１日4ドルの予算でアマゾン環境を変えたSDGs市長の革命的戦略

1.森林破壊と貧困の街で

「ナスカの地上絵」で有名な南米の国ペルーの北部に位置するサンマルティン県は広大なアマゾンを保有し、約77の行政地区を抱えています。

そんなサンマルティン県で起こっている深刻な問題が「森林破壊」と「貧困」です。

1960年以降サンマルティン県では総面積の30%以上にあたる160万ヘクタール以上の原生林が伐採されたうえに、2009年の調査では住民の半数が困下にあり、５才未満の子どもの26％が慢性的な栄養不足に喘いでいるそう。

さらに今でもサンマルティン県の多くの街では、1日に2時間しか水が供給されず気候変動や森林破壊がいっそう進めば、住民生活に致命的な影響が出てくるのは時間の問題といった状況なのです。

2.バルダレス市長の名案

サンマルティンの中にあるヘペラシオ市の市長、パルダレス氏はこの状況をなんとか打開しようと頭を捻ります。

とはいえ当時ヘペラシオ市に与えられていた予算といえば93,000$で、住民一人にかけられるお金はわずか４ドル程度という状態でした。そんな過酷な財政不足の中で、市長が思いついたのが「バイオマス技術」でした。

「バイオマス技術」とは、再生可能な化石資源以外の有機物資源のことで、ヘペラシオ市では生活ごみを有機物と無機物に分別させて回収し、有機物は市の肥料製造施設で、微生物を混合して発酵処理させて肥料に変換するシステムを構築しました。

できた肥料を販売することで、処理にかかる費用は工面できるほかに市の収入とすることができますこれにより、ヘペラシオ市では肥料販売がきっかけで財政状況は好転、道路整備や飲料水整備などより多くの住民サービスを届けることができるようになったそうです。

3.ペルー政府の決断もきっかけに

実はペルー政府は世界でも珍しく住民参加型の環境保全を奨励しています。例えば、「生物多様性が豊かな国有地において、自治体や住民に主な環境保護活動を行う権利を与える」というプロジェクトなどです。

そして、このプロジェクトが始まった時に熱烈に応募を行ったのが、他でもないサンマルティンの住民たちだったのです。

ペルーにはこういった住民参画型の環境保全の枠組みが他にも多くあり、私有地に関する環境保全区域認定を申請できたり、土地所有者が国の許可や関与なしに環境サービス開発やエコツーリズム整備を行ったりできる権利を認めています。

特に私有地に関する規定は、他者がその土地の権利を取得して開発を進めることを防ぎ、資金的・時間的負担の大きい紛争を避けることを目的としているそうです。

ちなみに最近では、サンマルティンの住民が主体となって取り消しを求めていたエスカレラ山系自然保護区での石油採掘が、憲法裁判所によって採掘の認可を停止させられるなど、ペルー政府の環境保護に対する「地方分権」政策がだんだんと画期的な成果を上げるようになってきました。

4.バルダレス市長から学べること

今回の事例で、ペルー政府やバルダレス市長の取組みからわかることを列挙してまとめてみましょう。

・住民や自治体など当事者の意思をできるだけ尊重した
・地域が主体となって柔軟な活動を行えるようにした
・最新の技術を誰もが使える形で取り入れた
・環境保全と貧困の撲滅を両立した

やはり現場の声を聞いて、現場に裁量権を持たせるのは名案ですね。
今後のコンサル業務に役立てていければとおもう毎日です。
今日はこの辺で！それではまた次週！

参考
INPS「｜ペルー｜アマゾン地区で環境問題への独創的な解決法」
国連大学ウェブマガジン「地域住民の力で アマゾンを守る」

画像提供
アマゾン火災：WIRED
バルダレス市長：ペルーアマゾン便り
ペルー大統領：日本経済新聞

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この記事を書いた人は

tetsu

大学生とインターン２社してる21歳。
人生は結局大いなる暇つぶしです。