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パーマカルチャーで「食べられる森をつくる」フォレストガーデン見学日誌

TSUMUGIでは、月に一度のペースで生産者さんのもとを訪れる社会科見学を実施しています。今回は、5月に訪問した静岡県浜松のパーマカルチャーデザイナー大村淳さんがつくるフォレストガーデン についてお届けします!

今回の社会科見学では、静岡県浜松市で、パーマカルチャーデザインで「食べられる森」を作る、大村淳さんを訪ねました。

パーマカルチャーとは、一言でいうと「持続可能な暮らし方のデザイン」といった意味合い。現代の暮らし方は、自分たちでも知らないうちに有限の資源を消費し続ける持続不可能な暮らし方になってしまっています。

その持続不可能な暮らし方を、人も自然もケアしながらどうやって持続可能にしていくか?ということを考えるのがパーマカルチャー の考え方。

このパーマカルチャーの考え方を用いて、人にも自然にも優しい「食べられる森」を作っている大村淳さん。今回は、淳さんに森を案内してもらいながら、パーマカルチャーの姿勢について教わる社会科見学となりました。

自己紹介にも一工夫。畑でユニークなアイスブレイク!

午前9時ごろ、浜松市内にある淳さんのフォレストガーデンに到着。住宅街にいきなり畑と森が現れてびっくり!人間の住処のすぐ隣にも自然が息づいているのが分かります。

畑の見学の前に、まずは自己紹介タイム。

この日の自己紹介では、お花を摘んできて、その花を持っている人がスピーカーとなり、それ以外の人はスピーカーの話をちゃんと聞く、という姿勢で自己紹介を回していきました。パーマカルチャーでは、ありのままを観察することや、繋がりあっていくことが大切とされています。自己紹介にも、パーマカルチャーのデザインは応用できるんですね。

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△「トーキングスティック」というらしい。

「今日収穫していきたいもの」「呼んでもらいたい名前」「どうやって住んでるか」「不安なこと、心配なこと」をシェアしました。不安なこともシェアする姿勢がすごくケアされている感じがして、心理的安全性が高まったところで森の見学がスタート!

森を観察する前に

森に入る前に、森を観察する上で大切なことを教わりました。

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パーマカルチャーで大切なのは、「パターンを見る」ということ。

たとえば、「太陽は東からのぼって西に沈む」「風の吹き方」「土の質」「畑と住宅地の距離感」などなど、自然の中にはさまざまなパターンがあります。その自然の大きなふるまいを真似て、デザインを作っていくことが大切だそう。

つまり、自然がやっていることを理解して、自分の生活に取り入れていく。自然がお手本であり、先生ということ。

森の中で何が起きているのかを観察すれば、畑を作るときにも応用ができます。

森や植物を観察する上で大切な9つの視点

森にいる植物たちを9つのレイヤーで捉えると、観察しやすいそうです。

1. キャノピー (高木) クリ、くるみ、ヤマモモなど
2. サブキャノピー (中高木)ウメ、スモモ、りんごなど
3. シュラブ (低木、灌木(かんぼく)人よりひとまわり大きい
4. 草本/ハーベイシャス (野草、雑草) アシタバ、フキ、その他野菜
5. グランドカバー (地覆類)ストロベリー、ミント、コケモモなど
6. アンダーグラウンド (根菜類)ヤマイモ、ゴボウ、キクイモ
7. クライマー(つる性類) アケビ、キウイ、ブドウなど
8. アクアティック(水性植物)ハス、マコモ、タワイイモなど
9. マッシュルーム(菌類)シイタケ、ヒラタケ、ナメコ

ここからは、淳さんが、森を歩きながらいろんなことを教えてくれました。いくつか印象に残ったお話をピックアップしてみます。

シダとキャノピー(高木)の共生関係

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シダとすぐそばに生えているキャノピー(高木)は共生関係にあります。

シダは、斜面の水や栄養が流れずにその場にとどめる役割や、地面に対して傘のような役割も果たし、キャノピーの根が洗われるのを防いでいます。

シダにもキャノピーのそばに生えるメリットがあります。シダは斜面で湿気てるところでよく育つ性質を持ち、キャノピーがいないと日陰ができないから死んでしまうのです。

うまくお互いの特性を活かし合う共生関係があることが分かります。

土地のパターンに合ったものを育てる

昔の人は、毎年野菜を育てるには、畑の土だけでは栄養が足りないから、森の中の落ち葉などの有機物を入れて畑を作っていました。だから、森のそばで畑をやるのはとても合理的なことだそうです。

