推せなかった推しを想う

CYNHNというグループを初めて見たのは、録画していたアイドルフェスのライブ映像だった。
「ラルゴ」という曲がとてもよかったのもあるけど、メンバーのひとりの歌声にすごく惹かれ、そこからファンになった。

なんとかしてライブを観たいと思い、行ける日にライブがないか情報をチェックしていると、そのメンバーがしばらく休養するという告知がなされた。
その後はそのメンバーをのぞいた5人体制のライブが続いたが、初めて観るCYNHNはその子が復帰したフルメンバーのライブにしたくて、復帰の告知を待つことにした。

グループやメンバーのことを何も知らなかったからかもしれないが、ぼくはその頃、少し休めば復帰してくれるのだろうと楽観的に考えていたのだけれど、しばらく待っていてもその報告はこなかった。

そして、5人体制のままライブは続き、さらに、そのメンバーの復帰が未定のまま、ワンマンライブツアーが告知された。
少し迷ったけれど、ワンマンライブでの復帰を信じて、チケットを購入した。

しかし、その後あった運営からの告知は、復帰についてではなく、そのメンバーの、桜坂真愛さんの、卒業の報告だった。


誰かに対して、ネガティブな感情は一切ない。
運営も、メンバーも、きっと最大限の努力をした結果なのだろうと思う。
そして、彼女自身も、たくさん悩んで、苦しんで出した結論だと思うし、その決断を尊重したいし応援したい気持ちはかわらない。
自分自身が、もっとアンテナを張って、早くCYNHNを見つけていたら、それ以前のワンマンも行けたかもしれないのに、と思わないでもないが、こういうのはタイミングの問題だし、考えても仕方のないことだ。

推しを一度も推せないまま卒業になってしまったのは、そういう運命だったのだと思う。


そして、彼女の卒業とは無関係に、CYNHNはとても素敵なグループだ。
ほかのメンバーもみんな歌がうまくて、それぞれに個性があって、とても魅力的だと思う。
そして、出会いの曲であるラルゴ以外にも、素晴らしい曲がたくさんある。

ぼくは今もCYNHNというグループが好きだ。
残念ながらコロナ禍で流れてしまい、行くことはかなわなかったけれど、推しが卒業した後のワンマンも行くつもりだった。


ただ、スピーカーから流れてくるCYNHNの曲を聴いていると、何度も聴いているのに未だに彼女の歌声は新鮮な驚きをもって耳に響いて、そのたびハッとさせられて聴き入ってしまう。
そして、彼女の歌をライブで聴く機会がもうないことや、新しい曲には彼女の歌声は入らないのだということを理解し、やっぱり、言いようのないさみしさに襲われてしまう。

去年は推しの卒業が続いたが、いちばんショックで、受け入れられていないのは、推すこともできなかった彼女の卒業だったなと改めて思う。


こんな文章を書いても、誰も得しないのはわかってる。
さみしがっていても過去には戻れない。
グループは先に進むしかないし、自分もファンとしてそれを応援したい気持ちでいる。

6人のCYNHNがよかった、なんて言うつもりはない。
アイドルグループはいつだって今が最高なのだ。

ただ、音源の中には、今も、自分が推したかった桜坂真愛さんの歌声があり、それを大好きな自分がいる。
それは消せない事実だ。

もう伝えることはできないけれど、もしも叶うなら、素敵な歌声を聴かせてくれたことへの、感謝を伝えたいなと思う。

彼女が今、どこかで幸せでいてくれたらいいな、と心から願う。

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