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薬学生が公務員試験を受けてみた

はじめに

はじめまして、『公務員試験 (県庁)』と『109回薬剤師国家試験』を受験した24卒です。

結果は、公務員試験が約30人中5位、国試は276/345点で上位6%でした!

ネット上に薬学生が公務員試験を受ける場合の情報が見当たらないため、私の事例を残します。
この記事では、公務員試験の概要と各種試験の対策を紹介していきます。参考になれば幸いです。


5年と6年のスケジュール

恐らく一番気になるのがこれだと思うので先に載せておきます。

Googleカレンダーに残ってたのをもとに作ったよ

一次試験(教養試験)について

はじめに、私が受けたのは関東型の公務員試験(県庁)です。
全国型や中部北陸型では多少異なるためご注意ください。

教養試験の概要

教養試験は知能分野と知識分野に分かれています。
知能分野は全問必須解答(22問)
知識分野は選択解答(18/28問)
合計40点満点の試験です。

【知能分野】
文章理解(英語を含む)
判断推理
数的推理
資料解釈

【知識分野】
社会科学(法律、政治、経済、社会一般)
人文科学(日本史、世界史、 地理)
自然科学(物理、化学、生物、地学、数学)

⚠️注意⚠️
私が受験した県は、一般行政等と異なり専門試験は免除でした。
国総や都庁のように、薬学の知識を必要とする専門試験が実施される場合もあるので注意しましょう。

注意すべき点は知識分野の選択解答というのが「社会科学と自然科学を解答する」という意味ではなく、28問の中から文字通り好きな問題を選んで解答することができるということです。

また、知能分野、知識分野ともに科目ごとに出題される問題数には偏りがあります。勉強計画を立てる上でかなり重要だと思うので、しっかり確認しましょう。
(薬学生には自然科学の出題少ないのがめちゃくちゃキツいですよね…)

各科目の出題数

(引用:公務員のライト https://senseikoumuin.com/chouzyoukyu-suuteki/

これらを踏まえた上で、私が立てた戦略と勉強方法について紹介します。

戦略

さて、教養試験の戦略を立てる上で最も重要なことは、教養試験は5割~5割5分以上を取れば通過できるということです。

私は、数的処理と自然科学で満点を取って5割を取ることにしました。(力技)
社会科学、人文科学に手をつける時間的余裕がなかったというのが一番大きいです。
なので、私の教養試験対策のメインはこの2分野になります。

結果的に6割取れてなんとかなりました。

6割取れて良かった


勉強の開始時期と科目の順番

勉強を開始したのは5年生の5月です。
実務実習がⅠ・Ⅱ期だったので、Ⅱ期が始まる直前くらいからのんびりやり始めました。あとは研究室がそれなりに忙しいところだったので、実務実習が終わってからも卒研しながら片手間程度にやっていました。

科目の順番は、
数的推理→数的判断→文章理解・資料解釈→自然科学→人文科学です。

ある程度ネットで調べて、「数的推理と数的判断は最初にやっておいた方が良い!」という意見が大多数だったので、手始めに数的推理から始めました。
理解に時間がかかるので数的からやりはじめるのをオススメします。

あと、文章理解(英語と国語)と資料解釈に関しては、スー過去の問題を解いた感じ割と解けたので、数日で終わらせて次に進みました。

使用した教材

  • 新スーパー過去問ゼミ 6

  • 地方上級公務員試験 過去問500

正直、過去問500は大して使いませんでした。スー過去をメインで使っていました。


勉強方法

出題されやすい問題を解くのが一番効率がいいと思います。
私は、スー過去の出題頻度が☆2以上の単元の必修問題と問題を解くことにしました。(出題頻度A,B,Cは国家や市役所なども含まれるので参考にしませんでした)
必修問題と問題を解いても理解が足りないと感じた場合は他の問題に手を出して、納得するまで解くようにしました。

結論から言うと、この勉強方法でよかったと思います。試験本番では似たような問題ばかり出ましたし、突然☆1以下の問題が出るということはそうそうないと思います。

過去問500はスー過去を始める前にどんな問題があるかを見たり、スー過去が終わったあとに力試しみたいな感じで使ってました。

試験を受けるに当たって

時間配分がものすーーーーーーっごく重要です。薬学部の模試は時間が余ることが多いと思いますが、これに慣れていると痛い目を見ます。公務員試験は本当に時間が足りません。じっくり考える暇がないのです。

