さなコン参加振り返り

東京ニトロが日本SF作家クラブの小さな小説コンテストに出すと言ったので、自分も書くかと頑張り、締め切り2分前に提出した。

幸運なことに一次選考を突破し、気分が高まったので記憶のあるうちに反省会をする。今作は特段にクオリティに納得がいっていなくて、この原因が執筆時間不足だろうと認識している。そこで、どこでどのくらい時間を使ってどのくらいのものがでてきたかをまとめることで、次の成長に役立てたいと思う。

そう「締め切りは延ばせるよ。最高責任者の僕がオッケーと言えばね」(東京トイボックス新装版第二巻 P.114)とかやっていいのは同人サークルだけなんですよ。普通ね、6月6日23時59分締め切りとあったら、6月7日投稿は許されないんだよ。気をつけていきましょう。

進捗

書くきっかけは5月26日23時の東京ニトロの「おれが本物の終末を見せてやらないといけない」という発言を見たから。

この5分後に小説作業フォルダを作って、40分ほどで500字の書き出しができた。

朝テレビのスイッチを入れると、ニュースキャスターが「おはようございます。世界の終わりまであと七日になりました」と言う。
また、偽物のニュースが流れている。まだ、ディテールが甘い。ニュース番組が流すものはニュース、つまり、新しい知りたい事柄だ。だが、それが概要だけであることはない。現在時刻、番組名、発表者名、標準語、本当に色々な情報がある。同時刻の国営放送はこうだ。
「おはようございます。七時になりました。五月三十一日月曜日、MHKニュース、朝ですニッポン、アオイケンタです」「ワクダノノカです」「はじめにこちらのニュースです。『世界終焉事件』発生から三十三日が経ち、オノ総理は――」
解像度が全く足りない放送、切り取ればそう見える。だが、今『世界終焉事件』と呼ばれる初日に流れたものを思い出すと全く違って見える。すべてのチャンネルが同時にジャックされ、黒い画面に変わり砂嵐映像を挟んでホワイトアウトする。そして、背後で流れたの「終わりまで10000000エスル」という流暢だがノイジーな音声。
その日一日日本は中国のハッキングかと盛り上がっていた。翌々日の深夜にまた同様に「終わりまで9500000エスル」という放送が流れなければ。

自分はこんな風にいきなり本文を書くことはめったになくて、浮かんだアイディアを使って、どう物語を進め結末を描くかを考える方が多い。今回は冒頭の指定された書き出しがニュースとしては不自然ではないかと感じて、これをいきなり書いた。以後はいつも通り、プロットの組み立てを始めて、この文章も書き直したが、最初の読者である自分の心を掴む目的で最初の書き出しはプロット無しで書いても良いかもと思った。

これから1時間後にできあがった最初の原案は以下である。

世界滅亡のニュースが、放送ジャックで流れる世界。新鋭の図書館情報学者が真相を明かすこととなり、出した結論は地球外生命体が日本への着陸を求めている、ということだった。依頼者に黙殺されかけるも、実際に超光速の巨大宇宙船の訪問がわかる。令和の黒船襲来となるところで物語は終わる。

その後30分ほどの作業(5月27日1時40分)で、黒船来航ではなく鉄砲伝来に変わり、そして翌日30分ほど(5月28日21時20分)でスエズ運河トラブルと変わった。宇宙船が狙って来た話から単なる事故の話になったわけだ。こういうアイディア自体は出るか出ないかはの定量的な記録はない。とにかく思いつくことを願うだけだ。なお、この間に書いたのは400字ほどである。

5月29日1時頃までの2時間ほどプロットの解像度上げで、パルスによる二進数表現カウントダウンが追加される。そこで多様な信号が飛んできていたというアイディアに至ったので、作中のいつに信号が流れていたかという規則的なようで不規則なデータを作るスプレッドシートを作り始め、翌日大枠が完成した。その後、夜2時間半、翌夜1時間半の計4時間で2200字のプロットを書いた。なお、今確認したところキャラの名前が迷走していた(流橋→竜橋→柳橋→光崎となっていた。さらにその後、→御多喜→御瀧と変わっていく)。こういうことをやると進捗が悪くなるのでちゃんと決めないといけない。
この後、プロット書く作業はまたもう一度行うが、どちらもアイディアが揃ってから2000字程度のプロットを出すのに数時間でできていた。正直、自分が思っていたよりも書いている時間が短かったので、どうアイディアを出していくかが重要だと感じた。

