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連載小説 『将軍家重の深謀-意次伝』第四章七節
第四章 蟲喰まれる樹
七 辰年、みたび巡る
天明四年(一七八四)甲辰の歳が明けた。奥州では、いよいよ飢饉が本格化し、死者がおそろしいほどに累積した。一方で西国はむしろ豊作といってよかった。国内流通さえ滞らなければ、奥州もこれほどの惨状に陥らずに済むはずだった。幕府は奥州諸藩に救援米を送ろうと考えたが、冬の荒れる北の海に船をだそうという船頭は一人もいなかった。海運で米を届けるには遅すぎた。
第四章 蟲喰まれる樹
七 辰年、みたび巡る
天明四年(一七八四)甲辰の歳が明けた。奥州では、いよいよ飢饉が本格化し、死者がおそろしいほどに累積した。一方で西国はむしろ豊作といってよかった。国内流通さえ滞らなければ、奥州もこれほどの惨状に陥らずに済むはずだった。幕府は奥州諸藩に救援米を送ろうと考えたが、冬の荒れる北の海に船をだそうという船頭は一人もいなかった。海運で米を届けるには遅すぎた。