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障害を持った女性が性風俗業界で働くことの是非 

障害を持った女性が性風俗で働くことの是非を問う論争が、有識者の間で起こっているのをしばしば目にします。

性風俗業界で働く女性のうち、障害のある女性の割合を示す統計は出ていませんが、知的障害、発達障害、それに精神疾患も加えれば、相当な割合になることはかねてより指摘されてきました。

かつて性風俗業界にいた私の体感としても、その指摘は現実だと思います。


障害を持った女性が性風俗業界で働くことについて、私としては現時点では積極的に肯定できない立場です。


障害を持った女性が、昼の世界で生きていくのが厳しいゆえに夜の世界に流れてきている現実があるからです。


 *  *  *


障害を持った私たちにとって、昼の世界で生きることはハードモードです。


まず挙げられるのが、障害者雇用の賃金の低さ。
障害者雇用の平均給与は、知的障害者で11万7千円、発達障害者で12万7千円、精神障害者で12万5千円です。(令和元年公表、厚生労働省『平成30年度障害者雇用実態調査』より)
一生懸命フルタイムで働いても、下手すれば生活保護費よりも安い賃金。
これでは一人暮らしで自立も厳しいです。


障害者の職場定着率にも課題があります。
労働者全体の就職一年後の定着率は8割台で推移しています。
それが障害者となると、知的障害だと6割台、精神障害者では5割を切る状況です。

出典:障害別に見た職場定着率の推移と構成割合(2017年 独立行政法人求職者支援機構 障害者職業総合センター)



障害者は就職時点で背負っているものが違うのに、その先に待っているのは健常者以上にハードな現実です。


昼の世界のハードモードに根を上げた障害者にとって、夜の世界は受け皿として機能します。

性風俗業界では高度な技能やコミュニケーションは求められません。
重要視されるのは若さや勢いです。
競争の激しい世界ではありますが、コツをつかめば障害があっても稼ぐことは十分に可能なのです。




「障害者といえば、福祉の保護のもと慎ましく暮らすもの」というイメージを持つ人もいるかもしれません。

しかし私たちは障害者である前に人間です。
自分で稼いで、人並みに趣味を楽しみたい、人並みにおしゃれだってしたい、貯金もしたい、なにより自立したい。皆さんと同じように欲があるんです。


だからこそ多少のリスクがあってでも性風俗の世界に流れつくのです。




もちろん障害を持った女性にも職業選択の自由はあります。 

私たちは「なんとなくかわいそうだから」という漠然とした理由で、夜の世界から排除される存在ではありません。

健常な女性と同様、性風俗で働くことのメリット・デメリットを秤にかけたうえで働くか働かないかを選ぶ自由があります。

昼の世界では障害者の法定雇用率が義務付けられ、各業界で障害者が働いているのに、性風俗業界だけ障害者が働いていないというのも変な話ですよね。



ただ障害者女性が昼職・夜職どちらを選ぶかにおいて、真の職業選択の自由は、昼の世界において健常者と障害者がフェアである土台があって初めて成立するものです。


昼の世界において健常者と障害者があまりにもアンフェアな現実をみれば、多くの障害者風俗嬢が「職業選択の自由において風俗の仕事を選んだ」というよりも「仕方なく風俗の仕事を選んだ」であろうことが伺えます。


現視点において、真の職業選択の自由が障害者女性に存在しているとは言えません。


こうしたことから、障害を持った女性が性風俗業界で働くことについて、私としては積極的に肯定することができないのです。