雑感 0623

少し古い話題になるが、先月末、米CDCがCOVID-19の推定致死率を0.26%と発表した。

これについては専門家から低すぎるという指摘もあったようだし、穿った見方をすると、早く経済活動を再開させたい米大統領の圧力から、意図的に低く見積もったのかも、という推測もできるかもしれない。

さらに古いが、3月にランセットに載った論文によると、全年齢の
推定死亡率は0.66%と推測されているようだ。
40歳未満では0.16%、9歳以下の子供に至っては0.00161%と極めて低い。

日本では疑わしい症例のみPCR検査をしているので、無症候の感染者数が把握できないが、積極的に検査をしている国のデータをみると、どうやら全年齢では半数くらいが無症候感染者ということのようだ(検出されていない感染者の推定を除外すると死亡率1.38%)。
そして、結果から、年齢が若いほど感染しにくく、症状も出にくく、重症化もしにくいという推測ができる(併存疾患がある場合はその限りではないが)。


ここで、20代の健康的な若者の立場になって考えてみる。

彼は20代なので、もし感染したとしても、死ぬ可能性は、CDCの予測によれば0.05%、ランセットの論文によれば0.16%、
発症者だけを調査した論文でも0.2%である。

そして、これはあくまで年齢のみのくくりであるから、併存疾患(持病)の有無は含まれていない。
心疾患(10.5%)、糖尿病(7.3%)、慢性呼吸器疾患(6.3%)などがあると死亡率はかなり上がるので、20代で亡くなる方はおそらく併存疾患を有している可能性が高いと考えられる。
つまり、20代で、しかも持病のない若者が、COVID-19で死に至る可能性は「ほとんど」ないと推測することができる。


この若者が新型コロナウイルスに感染したときのデメリットを考えてみたい。

まずは直接的なデメリットである身体的な問題。
上記のように、全年齢の平均で感染者の約半数強が無症候と推測され、年齢が若いほどその割合は上がると考えられるため、
少なくとも5割以上の確率で、彼は感染に気づかないまま(風邪くらいの症状はであるかもしれないが新型コロナとは気づかぬまま)回復し抗体を獲得する。
運が悪いと発症し、個人差もあるだろうが、ひどいとインフルエンザ以上のつらさが数日は続くかもしれないが、重症化することはほとんどなく、
1~2週間後には完全に回復するだろう。

次に、経済的な問題。
COVID-19は指定感染症に指定されているので、入院が必要となった場合には、入院に関する医療費は公費負担となるため、直接的な経済的デメリットはない。
あるとすれば、感染したことで休業が必要であったり、場合によっては失業したりといった、二次的な経済的問題だ。

最後に、その他の問題として、自らが感染を媒介したかもしれないという心理的な負担や、差別や偏見にさらされる可能性などがあげられるだろう。


逆に、感染したことによるメリットも考えてみる。

今のところ、新型コロナウイルスの再感染については否定的である(過去の報告は偽陽性であると考えられている)。


このため、すでに感染して抗体を獲得している人に関しては、自分の感染予防も他者に移さないようにする配慮も一切必要がない。
つまり、マスクをする必要もなければ、行動制限も自粛も一切必要ない。

業種にもよるだろうが、客同士の感染にのみ気をつければよいので、自分ひとりでやっている店なら営業も再開できそうだ。

そして、何より、「感染するかもしれない」という不安やリスクから解放される。これは大きなメリットだ。
「自分のせいで家族に感染させてしまうかもしれない」という不安からも解放される。
安心して帰省もできるだろう。

また、差別や偏見を抜きにして考えると、従業員に感染のリスクがなく、感染を媒介しない、というのは、雇用者にとって非常に大きなメリットとなる。
なので、冷静に考えると、抗体を持っている人の方を雇うメリットが雇用者側にはある。

例えば、ホストクラブやキャバクラなど「接待を伴う飲食店」においては、従業員(ホストなど)が全員抗体を持っているとしたら、
あとは客同士の接触にのみ気をつければよいことになる。
つまり、椅子やテーブルなどを消毒したり、各テーブルにアクリル板でも置いたりすれば、理論上は営業可能だ。
なので、抗体を持っているホストは逆に重宝される存在になるかもしれない。


先行きは不安ながらも、現時点で生活がそれなりに安定しているひとにとっては、いくら少なくとも命の危険がある以上、感染によるデメリットのほうが大きいと考えるだろう。

しかし、現時点で生活が困窮していて、将来の見通しも立たない、追い詰められた人にとっては、このまま座して死を待つくらいなら、感染してしまったほうがメリットが大きい、と考える人がいてもおかしくはない。

新型コロナウイルスに感染するのはある意味「命がけ」だが、経済的な問題はときにそれ以上に命がけの問題である。


置かれている状況も価値観も違う人に対して、一律に自粛を押し付けようとしても無理に決まっている。

withコロナ時代はそういう時代になるのではないかと思ったりしている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?