しかし、県庁は試験問題をすべて公示していないので、自分で時間をはかって一度解いてみるということができません。
そこで、当時の私は「試験の予行演習がしたい」という軽率な理由で都庁の採用試験を受けました。
(都の採用試験は県よりも先に実施されます)

結果、数的と英語長文で死ぬほど時間が取られて最後の方の問題は適当にマークシートに塗り絵して終わりました。
県庁の本番でやらかさなくて本当によかったです。(都庁は落ちました)

試験時間と各科目の問題数を今一度よく確認して、「数的と英語長文に1問4分かけるとしたら、生物とか化学の問題は1分で解かないといけない.…」といったように時間配分のシュミレーションをしておくと安心だと思います。


時間配分はほんとに大事だよ!

二次試験(論文試験・人物試験)

二次試験は1日目(論文試験&適性検査)と2日目(人物試験)が別日に実施されます。

1日目(論文試験&適性検査)の概要

私が受けた論文試験は75分で900~1100字を書くというものです。
ちなみに、実際に出題されたテーマは以下のようなものでした。


高齢化と生産年齢人口の減少で、医療体制の整備・拡充が求められている。
1)高齢化と生産年齢人口の減少によって本県に与えられる医療体制の影響はどのようなものが考えられるか。
2)「医師の補充」の取り組み以外に、行政はどのような取り組みを行うべきか


この2つのお題目に対して解答し、文字数を稼がなくてはなりません。

そして、論文試験も教養試験と同様、時間が足りません。設問の理解と書くことの骨組みを5分以内で決めて、残りの時間で細かい部分を肉付けしながら書いていくといった感じです。書き終わってから骨組みを修正する時間はありません。ほぼ一発勝負です

続いて適性試験です。
適性試験は、「内田クレペリン検査」「YG性格検査」でした。
どんな検査かは以下のサイトを参考にしてください。

適性検査は普通の人が普通にやってればまず問題ないです。

余談ですが、内田クレペリン検査だけはもう二度とやりたくないです...。ひたすら計算をし続けるので精神も腕もボロボロになりました。

内田クレペリンだけはほんとに嫌だ……


論文試験の対策

使用した教材は、
「寺本康之の小論文バイブル」です。頑張って1週間で2周しました。
(定期試験と被って対策に割く時間がなくて ;  ;)
スー過去と同じく、こちらもテーマ毎に頻出度が☆1~☆3で表記されているので、☆2以上のテーマを読み込みました。

結果、見事に☆3の「高齢化」が的中したので、問題点と取り組みを3つくらいスラスラと書くことができました!

他にも、県が出している長期計画・基本計画にざっと目を通しました。各県が『〇〇県5カ年計画』などを出していると思うのでそちらを参考にすると良いと思います
これを読むことで、県の問題とその取り組みを大まかに汲み取ることができます。
「寺本康之の小論文バイブル」では、各県の具体的な数字や問題点と取り組みにフォーカスすることはできないので、県の長期計画は軽く見ておくと良いと思います。

最後に、小論文は独自性などは全く必要ないので、当たり障りのないことを定型文に沿ってミスなく書いていくことが重要です。
よっぽど突拍子もないことを書かない限り、文字数を稼げれば小論文は大丈夫です。

書いてる時は段落の字下げや誤字・脱字に注意しましょう。

2日目(人物試験)の概要

1番配点が高いので人物試験で合否が決まると言っても過言ではありません。

私が受けた県の面接は、1日の中で2回の面接を行いました。それぞれの違いを以下に記載します。

1回目(15分)

  • 面接官:人事2名(40代と50代くらいの人)

  • 広い会場に3名の受験者が入場し指定のブースで面接を行う

  • アイスブレイク的な質問がある、表面的なことを次々に聞かれる


2回目(30分)

  • 面接官:薬剤師+人事 合わせて3名(30代と40代くらいの人)

  • 1部屋に受験者1名が入室し、面接を行う

  • 最初から一つの質問を深堀りしてくる


人物試験の対策

対策というかアドバイスがいくつかあるので箇条書きにします。

  • ときおり笑顔を交えて楽しそうに話す

  • エントリーシート(ES)を深堀りされることを想定する

  • 話している面接官の目をしっかりと見る

  • 大学の就職課の人を頼る。

当たり前のことかもしれませんが、たったこれだけです。

中でも最も大切なのが1つ目の「笑顔を交えて楽しく話す」です。
面接で話している内容で他と差がつくということはそうそうありません。結局は印象で決まるわけです。
勘違いしないで欲しいのが、印象といっても顔面の良し悪しではありません。楽しそうに話せばそれだけで本人の目には活力が宿りますし、それは聞き手にも伝わります。
人は楽しそうなものに惹かれる生き物ですからね。
余裕があれば、身振り手振りも加えるとかなり良いと思います。

