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男女の友情

GW半ば、今日は学生時代の友人たちと久しぶりに会う。
ワクワクしながら丁寧にメイクをし、髪をセットする。服は前日にもう決めてあった。準備しているうちに、約束の時間が近づく。鏡で何度も全身をチェックしながら、「着いたよ」のメッセージを待つ。

15時ちょうどに通知が鳴った。
外に出ると一台の見慣れた車が停まっていて、助手席には帰省した友人の姿。
小走りで車に駆け寄り、後部座席のドアを開ける。
「久しぶり!!」
満面の笑みで言い、乗り込む。懐かしさが一気にこみあげてきた。

その日約束していたのは学生時代の同い年4人組。私以外はみんな男性で、3:1のグループだ。大学4年生の頃は「月一日帰り旅行」を毎月開催し、交代で車を出して県外へ出かけた。

私たちに共通するものは3つの趣味。服・音楽・食べ物。
学生時代は、ヴィンテージの古着屋を朝から晩まで巡ったり、ハマっているアーティストを紹介し合ったり、美味しいお店を調べて飲みに行ったりした。各々が趣味に没頭しており、それらを語り合い、共有する時間は最高だった。丸一日一緒に過ごしても会話が途切れることはなく、彼らとの時間は楽しくてあっという間だった。試験やバイトを乗り切るためのモチベーションと言っても過言ではなかった。

そんな彼らとの久しぶりの予定。
社会人になるとなかなか時間が合わず、会えるのは年に数回。4人全員が揃ったのは1年ぶりだった。

車で最寄り駅まで行き、そこから電車で名古屋へ向かった。
名古屋に到着すると、信じられない人の量に驚く。
「とりあえず入れそうな店を探そう」
駅から少し離れれば空いているかも。待ち0の店を求め、歩き出す。
計画性がないところも、全く変わっていない。

10分ほど歩き、偶然見つけたお洒落なカフェに入ってドリンクとケーキを注文。彼ら3人は灰皿を受け取り、カバンから煙草を出す。
何気ない会話をしながら待つこと5分、黒髪ショートのお姉さんが注文の品を持ってきてくれた。

まず最初の会話は、私の体調についてだった。休職中ということしか伝えていなかったため、3月中旬に早退したことやPMSと診断されたこと、ピルを飲み始めたこと、副作用で今は体調が万全ではないことを伝えた。彼らは男友達の中でも一番仲がいい3人だが、生理の話をしたことはなかった。
すると
「俺の彼女も同じように悩んでる。それ本当に大変だね。」
と目を見て言った。
・・・・・・
「彼女できたの!?!?!?!?」
思っていたより数倍大きな声が店内に響き渡った。
アイスティーを一口飲み、向かい側に座る彼の目を、もう一度正面から見る。
「そう、1月くらいから東京の子と付き合ってる」
照れながら彼は言うが、私は驚きを隠せない。硬直。
半年前に会った時は
「付き合ったら色々面倒くさいし、1人の時間好きだし。」
などと言っていたにも関わらず、ちゃっかり彼女ができていた。彼に恋心を寄せたことは一度もないが、親友に近い関係だったので、あまりに驚いた。
「早く言ってよ!!おめでとう!!」
そう声をかけ、ふうっと力を抜いたその瞬間
「実は俺も先月彼女できてさ」
と突然もう1人も報告。
「はあ!?知らないんだけど!!」
と強めに言ったが、彼はケラケラ笑っている。
「割と最近だし、会った時言おうと思ってさ」
とのこと。彼もまた、彼女別にいらない宣言をしていたはずなのに、ちゃっかり美人と付き合っていた。
大学時代一度も彼女ができなかった彼らに、ついに彼女ができた。しかも2人同時に。一見普通の出来事だが、これは驚愕ニュースだ。

別に寂しくなんかない、はずだ。
私にだって彼氏がいて、大好きなのはその彼氏だ。
ただ、学生時代に濃い時間を過ごした彼らに彼女ができたことで、なんとなく距離が生まれたように感じた。当該2人は全くそんなことを思っていないだろうが、私は少し寂しかった。大学生にとって、男女グループで遊ぶことは日常。けれど社会人になると、ポツポツと周りが結婚し、家庭を築く。子どもができ、家事や仕事に追われる毎日がより忙しくなる。そうすると、一気に友達と遊ぶ時間は減ってしまう。もしそんな年齢に私たちがなった時、こんな風に異性の友達と定期的に会えるのだろうか…?
将来の旦那さん(できるか分からないけど)は、妻(変な感じだけど、私)を男3人との飲み会に、気持ちよく送り出してくれるだろうか。彼ら3人だって、切り詰めた家計管理の末に発生する「お小遣い制」がスタートし、飲みに行く余裕がないかもしれない。子育てが忙しく、遊んでいる暇もないかもしれない。

4人の未来がどうなるかなんて分からない。けれど、将来どれだけ固い友情で結ばれていようとも、彼らのパートナーに私は敵わない。マウントを取りたいとか、奪いたいとかではない。ただ、いくら彼らと仲が良くても、彼らの人生の晴れの舞台である結婚式にすら、行けるかどうか際どい(異性の友達を呼ぶのはグレー?だから)。
こうやって少しずつ、男女の友情は年齢と共に薄くなってしまうのか。彼らと対等に、いつまでも笑ってお酒を飲めるのだろうか。23歳の私には分からない。ただ一つ変わらないことは、私にとって彼らは本当にかけがえのない友達だということ。胡散臭いけれど、一番腹を割って話せる大切な友達であること。10年後は状況的に会いづらいかも。そんな風に思うからこそ、今を大切にしたい。
「23歳の私、考えすぎでしょ」と、未来の私が可笑しそうにしていればいいな、と願っている。

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