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古道具のお取り扱いについて私たちの考え方

紡ぎ舎は創業当時から「古物商」の許可を取得していましたが、実際の取り扱いまでは中々手が回らず、ようやく2024年3月頃からお取り扱いを開始しました。

販売開始以来、多くの方から反響をいただき、古物の持つ魅力やその力を改めて感じているところです。

今回はそんな古物のお取り扱いについての私たちの考えを少しまとめてみたいと思います。

明治中期の印判染付の器

私たちが古物を取り扱う理由

紡ぎ舎は「いいものを、つないでいく」という言葉を大切にしています。それはいいものを「作り手から使い手へ」繋いでいくといった意味ももちろん含みますし、あるいは「作り手同士を」という意味もあります。さらには「産地と産地を」であったり、「過去から未来へ」という想いもそこには込められてます。

私たちが古物を取り扱う理由はここにあります。まだまだ十分に使えるものを使わなくなった人から使いたい人へと繋いでいくということ。そして私たちの先祖が脈々と引き継いできた技術や生活慣習の一端を、現代の我々やその子孫たちに引き継いでいくということ。これも私たちの考える「いいものを、つないでいく」ということだからです。だからこそ、創業当時から古物商として営業することも想定していた訳です。

使い込まれた鉈(なた)。まだ十分使えます。

ところで、先ほどから「いいもの」という言葉がたくさん出てきますが、「いいもの」とは何でしょうか。私たちの考える「いいもの」の大前提については是非ホームページの「紡ぎ舎について」をお読みいただきたいと思います。

私たちの「いいもの」についての考え方は、新しい商品であっても、古道具であっても基本的に変わることはありません。その辺りについても少しずつ触れていきたいと思います。

古物の専門家ではありません

私たちは古物の歴史的・文化的な価値を鑑定するような専門家ではありません。もちろん古物を取り扱うにあたって少しずつ勉強はしていますし、知識を蓄えていくことはとても大切なことだと思っています。

ただ、紡ぎ舎はあくまでも「日用品と暮らしの道具の店」です。つまり私たちの軸足はあくまでも「使いやすいかどうか」とか「便利かどうか」といった部分に置かれます。

「万延元年(1860年)」に購入したことが記された木箱。

だからもしかすると、これから古物のお取り扱いが少しずつ増えていった時に、古物への造詣が深い方から見ると「あっちのお椀の方が価値があるのに、なぜ(価値の低い)こちらのお椀の方が高く売っているのだ?!」と言った場面が出てくるかも知れません。

それはその方の考える「価値」と私たちの考える「価値」の考え方の出発点が違うからです。

敷かれた新聞から昭和20年頃までは使われていたのだろうことが推測されます。

もちろん私たちも実用性のみに価値を見出している訳ではありません。むしろ先祖代々大切に使われてきたという事実や、100年、150年という年月を経て残されてきたという価値をとても大切に考えています。そこには地域やそれぞれの家の人々の暮らしや慣習といった得難い重みが刷り込まれているわけですから。

その観点で考えると、私たちは「何世紀の誰々の作による茶碗」といった価値よりも「あぁ、このお茶碗は○○さんのお宅で代々大切に使われてきたんだなぁ」ということが見て取れるものの方に重きを置くということです。先ほど「「価値」の考え方の出発点が違う」と申し上げたのは、こう言った意味も含んでいます。

誤解していただきたくないのですが、決して「何世紀の誰々の作による茶碗」に価値がないと言いたいわけではありません。そういったものの歴史的・文化的な価値はとても大切なことだと思います。ただ、それは私たちのお店がお取り扱いするものではないし、そもそも私たちにはその真贋を見極める力もないということです。

引き取った帳箱の引き出しから出てきた昔のメガネ

顔の見える古物を

さて、私たちの取り扱う古道具はどこからやってくるのでしょうか。

紡ぎ舎のある長野県小谷村には築100年を超える古民家や蔵がたくさん残されています。そしてそこには手付かずのまま残された昔の食器類や農工具などがたくさん眠っています。

