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「力」に振り回されるのは嫌だ

自分が持っている「力」を
私はいつも強く支配しコントロールしている。
2度と決して自由にはしない。
そう決めてしまったのだろう。
大人になるまだずっと前、
初潮すら来ていない少女の時に。

どうやって?
それは理性のようなものかもしれないし
癖のようなものかもしれない。
ただの意地なのかもしれない。


今日は朝から夜中まで
ずっとアンテナをはり
暴走しすぎないように
けれど見逃さないように
意識と感覚と力を集中させすぎたせいか
頭も体もくたくたになっていた。
うまく寝付けないほど
まだ何かが出ているのがわかった。
それでも、私は疲れていた。
鋭敏になったものを治めるより
無理やり目を瞑る。
眠れば大丈夫。そう思った。

半分意識が残っているような
中途半端な無意識の夢の中で
まだ熱を帯びていたものが暴走する。
ああ、なんだかこれは嫌な兆しがすると思った。

私は夢の中で1人
誰も来ない場所でじっと時を待った。
目覚めるのを待っていたのだろう。
独りだった。
独りでいる必要があった。
誰にも傷を負わせてはならない。
それだけがずっと心にあった。

だけど所詮は無意識の中。
全てをコントロールできるはずもなく
吸い寄せられるように1人の女性がこっちにやってきた。
顔見知りの女性だ。
私はそれを避けることができない。
私の心と彼女の心が強く共鳴しだす。
それはそれは強い引力で
いろんな感情が渦になって
奥底へ引き摺り込もうとしてくるのがわかった。

孤独、寂しさ、焦り、悲しみ、怒り、喜び
あと少しで彼女に触れてしまうのが分かっても
私にはどうすることもできなかった。

バチンッ!
引き寄せられた彼女が私に触れた瞬間に大きな音がして
彼女は目の前から消えた。その代わりに
障子のような、うっすら向こうが透けて見える
壁のようなものがそこに現れていた。
彼女はその向こう側にいて、意識が朦朧としている。
その側には今まで見えなかった男性の姿があった。
それは彼女の伴侶の男性だった。
必死で彼女に呼びかけている。
絶対にこれ以上行ってはいけない、と叫んでいる。
そして障子越しにこちらを睨み
すーっとそれを通り抜けて私の前に仁王立ちした。

「分かっているのでしょう?
彼女はこれ以上渡しません。
その必要などないでしょう?
それをこちらに返しなさい」と私の左手を指さした。

私の左手には赤くぼんやり光った塊があった。
いつの間にこんなものを奪っていたのだろう。
それが彼女にとって何かとても大切なものだと言うことだけは分かった。
早く返さなければ、と私は焦った。

私はそれを男性に投げつけた。
「こんなものは、いらない。持っていけばいい。」
できるだけ普通に、そう言った。
彼はそれを受け取ると
黙って彼女を抱えて去っていった。
私の左手はトク、トクと、まだ言っていた。

彼女と私は似たようなものを持っていて
それが共鳴したのだろうが
鋭敏になりすぎた自分の方がそれを飲み込んだのだろう。
いつもなら支配しコントロールしていたはずものが
及ばなくなってしまったのだ。

私は自分を呪った。
そして彼女のことを思った。
私たちは似ていたのかもしれない。
だけど彼女は無意識にそれを持て余しているタイプで
それを彼がシールドになっているのだろう。


私とは違う。
私は独り、この途方もないものを憎み
ずっと闘い続けている。
見えない誰かを傷つけずに守るための
シールドは自分しかはれない。
その事実に苦しくなった。
感情が激しく揺さぶられて、
その苦しみで、目を覚ました。

こんなもの、なければ良かったのに。
ずっとそう思ってる自分が
虚無感となって、襲う。
しっかりしなければ、と思う。

2度と、自分を野放しにしないために
私はその日もう眠らないと決めた。

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