次の本文の着手だが、6月5日まで体調不良であったため、途切れ途切れの作業となっている。おそらくこれが遅延の大きな要因ではあると思う。
6月1日2時間ほどで1541字。
6月2日3時間ほどで2805字(+1264字)。
6月5日1時間半ほどで3273字(+468字)、さらに1時間で4050字(+777字)。
というのがわかった。進捗が明らかに遅いし、これは書いていても思った。

6月6日締め切り当日、復帰したので本気を出し始める。このタイミングで一度通しで読んで、本文の進みが遅い原因が体調不良など環境要因よりもプロットが固まっていないため何を書けば良いのか迷走しているためだと判断した。
そこで15時頃から休憩挟みつつ2時間ほどで、プロットを書き直した(2626字)。これは特定シーンが400字分増えたとかではなく、従来は事件の羅列だったものが主人公たちが何を検討しているかに書き換えた形になっていた。つまり解像度が上がっていた。これはキャラクターのディテールを挙げたことも大きく、最初からこれが出せるよういつもおざなりになるキャラクター設定をちゃんとやるべきだと感じた。少なくとも名前で迷走しているようなのはまずかった。

本文の原稿は一応最初から書き直している。もしかしたらどこかで古いやつの借用はやっているかもしれないが。19時47分から休憩無しで23時43分までおよそ4時間で「東名高速も東北道も下りは大渋滞を起こしている」ぐらいまでの7413字を書いていた。これは上記プロットで1947字74%に相当する。同じペースであればあと1時間半、現実的・経験的には物語とプロットの乖離を埋めたり、後半になるほどプロットの粒度が甘くなっていくことから、2〜4時間掛かるのではないかというところだ。よって、自分のいつものプロット(本文の1/4ぐらいの長さ)を作っていれば、半日程度で書くことができそうで、やはりちゃんとプロットを立てられていなかったのが問題に思う。

今回は厳格な締め切りが迫っていたので、この段階でpixivの投稿画面に途中状態だが貼り付けて、そこでの作業に切り替えていた。とはいえ、一番恐れていたのがギリギリな投稿での参加失敗であったため、続きを書くのは元々諦めていた。そのため、残りプロット679字は文面の整理程度に留まり881字にしかならなかった。「後半あらすじ状態」とはここの部分である。もし前半と同じペースで書いていれば、ここは2500字程度となり、全体でも1万文字になっていたはずだ。この試算は今はじめてやったため、こんな綺麗に1万文字になるのかと少し驚いているところはある(感覚的には書き直すと4倍増えるみたいな認識ではいたのだが)。
時間についての情報は失われているが、この画面でタイトルをはじめて考えていた。仮タイトルとして「世界終焉事件」、「界難事故」などがあった。だが、これらは後に起こる事件だけを指しており、この物語の主題ではないと感じていた。この話では、物事の終わりは高次にはイベントに過ぎない、地球が滅んでも宇宙は終わらない、みたいなことをやりたいと考えていた。そこからとっさに「終わる世界は終わらない」にした。が、これかなり不満がある。もっと良いタイトルがあるはずで、と今考えているけど、思いついていない。正直、「テレビとラズベリーパイと僕の論文」ぐらいしか出てきていない。
それはさておき、何も思いつかないので前述のタイトルで公開、投稿時刻は23時58分であった。

まとめ

振り返ると自分の日々の執筆開始時刻が遅いのがわかる。平日は日付が変わってから、休日でも基本日が沈んで大分経ってから、という感じでエンジンが掛かるのが遅い。これをきちんと早めることができきれば、もうちょっと余裕をもって書けるのではないかと思った。それと世界観設定は割とサクサク決めているけど、キャラ造形に失敗するといういつものことを案の定やらかしていた。次は頑張ります。

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