中山をよく知る関東騎手の手綱さばきに一日の長があったということでしょうか。ペースとトラック状態を絶妙にとらえたレース運びでした。それを可能にしたのはこの馬自身の体力的な強さで、長距離チックな流れへの対応力を発揮して結果へつなげてきました。お見事でした。

この馬にはレースの緩急を問わない融通性もあって、ペースで器用に位置取りを変えられる強みがあるなと思っていたのですが、今回はゲートがまずく後方に置かれたのが功を奏した形。自分の競馬ができていたらここまでの末脚を発揮できていなかったかもしれないと考えると、やや恵まれた部分はあったかもしれません。

割となんでもできる馬で、それほど制御にも苦労はなさそうなのでノリ騎手とのコンビは相性がよさそうです。過度に末脚のキレを問われなければGⅠでもやれて良さそうな気はします。大阪杯で内枠を引けたら台風の目になるかもしれません。

2着:マイネルファンロン&松岡正海
コーナー通過順:12-12-11-6 上がり3F:35.1秒

大外からスムーズなスタートを切り、二の脚では無理をせず内に寄せながら後方を追走。残り1000mでキングオブコージ&横山典の進出でフタをされそうになり、それをきっかけにコーナーを外から回ってスパート。4コーナーでのキレキレのコーナリングで先団にとりつき直線。先頭を奪う勢いも、やや伸びを欠きその隙にコージが強襲。食らいつくも盛り返すまではいかず2着まで。

ステイゴールド系はAJCCと好相性ですが、どでかい穴を持ってきましたね。ステゴ系は長く速めのラップを踏みつつコーナーを曲がってくるのが非常に上手いので必然的に中山を得意とはするのですが、今回はポジショニングもハマって大躍進を遂げました。比較的道中のペースが厳しいと無理が利かないタイプではあるので、スローかつ差しが決まるペース・トラックバイアスがモロにプラスに働いたように思えます。ただおそらく仕掛けはもうワンテンポ待ちたかったはずで、コージ&ノリの進出で外に出せなくなるのを避けて出して行った分、ラストが少し甘くなったように見えました。

では次どこで狙うかというと、なかなか狙いは立てにくそうです。前半部分で無理は利かない、でも差しに回った方がいいという難儀なスタイルで、スローかつ差し優位のレースがあるかどうか。展開次第でエプソムカップといったところでしょうか。

3着:ボッケリーニ&横山武史
コーナー通過順:4-4-7-8 上がり3F:35.5秒

ややふらついた発馬から前を取りに行き、好位の外目に位置。そのまま進めていくも、斜め後方のオーソクレース&ルメールが早めの仕掛けを打ち、それに続いた後方勢が外から進出してきたため外への出口を塞がれ、やむなく直線では内を選択。しぶとく伸びるもこの日の馬場コンディションでは外に分があり、4着との争いをなんとかハナ差で制し3着。

武史騎手は直線に入るまでの進路の選択肢の多さに長所のある騎手だと思っているのですが、4角の進め方でこのように後手を踏むのは結構珍しいなという感想でした。予想より外の仕掛けが続いて脱出の機会を失ってしまったように見えましたが、なんとか最短距離を突いて格好はつけたかなというところでしょうか。あそこで外を捨てて内に賭ける判断の速さはさすがでした。もちろん馬も伸びないインに入りながらしっかり走ってきてはいたので、得意のスローペースとはいえ強さの一部は見せられたかなと思います。

ただ現状だと別定GⅡがギリのラインでしょうか。スローのレースならお崩れはしないもののというところ。このレースのようなタフな展開というよりは、ポジショニングと一瞬の鋭さで出し抜けるような展開のほうが好みのように見受けられます。押せ押せローテですが金鯱賞は合いそうで、鳴尾記念や毎日王冠も悪くないかなと思います。