また、斜面には栄養がたまりづらいというパターンがあります。だから昔の人は斜面を利用して野菜ほど栄養を必要としないお茶畑を作っていました。

逆に、日当たりのいいところではみかんなどを育てていました。(ちなみに、三ヶ日という土地では、日当たりが良いことに加えて浜名湖の湖面に太陽が反射して光がいっぱい降り注ぐのでみかんを作るのにとても適した土地だそう!)

昔の人は、土地のパターンを観察して、その土地に適したものを育てるのが得意だったようです。

人間の役割ってなんだろう?

人間が、本当に自然に対して迷惑な存在だったら、人間はこんなに繁栄してないのではないか?人間の役割ってなんだろう?と問いかける淳さん。

人間の時間軸と森の時間軸は違います。森はものすごい時間をかければ回復しますが、それは人間の時間軸で考えると途方もない時間です。

人間の手が適切に入ることで、回復のサイクルは早まります。自然の仕組みやふるまいを観察して、どうやって自然とつながるのがベストか?を考える姿勢が大事だといいます。

人の手が適切に入るとは、どういうことかを淳さんが見せてくれました。

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△ ここでは、キャノピーと、低い草木が生えており、中間の背の植物がいない。これは、その間に人間がこなかったという証拠。大きなキャノピーが生えすぎていると日光が遮れてしまって下まで光が届かないから、中くらいの木が伸びないんだそう!適度に光が入るように、間伐してあげると他の木も生えやすくなる。

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△ 斜面に対して木を直角に倒してあげることで、水や栄養が溜まって、木が少しずつ生えてきているのが分かります。人の手が入ることで森の再生の速度が早まっています。

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△ ここでは、生えすぎて悪さをしていた竹を使って、しがらぐみで地面を堰き止めてあげています。土砂崩れを防ぐことができます。

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△ キノコの菌は、弱っているところに広まります。木の枯れそうになっている部分や、弱ってるところを切ってあげて、菌の苗床にしてあげると良い。切ってあげることで悪いところが離れるので、木も元気になるそう。

人間も自然の中にいさせてもらっているという感覚で、自然の循環がうまく回る手助けをすること。もしかすると、それが人間の役割なのかもしれません。

畑の案内へ

森の見学が終わったら、畑の案内へ!
森の中で発見したパターンを畑でも応用しています。

近代型の農業では、大根だけ、じゃがいもだけ、など、ひとつの作物を大量に育て、売り物を作りますが、ひとつの作物しかない場所にウイルスや害虫がくると、農薬や肥料を足さないといけない状況になります。

一方、森はたくさんの種が共存しているので、全滅することはありません。風が吹けば落ち葉が落ちて、自然とコンポストになるから肥料も必要ありません。

菜園を作るときにも、ミニマムな森をつくるイメージで、森のパターンを組み込むのが大切です。

たとえば、南側に背の低い植物、北側に背の高い植物を植えて、日当たりを考慮して植えてみたり、毛虫に弱い植物の近くには、毛虫を食べる生き物の巣箱を置いてみたり。

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△ 日陰には藪萱草、野萱草、別名忘れ草。董(とう)立ちして、お花が咲くとエディブルフラワーとしても食べれる。

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△ いちごの隣にはユリ科のエシャロット。ユリ科は病気を避けてくれる。

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△ アブのおうち。アブは肉食、毛虫やいもむしを食べる。すももは毛虫や芋虫に弱いので、アブたちに助けてもらう。

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△ すももの隣にグミの木。窒素固定をしてくれる植物の隣に、栄養がたっぷり必要な果樹を植える。

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△ コーンフリー。窒素以外のミネラルを集めてくれる。

自然の活かしあう力を感じて

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今回の見学を通して、自然の中の多種多様な植物たちが、うまく自分たちの特性を活かし合いながら共生関係にあることが分かり、本当に感動しました。

人間の社会や組織でも、パーマカルチャーの考え方はきっと応用できるはず。お互いを活かし合う環境をTSUMUGIでも作っていけたらと思います。


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