それから、1回目の面接も2回目の面接も基本的にはESの内容に沿って質問を投げてきます。

ESで書くよう指定されていたのは
・動機
・採用された場合、従事したい仕事
・ガクチカ

です。これらについて深堀りしてきます。深堀りに対応する場合、どんな質問がくるかを想像力を巡らせて前向きな解答を考えておく、というのも良い手ですが、それよりもこれらを書いた根本的な軸をしっかりと意識した方が、本番でどんな質問が来たとしても5秒ほど考えて返答できるようになるので重要視するべきです。

例えば私の動機の根本にあったのは、
「健康において、衛生は医療よりも根本的なものであり、より多くの人の健康にアプローチすることができる仕事だから」
というものです。この軸を基本として、どういう仕事がしたいのか、なぜこう思うようになったのか?などなど考えていました。
自分が心から思っていることなので楽しく話せますし、矛盾したことを本番で言い始めてしまう心配もありません。おかげさまでのびのびと対話することができました。

面接練習は大学の就職課を利用しました。1回1時間くらいでみっちり、「こんな質問がくるかもね」とか「こういう言い回しの方がインパクトがあっていいんじゃない?」といったアドバイスを多くもらいました。
あとは、youtubeのshort動画で流れてくる面接関連のものを観て、自分に当てはめてイメージしていました。

私の面接練習は一度でしたが、先に入庁した友人は、面接練習を100回以上やったと言っていました。その友人は、スライドを使ったプレゼン方式の面接だったことと、極度に緊張するのが怖くて100回を超える面接練習をしたとの事でした。
面接練習を何回やるかは人それぞれです。
個人的には、不安が自分の中で許容できる大きさに収まるまでやればいいと思います。


面接で答えられなかった質問

3つあります。1回目の面接で2つ、2回目の面接で1つです。

・県内の保健所の数はご存知ですか?
・県内で最も薬剤師が多く従事している施設をご存知ですか?
・アルバイトで何かを提案した経験はありますか?

こいつらです。

面接官「県内の保健所の数はご存知ですか?
私「確か10箇所ほどだったと記憶しています。」
面接官「いや、〇〇箇所ですね。」
私「申し訳ありません。調査不足でした。勉強になります。」

面接官「県内で最も薬剤師が多く従事している施設をご存知ですか?
私「えっと...…、申し訳ありません。存じ上げておりません」
面接官「そうですか、わかりました。では次に~」
私「(答え気になる~)」

そして1番のやらかしがこれです
面接官「アルバイトで何かを提案した経験はありますか?
私「そうですね................................…(15秒の沈黙)」
私「〇〇で働いていた時の締め作業で~~.............(話始めるも着地点がない;;)」
私「すみません、やっぱりありませんでした!!」
面接官「あははは、そうですか」

しかも最後のものに至っては、面接を行うにあたり
「特定の大学名・企業名を出さないこと」

とあったにも関わらずゴリゴリにバ先の名前を言ってしまったのでほんとに詰んだと思いました。面接官が3人とも笑ってくれたのが唯一の救いでした。

大層な失敗をしましたが、面接は8割取れていました。よかった。

今思えば、保健所の数や薬剤師の従事数が多い施設に関しては、答えを知らない質問に対してどうやって対応するか?を見られていたのかなと思います。
(保健所の数くらいは正確に把握しておいた方がいいとは思いますが…)

なにはともあれ、面接本番は想定していない質問が来るかと思いますが、多少失敗してもなんやかんや耐えます。

面接は緊張すると思いますが、知らない人に自分語りをして許される場なので、胸張って楽しむのが1番だと思います。

おわりに

公務員試験は他の就活に比べて対策に時間もかかりますし、6年生の8月頃まで対策し続けなくてはなりません。
また、国試対策や定期考査、卒業研究と並行して進めなければならないので修羅の道です。行政薬剤師についての否定的な意見を見ることもあると思います。

それでも後輩の皆さんが自分に軸を持って行政薬剤師の道へ突き進んでくれるのであれば、私は嬉しく思います。
ともに公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保しつつ、適度に怠惰な生活を送りましょう。

行政で待ってるぞ!

何か質問等あれば分かる範囲で返答します。


使った教材たち

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