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6/26 講座「大塚英志の著作を通じて『遠野物語』を読む勉強会」

はじめに


まずは以下の文章を読んでみてください。『遠野物語』を、カッパや座敷わらしといった妖怪の話を集めた説話集だとか、伝説や昔話を集めた古い資料のように思っている方にとっては、新鮮な捉え方に感じられるはずです。


大塚 結局、柳田が何をやっているのかは同時代の人々は意味分かんなかったと思いますよ。花袋なんかは自分らの自然主義文学への嫌味で『遠野物語』を書いてきやがったとか分かったてたと思いますけど。僕が面白いと思うのは、柳田の近代国家にどこかで同一化できなかった部分。民俗学とは要するに、近代国家ができあがっていく中で、国民とか伝統っていう概念をつくることに加担していく学問で、柳田の山人論だって植民地政策論なんです。そういうことをやっといて「平地人を戦慄せしめよ」とか『遠野物語』の序文で書いちゃうところが矛盾しているんだけど本人は気づかない。

大塚
 柳田自体が、自然主義文学の成立に深く関与した人ですよね。竜土会というサロンを主催したり。田山花袋の親友でもありますし。だから、さっきも言ったけれど、花袋らがやっていた自然主義への反論として、『遠野物語』を書いている。『遠野物語』の冒頭部、「感じたるままに」書く、というのは、見たるまま、感じたるまま、っていう当時の自然主義文学のキャッチフレーズを意識してる。つまり『遠野物語』を柳田は、これこそが自然主義だって花袋らにはわかるように宣言している。その意味で「文学」なんですよね、柳田にとって。

大塚
 リアリズムではない小説の可能性って、僕は興味あるんですよ。柳田民俗学が結局、自然主義から離れていって、近代文学とは違う形のもう一つの近代文学を作った、それが民俗学だっていうのが僕の理解です。ミステリーへの興味もそこなんですよ。自然主義、リアリズムじゃない別の、ちょっと歪んだリアリズムのスタイルを追求することは、どんなジャンルの違う作品を作ったとしても、僕の共通項なんだって思います。

大塚
 柳田國男の『遠野物語』が反自然主義小説だってことへの僕の興味もそこですね。その方法と対象の乖離の中に、表現としての面白みがあると思っているんですけどね。

“『怪』vol.0011に掲載された大塚英志と京極夏彦の対談より”

この対談が発表されたのは2001年8月。それから大塚は、ゼロ年代、テン年代を通じて、柳田國男をめぐる精力的な執筆活動をしていきます。氏の主張する反自然主義小説としての『遠野物語』とはどういうことなのか? そして、近代国家のなかで国民や伝統という概念をつくることに加担する民俗学とは何のことか? また、その芽を『遠野物語』のなかにどうみつけることがきるのか? まずはこのあたりをさしあたっての疑問として、氏の著作を読みながら勉強会をしていきたいと思います。

今回の講座でとりあげるのは、上記の対談の直後に執筆された、『怪談前後――柳田民俗学と自然主義』(2007年、『群像』2002年8月号~2004年2月号連載)です。そこで大塚は、『遠野物語』の今日的な読まれ方として以下のフレームを示します。

日本民俗学史、その起源としての『遠野物語』
柳田から奪還した、喜善や土地の人間が語り伝えた話としての『遠野物語』
吉本隆明や三島由紀夫の論に代表される、文芸批評の対象として『遠野物語』

しかし大塚は、そのいずれでもなく、最初にして最小の『遠野物語』の読み方を本書で説いていきます。

その一方で、それはこの書がわずか三五〇部のみ作られた私家版であったことが明らかなように、柳田周辺の小さな文学サークルの身内に向けられたものであることが忘れられている。確かに「外国に或る人」に寄するという献辞はこの本のパブリックな意図を示してはいるが、その装本や序文に仕組まれた趣向は、これが小さな文学サークルでいかに読まれるべきか、その文脈を執拗なまでに示唆しているのだ。

柳田が造本や序文に仕組んだ凝りに凝りまくった意図とはなんだったのか? 今から110年前に戻って、いまだ民俗学ではなかった頃の『遠野物語』を、勉強会を通じて一緒に考えてみましょう。

<参考書籍>
『京極夏彦対談集 妖怪大談義』(2005年、大塚英志のパートは2001年8月刊の『怪』)
『怪談前後――柳田民俗学と自然主義』(2007年、『群像』2002年8月号~2004年2月号連載)
『「捨て子」たちの民俗学――小泉八雲と柳田國男』(2006年、『本』(講談社)2004年9月号~2005年3月号、『本の旅人』2005年5月号~2006年3月号連載)
『偽史としての民俗学―柳田國男と異端の思想』(2007年、『怪』連載)
『「妹」の運命――萌える近代文学者たち』(2011年)
『柳田国男――山人論集成』(2013年)
『神隠し・隠れ里 柳田国男傑作選』(2014年)
『殺生と戦争の民俗学 柳田國男と千葉徳爾』(2017年)
『柳田國男民主主義論集 (平凡社ライブラリー)』(2020年)
『南方熊楠/柳田國男/折口信夫/宮本常一 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集14)』(2015年)

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講座「大塚英志の著作を通じて『遠野物語』を読む勉強会」

日時:2020年6月26日(金)19:30-21:00
場所:オンライン配信(zoomのURLを参加者にメールにてご連絡します。ご利用前にアプリ「Zoom」をダウンロードください。)
参加費:無料
定員:20名
最低催行人数:なし
必要なもの:パソコンもしくはスマートフォンなどオンライン配信を閲覧できる機材・環境


講師プロフィール

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佐々木 大輔
1980年、岩手県遠野市下組町出身。LINE株式会社を経て、2017年からは株式会社SmartNewsの執行役員。2018年、遠野を舞台にした小説『僕らのネクロマンシー』を出版。2020年1月よりNCL遠野の経営に参画。

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