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CEOもオッケー? 生成AI活躍の場が全方位に広がる:山下郁雄

写真は生成AIが作り出すクローンのイメージ(オルツ・ニュースリリースより)

 犯罪謝罪文 生成AIで/被害者側に提出(性犯罪の加害者側弁護士)、経済情報特化 生成AI/40年分の記事学習(日経新聞)、投資に生成AI/論点・市場分析を深化(伊藤忠)、生成AIで回答文/中小の相談 職員負担軽減(中小企業庁)、学習支援、チャットでヒント/生成AIシステム(コニカミノルタ)…。これらは4月~5月上旬に新聞各紙に掲載された生成AIに関する記事見出し。2022年11月にチャットGPT=“生成AIの代名詞”が登場してからおよそ1年半。生成AIの活用領域は全方位に広まり、その普及速度は日に日に加速している。なかには「生成AIがCEO(最高経営責任者)を務める」といった“究極のビジネスユース”も出てきている。

●人間の思考能力では技術進化に追いつけない
 昨年3月、米スタートアップ企業、モビオンのCEOに生成AI(チャットGPTに、経営に必要なモビオン社のデータを学習させた対話型AI)が就任した。新CEOを“人選”したのは、創業者でありそれまでCEOを務めていたマークア・アラマレス氏。「非常に早い速度で技術は進化しており、人間の思考能力では追いつけない」。アラマレス氏が情報処理能力と知識量で勝るAIにCEO職を委ねた理由だ。

  以上は今年3月29日付け日経産業新聞に載った記事の引用。(一部、表現を変更。ちなみに同紙は3月末をもって休刊、29日付けが最終号となる。最終号には、読み応えたっぷりの記事が満載されていると当コラムで紹介)。モビオンに関する記事では『対話型AIに、ゲームのキャラクターのようなアバター(分身)を与えることは簡単だ。「さほど遠くない未来にAICEOが顔を持ち、自動でメールを社員に送信する時代が来る」。アラマレス氏は断言する。』との記述もある。

 アラマレス氏が言うところの「顔を持ったアバターCEO」をすでに実現しているのが日本のAIベンチャー、オルツ(東京都港区)である。米倉千貴CEOは、自身の分身となるクローン米倉を生み出し、採用面接、取材対応をはじめとするCEOの仕事のいくつかをクローン米倉に任せている。同氏はクローン米倉に思い至った理由を「複数の会社を経営していて、同じような業務、決済に追われ非生産的だと実感したのがきっかけ。試しにクローンを創って社員に接してみたら誰もクローンと気づかず、これはいけると確信した」と語っている。YouTube動画からの引用で、同動画にはクローン米倉の実物も登場する。

●クローン社員が働き、社員本人に給料
 オルツでは米倉CEO以下、全社員がAIクローンを創っている。クローン社員は営業、人事、総務、新人教育など、さまざまな業務に携わる。各クローンが働いた分の給料を社員本人に支払う仕組みを昨年12月に導入した。「全人類にデジタルクローンを広げることで、世界から労役をなくし創造的な仕事にのみ集中できるようにする」-掲げるミッションの実現に向け、自らAIクローンワークを実践し、自社を実験の場&ショールルームとして、デジタル・AIクローンの普及浸透を目指している。

 では生成AIは、自身がCEOを務めたりAIクローン社員を産出することをどう見ているのか。チャットGPTに尋ねたら「チャットGPTがCEOとして完全に機能することは現時点では難しいと考えられる。ただしGPTやその他のAI技術がCEOを補助するツールとして利用される可能性はある」「人のクローンを作成して働かせるというアイデアは、現時点では倫理的にも法的にも非常に複雑であるため、慎重に検討される必要がある。代わりに、AIやロボティクスなどの技術を使用して効率的な自動化や業務補助の方法を探る方が、より現実的で倫理的にも問題が少ないかもしれない」との答えが返ってきた。さて、クローンCEO/クローン社員の行方やいかに。

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