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幕間の旅

夏から秋にかけての期間限定の山小屋スタッフという季節労働をしていると、
年間で大体2〜3個の職場を渡り歩くことになります。

それぞれの仕事の期間中は長期休暇というものが無いため、
一般の人がお正月やゴールデンウィークに1週間程度休みを取るように、
仕事と仕事の合間に長期休暇を作るようにしています。

ただ一般的な会社の長期休暇と異なり、
この休みが終われば私は全く異なる職場へ移動することになります。

そのため私にとってはこの休暇は演劇などにおける幕間であり、そこでの旅は幕間の旅ということにしています。

幕間の旅で意識するのは主に3点。

①普段登ることのできない山に登る

② 山と異なる学びをする

③普段会えない人に会う


①普段登ることのできない山に登る
山に登る最良のシーズンを山小屋で過ごしているため、山小屋周辺以外の山に登ることができません。

雪が積もると難易度が格段に上がるアルプスの山々や、時間をかけないと行くことのできない地方の山々はこの期間に登ります。

中央アルプス空木岳
伯耆大山

普段は見ることのできない景色を見て、植物を見て、登山道を観察して、夏の間は行くことのできない他の山小屋に泊まったり。
山に関わる身として、自身で山の楽しみを再確認する時間です。
お客様が感じていることを、
身をもって感じること、
それはいつになっても大事なことだと常々思います。

②山と異なる学びをする
このnoteもそうですが、普段から山や宿泊業のことばかり関わっていると視野が狭くなってくるように感じます。
そこでこの幕間では山と全く関係ない場所にも行ってみます。

昨年の山小屋前には徳島へ。
鳴門の「大塚国際美術館」と上勝町の「上勝ゼロウェイストセンター」が目的です。

大塚国際美術館に展示されているのは、
陶版による原寸大の西洋絵画の複製画。
要するにレプリカです。

大学時代に専攻の英米文学と別に履修していた美術史の授業をなぞるような展示内容に
大学時代の学びを思い出します。
以下は好きな作品の一部。

ベリ・リッカード 北欧の夏の宵
ターナー 最後の停泊地に曳航される戦艦テメレール



上勝町はごみ収集車が走らない町で、ごみ集積所に各個人でゴミを持ち込み、
13種類45分別に分けることで、町内のゴミの80%以上がリサイクルされているという画期的な町です。
以前記事にしているのでそちらをご覧いただければ。


昨年の春は北海道の白老にある国立アイヌ民族博物館へ。

アイヌの自然との関わり方、
そして何より日本にはアイヌという異なる文化を持つ民族が共生しているということを肌身で感じました。

アイヌの衣服


国立アイヌ民族博物館

山と関係ありませんが、いずれも私の興味関心のあることとして、いつかnoteの記事にするかもしれません。


③普段会えない人に会う
山小屋で働いているとその期間は山小屋スタッフ以外の人と会う機会は全くと言っていいほどありません。
住み込みでの仕事の時も同様です。

そのためこの幕間の期間は無性に誰かに会いたくなります。
純粋に会いたい人、面白いことをやっている人、大学以前の友人たちなど。

山小屋スタッフであり、フリーターという立場は、大学以前の会社勤めをしている友人たちと比較すると明らかに異質です。
しかし普段から同じような人に囲まれているため、あまり気にならないという問題があります。

そこで普通に会社勤めをされていて、結婚や子育てをしている人たちはどのようなことを考え、生活しているんだろう、ということを聞いてみたいと思うのです。

また私も社会人歴がだいぶ長くなってきましたので、同級生も同様に年を重ねています。
年を重ねれば重ねるほど人生を経験を積んできているめ、興味深い話を聞くことができます。
もちろん相手にとっても私の人生は奇天烈なものでしょう。


ちょうど今回の山小屋に入る前の旅では、
9年ぶりに大学の先輩にお会いすることができました。
フランスやスイスでお仕事されたり、
日本にある大使館に勤め、
今は高松で色々と活動されている方。

世界を股にかけている方の話は私にとっては異次元なのですが、
その方の活躍に遠く及ばない私にはもっとできることがあるぞ、という気持ちにさせてくれました。


この記事を書いているのはちょうど旅の帰り道。明後日から今シーズンの山小屋勤めが始まります。
今回の旅で得た経験を糧に山と向き合っていきたいと思います。

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