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2020年8月 春野亭日常 水城さん見守りフェスの記録 その13=旅立ちフェス

【国立春野亭日常/水城 ゆう (Mizuki Yuu)水城さん見守りフェス Vol.13⇒旅立ちフェス】

8月16日のこと
「お前、なんで一口で全部それ食うんだよぉ」
「え〜、だってぇ」
「ねぇ、ねぇ、見てこれ!」
「ちょっと、ちゃんと分け合って〜」
「あ〜、危ない、危ない、隣の部屋に行かないの! 鍼があるから」
「カレー食べる人何人?」
「私は素麺ゆでよーっと」
「そこ、通り道だから、ハサミ片付けて。」
「何か買い出しある〜?」
「あ〜、うんち出てる」
「ほんとだ。おめでとう!」

0歳児から、中学生まで5人の子どもたちが夏のキャンプから春野亭に帰着し、18:30からの水城さんの出発式を待っている。午前中から鍼灸師の横山 章子 (Akiko Yokoyama) さんが来てくださり、和室では、野々宮 卯妙 (Utae Nonomiya) 万里ちゃんをはじめ、春野亭見守り隊の面々をほぐしてくださっている。正午をだいぶすぎて、お腹の空いてきた人たちが動き出す。そんなことお構いなく、赤ちゃんは元気にうんちを出す。

ああ、これ。これだったのか!
非暴力コミュニケーション(NVC)の講座のとき、私たちは(私と万里ちゃんもそうだし、多分ほかの人たちの多くも)「私の生きたい世界」を、思いっきり、なんでもありで想像する……というワークをよくやる。

そのときはいつも、参加者の方々に語っていただくだけでなく、私自身も「生きたい世界」を具体的に思い浮かべるようにしている。私の生きたい世界では、”平和”が大きな部分を占めているのだけど、私が思う世界の平和って、結局はこういうことなんだよなぁ、と目の前に繰り広げられているシーンを見て、あらためて思う。

みんながみんなを慮って、人になるべく影響を与えないように、お行儀よく静かにしている”平和”……じゃなくて!

誰もがいのちのままに表現する。ときにぶつかったり、傷つけあったりもする。でも根底には信頼があって、つながりを信じて修復する努力をする。常にすんごくにぎやかな平和。美しいカオス。
水城さんのおかげで、こんなステキなカオスが、今日も春野亭2階で繰り広げられています。

3時30分になり、葬儀社さんがお花屋さんと一緒に到着。お盆の中、苦労して万里ちゃんのリクエストどおりのお花、黄色、白、そして少しの青でお花を揃えてくれた。それらを棺の前に飾っていく。

冷房の効かない2階から涼しい1階に、子どもたちも、大人たちも時折降りてきてその作業を見守る。ひまわりが水城さんの写真の周りで揺れている。
ポツポツと雨が降ってくる。

これは……雷雨の予感。雨漏りは大丈夫か? 棺の下から雨漏り受けの洗面器を取り出す人、雑巾を探しに走る人。その間にどんどん雷が激しくなり、音楽をチェックしていると、一瞬の停電! 水城さんの存在をみんなが同時に感じる。「やるな」「また、いたずらしてー」「これ葬式じゃないよ、出発式だよ、みずきさん」など口々に。

雷雨の中、牧師らしい格好の!葉っぱさん北原 葉子 (Yoko Kitahara)が到着して、いよいよ……というときになっても配信機材の混乱。角度はこれでいいの? 配信はちゃんとできてる? あれ、見えてないじゃん? ううん、こっちにちゃんと映っているよ〜 などなどケオティックなまま、出発式になだれ込む。

万里ちゃんの聖書朗読が響く。
「明日のことを思ひ煩ふな、明日は明日みづから思ひ煩はん。一日の苦勞は一日にて足れり。」マタイによる福音書6章34節

思い返せば、この10日あまり……まさに、こうだった。「水城さんは明日生きているだろうか」とは多分、一度も考えなかった。ただ、目の前のことを見ていた。そして、必要なものはすべて、ほんとうにすべて与えられた。私たちはそのとき、そのとき一生懸命で、幸せだった。にぎやかに平和を創っていた。

水城さん、ありがとう。

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出発式(告別式)の様子は、(2021年8月15日現在も)以下のリンクから視聴できます。葉っぱさんが朗読の師匠水城さんに捧げる渾身の式辞、そして万里ちゃんの、気迫としかいいようのない『事象の地平線』の朗読をぜひ。
https://www.facebook.com/utaeno/videos/10219305726817402/?hc_location=ufi

#国立春野亭日常
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#水城ゆう
#essay


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