5着:ポタジェ&川田将雅
コーナー通過順:6-7-10-8 上がり3F:35.4秒

まずまずのゲートから押していきボッケリーニの後ろに。3角で全体の仕掛けの意識が上がったときにやや立ち遅れポジションが後ろになり、外目を意識し押し上げようとするもリカバーしきれず直線へ。幸い前が伸びていたので進路はあり、全開で追ってジリジリ伸びるも、ラストでも差し込み切れずに5着敗退。

ポタジェの場合どうしても要所での反応の鈍さが善戦マンキャラを引き立ててしまっています。お姉さんのルージュバックは切れ味の塊のような馬でしたが、こうも違うかという印象です。スローで余裕もあったぶん、外差し勢と比べ後半の最速地点での伸びで顕著に見劣りました。もう少し体力勝負の様相が色濃く出てこないと難しいかなと思っていて、ちょっと距離を延ばしてみてみたい気もするのですが、長距離名門の友道厩舎においてその素振りがないということは、陣営としてはあまり適性を見出してないのかもしれません。

6着:オーソクレース&クリストフ・ルメール
コーナー通過順:6-6-3-2 上がり3F:35.8秒

ゲートでやや後手を踏み、二の脚で中団までリカバー。外目を進めつつ残り1000mの手前から仕掛けはじめ外を意識。進出していき4角手前では番手の位置へ。そのまま押し切る勢いでスパートをかけるも伸びが甘く、後方待機勢の外差しになす術なし。ラストまで脚色は冴えず、まさかの6着完敗。

レース中は強気だなと思ってみていたのですが、要所での反応や鋭さで甘さを見せる部分は今までのレースでも見て取れていてかつ前半のスローペース。体力の残量に余裕のある状態であれば仕掛けどころがゴール板に近くなればなるほどキレの要求値が高くなるので、オーソクレースにとっては難しい展開になると判断してルメール騎手は早めの進出という手を打ったのだろうと思うので、その判断は正しかったと思います。

ただもちろん体力をたくさん使う戦法ではあるので、そういう意味で仕上げ途上でレースへ向かう態勢が作り切れていなかったのは結果に対してクリティカルな影響があったと思います。特に変化なしのコメントでプラス10キロと出たときは嫌な予感がしましたが、まるまる的中してしまいました。

これをもって上で通用しないという風には思っていなくて、天皇賞春に出てくれば変わらず有力候補だと思います。お父さんもお母さんも叩き良化タイプだったなあと思うので、日経賞・阪神大賞典・大阪杯とどれでもいいのでもう一回使って春天へという使い方でもいいかなとは思います。むしろまた直行して仕上げ不足となってしまったら嫌だなという感じですね。

9着:エヒト&北村宏司
コーナー通過順:8-8-7-11 上がり3F:35.8秒

出足はつかずに押しながら後方のインに位置。そのままついていき全体のペースアップに合わせて進出を図るも、3角からずるずる後退していたキャッスルトップをかわすのにブレーキを強いられ位置取りがダウン。後手を踏みつつ外を意識しながら直線へ入り、自分なりに伸びてくるも坂を上ってもう一伸びのしどころで前がふさがりまたもブレーキ。そのままなだれこみ9着まで。

久し振りにこの騎手を買って久しく買っていない理由を思い出しました。行くところ行くところでノッキングを起こしていて、これは伸びるものも伸びんなという感想です。どういうレースを思い描いていたのかが見えないような道中ではありました。

流れは間違いなく向いていただろうなと思っただけにスムーズに運べていたらどうだっただろうとは思うのですが、脚自体は余していたようにも見えるのでちょっとまだ追いかけたい存在ではあります。体力優位・伸び伸び走れるコースで出てきたらハンデGⅡくらいまでは検討したいです。

◆あとがき

体調を崩しており原稿に向き合えるのが遅くなりました。
まず自分のために書いているものなのだということを念頭に置いて、遅くなろうがきちんと書き切りたいと思います。
ご覧いただいている方がいるのであれば、いつにもまして感謝申し上げたいと思います。


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