閃光少女
最初に会ったとき、高校生だったから、ぼくのなかでは、いつまでも彼女は高校生のままだ。
制服姿で、笑顔も交えながら、穏やかな顔で、ぼくの斜め前に座っている。
「生きるのがつらいんだけど、」
「それでも、生きていなきゃいけないのかな?」
少し冗談めかして話す彼女に対して、努めて平静を装いながら、教科書に書いてありそうな、血の通っていない返答をしたことを覚えている。
体温のない「正解」に、何の意味があるのだろう?という無力感とともに。
今だったら、たぶん、もう少し違う返答をしていただろうな、と思う。
だからといって、今の自分なら、彼女を助けてあげられたかといえば、そうは思えない。
彼女は、誰かが助けてあげられるようなタイプの人ではなかった。
ぼくにできたことと言ったら、彼女が自分自身を助けてあげられるようになるまで、なんとか時間をかせごうとすることしかできなかった。
今の自分が関われたとしても、できたことは同じだっただろう。
でも、もしかしたら、今なら、もう少し長く時間をかせぐことができたのかな。
最後に会った日、彼女は、急きょ行くことができた東京事変のライブのことを、とても楽しそうに話してくれた。
ぼくは、そのツアーは都合がつかなくて行く予定がなかったんだけど、
彼女の話を聞いて、どうしても行きたくなって、その直後に予定されていた東京国際フォーラムのチケットを何とか手に入れて観に行った。
彼女の話す通り、ぼくがそれまで観てきた東京事変のライブの中でも一番すばらしかった。
次に会うときに、彼女にその話をするのを楽しみにしていたのだけれど、
「次に会うとき」は永遠に来なかった。
「かわいそう」なんて思わない。そんな言葉は失礼だ。
誰が何と言おうと、彼女は自分の生を全うした。
誰にも否定なんかさせない。
ぼくにとっては、閃光少女は彼女だ。
もしチケットが当たったら、彼女がくれた手旗を持っていこう。
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