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【Case Study】「アイヌの食文化」リバイバルプロジェクト~次世代継承者と共創する伝統食の魅力発信~


ISSUE

アイヌの食文化は、アイヌの野山における狩猟文化、そして伝統的儀礼の際には供物として特別な漆器や彫刻と共に供される様式など、料理に付帯する文化とともに独自の発展を遂げてきました。

なかでも北海道平取町の二風谷は、アイヌ子孫が暮らし、アイヌの伝統文化が色濃く残る土地。
これまで伝統料理をはじめとする食文化継承も地域の家庭を単位として地道に行われてきており、地域行政と民間が一体になって保護継承活動を継続してきた地域と言えます。

一方近年、アイヌ文化活動の盛んな二風谷を除く周辺地域では、「アイヌ食文化に関する関心が低く、日常的に接する機会も少ない」「アイヌ伝統料理を提供する場所や事業者の不在により気軽に食べることができない」など、文化継承にさまざまな問題を抱えるようになっています。

こうした課題を解決して、地域の伝統料理を後世により広く伝えていくうえでも、アイヌ食文化の担い手を見出し、保護継承活動を行なっていく必要がありました。

APPROACH

人口の過半数をアイヌが占める二風谷を拠点に、こうした伝統文化継承にまつわる課題を解決し、アイヌの伝統文化を次世代に継承していこうと活動しているのが「株式会社NEPKI」です。

NEPKIが中心となって食文化を学び、伝えていくプロジェクトがはじまりました。

アイヌ語は文字を使わず口頭伝承を主とするため、体系だった資料がほとんど現存しません。
そのためまずはアイヌ料理自体を紐解いていく作業が必要になりました。

調査の段階でわかったのは食に紐づくアイヌ文化の奥深さでした。
食材や調理方法といった単純なレシピではなく、アイヌの自然観・季節感・自然との共存方法・時候の読み取り方など生活そのものを捉える作業となりました。

ツナガルは、この作業から抽出した「ファクト」や「ストーリー」から、コンテクストを導き出し、映像表現へ編み上げるまでをサポートしました。

なお本プロジェクトは、以下を目標として進行しています。

【目標】
①全国の産物の中でも、「北海道と言えばアイヌ料理」と言われるような想起集団での位置づけを獲得し、アイヌの食文化を世界ヘ向けて発信する
②アイヌ文化を担う若者を中心に、動画制作企画に参画してもらうことで、自分たちの住む土地の文化への理解を深めてもらう。さらに世界に発信していくための技術を習得してもらう


OVERVIEW

名称:「アイヌの食文化」リバイバルプロジェクト|アイヌ文化を担う若者と共創する食文化の魅力発信
概要:文化庁「食文化ストーリー」創出・発信モデル事業
クライアント:株式会社NEPKI
参加者:アイヌ文化を担う若者たち
協力:haptics Inc.代表  北川陽稔氏
アウトプット:
①アイヌ伝統食文化の価値を捉え直し、アイヌ文化を担う若者たちが自ら言語化・発信に繋げるワークショップの実施
②アイヌ文化を担う若者たちと食文化ストーリーPR映像を共同製作


SOLUTION

本プロジェクトにおいてツナガルは、ワークショップの開催およびPR映像制作に伴走しています。
以下では、それぞれの実施内容について紹介します。

【1】地域の宝から”コンテクスト”を導き出す創発ワークショップ

本ワークショップの参加者は、アイヌ文化を担う若者たち、そしてNEPKIとツナガルのメンバーです。
若者たちは、地域に暮らす人、アイヌの工芸、芸術、語学などに携わる人など、アイヌ文化とさまざまな接点をもったメンバーで構成されています。

はじめに、「アイヌの食」を映像作品に落とし込むためのアイディエーションを実施。

川と森の循環を想起させ、生態系の回復のシンボルでもあり、かつアイヌ民族にとっても特に重要視される「鮭」を題材に据え、紐づくキーワードを出し合っていきます。


柔軟な発想から連鎖的に新しい考えがうまれていく

ワークの過程で、食に紐づく文化の連続性や、「鮭」を中心点とした食の生態系への発見がありました。

アイヌにとって鮭は、「カムイチェプ(神の魚)」や「シペ(本当の食べもの)」と呼ばれる、
自然(カムイ)からの贈り物

出し合ったキーワードのなかから重要と特定したアイデアを選定して、「映像としてどのように表現するか」を議論していきました。

■キーワード
・森・里・川の循環
・川中心のコミュニティー形成
・生物多様性
・生態系
・サステナビリティ
・水質改善
・ZERO WASTE

ユネスコ無形文化遺産になった「和食」同様に、 アイヌの食文化を無形遺産にすることができないかーーー。 このワークショップを通して、そんな新たな挑戦も見えてきました。


【2】アイヌ文化を担う若者たちと食文化ストーリーPR映像を共同製作

次に、映像企画・制作・配信の技術ノウハウを、アイヌ文化を担う若者たちに講義。

若者たちが今後、撮影・編集・発信までを自主的に行えるようにしていくためのスキル習得を促します。

ツナガルは、映像作品を仕上げるうえで必要になるさまざまなスキルのレクチャーを行いました。

■スキルレクチャー実施内容
・ストーリーテリング、表現方法、アウトプット方法、素材(画像・音声・動画データ)の収集方法
・映像制作業務のディレクション(動画の目的・クリエイティブの方針・ストーリーボード)

スキルレクチャーの様子
スキルレクチャーの様子

さらにワークショップ後半では、フィールドワークやロケによる撮影も実施。

こうして集めた素材を、北海道を拠点に活動する映像作家・Haptics 北川氏に依頼し、映像の編集から完成までを監督してもらいました。


OUTPUT

北海道の自然を代表する鮭が、川で生まれ海を回遊し、また同じ土地に還り子孫を残す点に注目し、伝統料理の継承と自然のサイクルの関係を重ねあわせています。

また作品では、北海道および沙流川流域の自然や食の多様性と、地域の伝統料理に関わる人々のこだわりや温かみが伝わることを目指しています。


CREDIT

竹林謙 (プロデューサー)
森村 俊夫 (ディレクター)
ハレ・ローラン(クリエイティブ・ディレクター)

監修:山田桜子(アイヌ文化監修 / 株式会社NEPKI)



ツナガルは、観光地域づくり法人(DMO)や文化継承に取り組む自治体と協業しています。
地域や文化の魅力発掘、魅力発信、体験コンテンツ造成を私たちといっしょにしませんか?
地域の「やりたいこと」をヒアリングベースでかたちにしていくことも可能です。
話を聞きたい方は、ぜひお気軽にご連絡ください。


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