リハビリSS 君が私をダメにする

「…このまま会社を休んで、クラゲでも見に行っちゃおうか」
片手でアラームをとめた彼が、そう言いながら私を優しく抱きしめた。月曜日の朝、もう少し微睡んでいたい時にそんな背徳的な誘いをされたら、甘えていたくなるのに。
「いいねぇ〜行きたい……」
彼の胸に頬擦りをしながらしがみついて言うと、彼はふふ、と笑って、私の頭を撫でた。
「朝ごはん作るよ」
ベットから抜け出して、そのまま洗面所へ。寝癖のついた後頭部が愛おしい。
日々をめちゃくちゃにして、やらなきゃいけないことから逃げてしまいたいなぁ…全部捨てて甘えて過ごしたい。
クラゲでも見に行こう、なんて素敵な誘い文句のせいで、現実があまりにも嫌になってきた。
のそのそと起き上がって、彼を追いかけて洗面所へ。横に並んで歯を磨き、寝癖を治して私はメイク。彼は朝食を作りに。
週の半分を一緒に過ごす私たちの、いつもの月曜日の朝。いつもいつも、彼は私を甘やかしてくれる。私はそれに甘えながら、渋々会社に行くのだ。あーぁ、行きたくない。
メイクとヘアセットを終えて部屋に戻ると、そこには美味しそうなスクランブルエッグとトースト、焼いたベーコンにインスタントのスープ。優しい微笑みで私を迎える彼。幸せの朝だ。
いただきますと手を合わせ、2人で囲むテーブルの雰囲気の明るさと言ったら、まるでこの世の楽園のようだ。
「こんなに幸せもらっちゃったら、私の全部をあげても帳尻合わないよ」
食べ終わった食器を下げてくれる彼を、頬杖を着いたまま見つめて言う。少しだけ振り向いた彼は、また優しく微笑んだ。
「全部なんていらないよ、一緒に居られれば」
わかってる、彼はこうやって私をズブズブに甘やかして、彼が居なきゃ何も出来ない女に仕立てあげてる。依存させる気満々なのだ。
私もわかってて甘えきってる。愛され彼女の余裕みたいな顔して、本当は彼の興味が私に向かなくなる日が怖いのだ。
馬鹿な私は気づいてて止められない、共依存。辞める気もない。
いつかお互いの人生をしゃぶり尽くしあおうね。

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