#5 光のないトンネルを歩く
闇を抜けた先に何があるかなんて、わからない。
悲しい出来事を目の当たりにしたとき。
マイナスの空気に触れてしまったとき。
引き寄せられるように、誘われるように、
いとも簡単に闇の沼にはまっていく。
真っ暗闇。
それはまるで出口の見えないトンネル。
まったく光を感じられないまま、真っ暗闇のトンネルを歩いていかねばならない苦しみ。孤独感。
しかし遠くから声が聞こえる。
「頑張って歩けばゴールに到着するよ」
「今は辛いけど、出口はもうすぐ」
「早くこっちへおいで」
声の主はトンネルを抜けてすでに光をつかみ取った人たち。
姿は見えないけれど、トンネルをひとり歩く自分に送られるエール。
そのエールを励みに前へ進む。ひたすら進む。
しかし、本当に進み続けらるか?
どんなに前が見えなくても、突き進んでいける人はいるだろう。
足が動かなくても、気持ちが荒んでも、先にある光に向かって歩いていける人間はいる。
でもそんな人ばかりじゃない。
ゴールから送られるエールを疎ましく感じる人だっている。
声援に応えられない罪悪感に駆られる人もいる。
もういいや、と投げ出す人もいる。
そんな人たちは、きっとこの世界にたくさんいる。
声援やエールはうれしい。
でもそれは時に残酷で、相手の心に鞭を打つ行為になりうる。
真っ暗闇なトンネルを不安な気持ちで歩いているとき、
遠くで応援してくれる人ではなく、
後ろから背中を押してくれる人や自分のペースに合わせて隣を歩いてくれる人、一緒に休憩してくれる人の存在が、前進する力になることが何度もあった。
真っ暗なトンネルを抜け出そうともがかなくていい。
ゴールを目指さなくていい。
足元が暗くて道はひとつと思っていたけど、よく見れば右にも左にも後ろにも、いくつも道は伸びている。
安全な道、楽そうな道、逃げ道を探すのだ。
きっとその道を歩く仲間と出会い、知らぬ間に暗闇を抜けるはずだから。
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