山小屋のクマ事情
「山」というと動物に会えそうなイメージがありますが、私が働く山小屋は標高が高すぎて動物という動物には会えません。
そんな中でも会える代表的なものはライチョウ(鳥だけど)、オコジョ、そしてクマさんです。
ライチョウはシーズン中に何度も会います。
逆に山小屋スタッフでシーズン中に会わなかったら、「お前何やってたんだ」と言われるくらい頻繁に会います。特別天然記念物なんですけどね。
人に怯えないせいか、気づいたら隣にいたり、登山道を先導してくれることもあります。鳥ですが基本的には飛ばずに歩いています。
オコジョはどうやら小屋に住みついているようで、お客さんが少ないと出てきます。小屋近くの登山道でも会うことがあります。
昨シーズンは当たり年で半月に1回くらい会えました(例年だと運が良くてシーズン中1,2回)。
どうも彼ら(彼女ら?)人に興味があるらしく、
最初はあっちこっち移動して、こちらを見てきます。こちらも興味を示していると逃げません。
逆に知らんぷりしているとすぐいなくなってしまいます。
普通の登山者の方であれば、会えたら非常にラッキーです。
それから表題のクマさん、
私のいる山小屋は隣の山小屋の方にも「あそこクマ多いですよ」と言われるほどクマの頻出地域でシーズン中1回は見かけます。
日中に登山道に出てくることはないのですが、糞はよく見かけます。
どうやら山小屋の下部にある谷で暮らしているようで、登山道を歩いていると時々谷底にいるクマを見かけます。
それがたまに道に迷ってか登山道付近まで上がってきてしまう子がいるんですね。
写真の彼(彼女?)は谷底から上がってきてしまった1頭。2019シーズンの秋口に現れました。
どうやら谷底に帰りたいらしいのですが、元来た道がわからず、通りたい方角に山小屋があるため右往左往。
こちらとしても山小屋に近づいて欲しくないので色々と対応するものだから、なかなか帰れず少し可哀想な様子です。
結局1週間くらいフラフラした後いなくなりました。無事にお家に帰れたらいいんですけどね。
クマって本来恐れるべき生物なので、普通の登山者の方であればくま鈴を身につけ、クマ除けスプレーなどを持参せる方もいます。
でも山小屋のスタッフってあまり熊を恐れている人は少ないです。
山小屋の支配人がよく言っているのが、
「クマの住処に山小屋を建てているんだからいて当然、俺たちのほうが後から来ているんだ。」と。
ただ私の山小屋のスタッフがクマに対して寛容?なだけではなく、他の山小屋のスタッフもクマに対する眼差しは温かいような気がしています。
例えば黒部源流の薬師沢小屋のスタッフである、やまとけいこさんが書いた『黒部源流山小屋暮らし』にはイラスト付きで色々書かれています。
イラストのクマさん可愛いです。カレーがどうやら好きらしいですね。
続いて山岳関係の読み物では名著の一つ、三俣山荘の故伊藤正一さんの『定本 黒部の山賊 アルプスの怪』ではクマを飼い慣らしたような話が載っています。今では考えられませんが山のプロフェッショナルたちは違いますね。
以上のような感じで山で生きる以上、クマは切っても切れない存在です。もちろんバッタリ会いたいわけではないので、暗い中では歩かないことや日中であっても登山者が少ない時期は最低限周囲を警戒しながら歩くようにはしています。
登山者の皆さまもぜひ警戒はするにしても、悪い動物と捉えないでほしいな、と思います。
つの
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