村内にたくさんある土蔵

昔は冠婚葬祭といった行事には親戚がみんなで集まって食事をしたことから、特に本家筋のお家にはたくさん(20客、30客など)の食器が揃えられていました。それぞれの食器やお膳は木箱に収められていて、大切に使われていたことを窺い知ることができます。

全てきれいに箱に収められています

ただ、大正〜昭和初期には7,000〜8,000人ほどあった小谷村の人口も今では2,600人まで減少してしまい、空き家もかなり増えています。また、代々使われてきた古い道具も世代交代を重ねる中で処分されてしまう例が殆どです。確かに現代の暮らしの中で塗りの椀が30セットも家の中にあっても邪魔なだけなのかも知れません。お膳、平椀、壺椀、両椀(飯碗・汁椀)のセットが30もある訳ですから。

特にご自身が子供の頃にはまだ使っていたという世代や、その話を母から聞いているという世代くらいまでは「自分の代で捨てるのは忍びない」という方が多いですが、その次の世代くらいになると一気に処分される例が多く見られます。

また、捨てたくないという思いの方も、かと言って家で毎日使うには量が多すぎるし、誰かに譲るとしてももらってくれる人を見つけるのも難しいという悩みをお持ちです。そして、使ってくれる人がいるなら譲りたいけども、骨董市などで雑多な古物として汚れたままうず高く積まれて売られるのもちょっと・・・。というお声も聞かれます。

私たちがお取り扱いするのは、そう言った小谷村内の方々からお預かりした古道具です。

どこの地区の何という屋号のお家で使われていたものということがわかる古道具をお取り扱いしています。そして1点1点全てきれいに掃除をして、すぐに使える状態にして販売しています。

古く汚れた様子が古物らしいという方もいらっしゃるかも知れませんが、汚れと経年の味わいは全然違うものだと思いますし、繰り返しになりますが、あくまでも私たちにとってはちゃんと使えるものをお客様にお届けしたいと考えていますので、全てきれいに洗っています。そしてそれは、お預けくださった村内の元々の持ち主の方の願いでもあります。

思い思いに使っていただきたい

これまで色々と書いてきましたが、紡ぎ舎で古物をお買い求めいただくお客様にはあまり重たく受け止めずに、気軽にどんどん使っていただきたいと思っています。やはり道具ですから、使っていただくのが一番です。

例えば塗りの椀で「両椀」という椀があります。これはそれぞれ蓋の付いた飯椀と汁椀のことを言います。この蓋と身の部分がきれいに四つに重ねられることから四つ重ね椀などと呼ばれることもあります。当然正しくは飯椀と汁椀として使うものなのですが、例えば蓋を小皿や小鉢として使ったり、汁椀を小さめの飯椀として使ったりと、自由にアレンジしてもいいと個人的には思っています。だから、当店では四つのセットとしてではなく、全てバラバラに販売しました。

きれいに重ねられる両椀

そのように、たまに時の流れや小谷村の風景など思いを馳せながら、自分流の自由な発想で思い思いに楽しく使っていただけたら私たちにとっても嬉しいことですし、元々の持ち主の方や古道具自身にとっても嬉しいことではないかなと思っています。

<おわり>

古物をお選びいただくにあたってご注意いただきたいこと。

  • 古物は当然ながら使用感がございます。その一方で、長い時間を経たからこそ生み出される味わいがございます。その辺りをお楽しみいただく前提でお選びいただきますようお願いいたします。

  • 木箱や小型家具など、宅急便120サイズに収まらない商品については通常の送料と料金体系が異なります。お買い上げ商品ごとに実費でのご請求となりますのでご了承ください。

紡ぎ舎でお取り扱いしている古道具の商品一覧はこちら↓からご覧ください。


紡ぎ舎は古物商の許可を取得しています(古物商許可証番号: 道具商 第481342200020号(長野県公安委員会))。

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