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デザインの意図 -ソフトバックパック クラシックモデル-

objcts.ioが本格ローンチして5ヶ月。
ショールームには現在もたくさんの方々が足を運んでくれている。

お越しになる多くの方々はobjcts.ioやプロダクトについて調べた上で来てくれるが、伝えきれていないことは沢山ある。

今回は、すでに購入された方にも、購入検討している方にも知ってほしいソフトバックパック 開発背景や特徴について書く。


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Backpackを作るきっかけ

きっかけはとてもシンプルな欲求から生まれた。

「自分たちが妥協せず、心から満足できるバッグが欲しい」

世の中には格好良いバッグや便利なバッグで溢れている。種類も価格帯も様々で挙げればキリがないのに、自分たちが本当に欲しいと思えるバッグが無い。

「現代を生きる私たちにとって、本当に必要な機能性と美しさを併せ持つバッグがあまりにも少ない」

本当に必要な機能とは、デバイスを収納するのに適した機能性や構造だと考えているのだが、これをバランス良く搭載しているバッグは中々ない。

私の心にはいつもこんな思いが漂っていた。

「機能性と同じくらい、質感や見た目を大切な要素として設計された美しいバッグがもっと存在しても良いのではないだろうか?」

「トレードオフの関係にある機能性と美しさって本当に両立できないのだろうか?」

これらの疑問に対して自分たちなりの答えを出すべく、製品開発を始めたことが出発点となっている。


美しさへのこだわり

設計するにあたって、様々なキーワードから、

"直感的に感じ取れる高級感"
"ミニマルではあるが簡素ではない"
"ブランドらしい個性"

といった、ソフトバックパックにおいて重要であろう要素を構成していき、それらを体現するようなデザインは何だろうか?と自分自身に問いかけてみた。


1. "直感的に感じ取れる高級感"

まず決めたのはバッグの全面に革を使用すること。

革が醸し出す高級感や上質さは多くの人が直感的に「美しい」と感じ取れるほど魅力的だ。

あるデザイナーの方から聴いた話によると、フランスに本拠地を構える有名バッグブランドは「革は光をため込む素材である」と考えているそうだ。

上質な革は受けとめた光をギラつくように反射させるのではなく、上品で艶やかな淡い光に変えて放つ性質を持っており、それが「美しい」と感じる由縁の一つだ。こんなに素晴らしい素材を使わない手は考えられなかった。


2. "ミニマルではあるが簡素ではない"

余計な要素を削ぎ落とし、洗練された上品な雰囲気を引き立てるための設計が随所にある。

そのひとつがファスナーを見えない構造にしていること。

メイン収納を開閉するファスナー部分には、スポーツウェアにも使われる止水ファスナーを使用しており、もちろん防水性を担保するための選択なのだが、このファスナーは見た目上、非常にスポーティな印象を受ける。スポーツバッグやカジュアルバッグに使用されることが多いため、そのような印象を与えてしまうのだが、ソフトバックパックには必要のない要素。

ファスナーを革で覆う構造にすることで防水性を担保しつつ、スポーティな見た目を抑えてミニマルな印象を与えられるよう工夫した。折り重なった革がファスナーを覆い隠すこの構造は、革に適度な立体感を生み、光をため込む設計でありながら耐久性を担保する構造にもなっている。

そして、ポケットの数。

機能性とのトレードオフにはなるが、バッグの外側には一目見てポケットと認識できないポケットを配置している。


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「ポケットがあればあるほど野暮ったい見た目になってしまう、だけど外側にポケットが一つも無いのはさすがに使い勝手が悪い」

機能と見た目のバランスを考えた末の設計となっている。


3. "ブランドらしい個性"

このバッグの前面部分やショルダー部分には特徴的な"浮き出し加工"が施されている。前面ポケットにはブランドロゴではなく"浮き出しアイコン"を入れている。


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私はこれを"スポンジワーク"と呼んでおり、「深く愛されるバッグになって欲しい」と言う思いも込めている。

「このデザインはもっとシンプルにして欲しかった」と言われることもあるが、誤解を恐れずに言うと、そういった意見が出てくることを望んでいた。

深く愛されるバッグになって欲しいからこそ、嫌われる要素にもなりかねないデザインをあえて入れたのだ。

たとえば、高級ブランドの香水の甘美な香りが魅力的だと感じる人は多い。

これらは調香師によってあらゆる匂いを絶妙なバランスで調合することで成り立っているのだが、ブレンドする匂いの中にはかなり強い刺激臭が混ざっていることはご存知だろうか。

それ単体ではとても嗅いでいられないほど独特な匂いらしいが、その匂いを調合しないと人を魅了する香りは完成しないらしい。

スポンジワークをデザイン要素として入れたのもこの感覚に近いものがある。

ある人にとっては違和感を感じる要素かもしれないが、そういった要素を持ち合わせているからこそ、強く惹かれる人がいるのもまた事実。

"誰からも嫌われないけど、誰からも深く愛されない"

そういったプロダクトにだけはしたくない、という思いが"スポンジワーク"というデザインになってバッグに落とし込まれている。


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機能性へのこだわり

デバイスを収納するのに適した機能性として、以下3つの機能を"必要不可欠な機能性"として設定した。


"デバイスに適した収納性と保護性"
"防水性"
"軽さ"


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1. "PCポケット"

緩衝材を搭載しているだけでなく、PCポケット下部にステッチを入れて、PCがバッグの中で浮いたような状態で収納されるよう工夫した。

PCを収納する時やバッグを地面に置く際に衝撃がダイレクトに伝わらない構造にすることで、使い手を安心させる一手間となっている。

私たちが実際にプロダクトを使って検証しているからこそ、使う人にとって本当に必要な機能を搭載させることができると信じて開発に取り組んでいる。


2. "高い防水性を持つ革"

防水革についてはWEBでも説明されているが、ここでは別の話を交えながら改めて。


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「重くて水に弱い革を全面に使用するなんて、言ってることが矛盾してないか?」と突っ込まれそうな素材選択だが、重くて水に弱いというネガティブ要素は解決できると考えていた。

防水液を革の繊維まで染み込ませた防水革は、表面に付いた傷どころか革の裏面から水をかけても染み込まないほどの高い防水性がある。
そのため、あくまで私の場合はだが、雨に濡れても濡れた状態で放置している。クリームを塗るなどのメンテナンスも一切しない。

雨に濡れても、定期的なメンテナンスをしなくても、綺麗な状態で使い続けられるイージーエレガンスな革だと考えている。


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3. "軽さ"

革をバッグ全面に使用しているのに軽い理由は、軽量生地を使用しているからだけではない。

革は元々厚みがある素材なので厚みを調整しながら製作を進めるのだが、各パーツに使用する革の厚みを私自身が非常に細かく指定している。

0.5mm単位で指定するのは当たり前。パーツによっては0.2mm単位で指定することもある。

元々革製品を作る職人だった私のこだわりだ。

革をむやみに薄くすると問題が起こる可能性が高くなるため、軽くて品質が担保されたプロダクトを作るには、見た目を整えるだけでなく、ものづくりに対する知見が必要不可欠である。


意味のないデザインはない

他にもたくさんのこだわりがあるが、また別の機会もしくはショールームにて。

知っていただきたいのは「意味のないデザインなんてない」ということ。

どんなに小さなパーツだろうがステッチだろうが、機能と美しさのバランスと品質について考えた上で設計している。

こういった思いで作られたプロダクトであるということを、すでに購入された方も、気になっている方も、知っていただけたら非常に嬉しい。

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