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【弁護士・佃克彦の事件ファイル】政務調査費返還請求事件_Part5

テレビ朝日「スーパーモーニング」という援軍


1審の完全勝訴の後、多くのテレビ局がこの問題に関心を示し、番組で取り上げてくれました。テレビ朝日の「スーパーモーニング」もその1つ。

この番組は自民党品川区議団の政務調査費問題を継続的に追いかけ、そして独自取材をして、控訴審に提出された区議の陳述書のウソを明らかにしてくれました。スパモニが暴いてくれたウソを少しご紹介すると…

  • 区議の陳述書で「昼食を兼ねた検討をした」と言っているお店が、昼間は開いていないお店だった。

  • 区議の陳述書は「某教授を講師に招いて勉強会をした」と言っているが、その教授に取材をしたところ、教授はその当時日本にいなかった。

  • 区議の陳述書に「○○商店街の幹部と意見交換をした」とあるが、その○○商店街の理事に取材をしたところ、「区議と会食をしたことはない」と言っていた。

…などなど、おかしな話は次々と出てきました。

頭をよぎる一抹の不安…


ところで、先にレポートした通り、第一次訴訟は、問題となったお金を自民党区議団が支払って訴訟を“強制終了”させられてしまいました。
 
「今回も自民党区議団がお金を支払って裁判から逃げてしまうのではないか?」
 
私たちの頭に一抹の不安がよぎりました。しかしそれではおもしろくありません。控訴審では、ようやく1つ1つの支出の中身について議論が始まったのですから、そのような支出の中身の議論を踏まえた上で、高裁の裁判官に「そのような政務調査費の支出は違法だ」と判断して欲しいのです。
 
このように一抹の不安はよぎりましたが、今回問題となっている金額は全部で1100万円以上になります。そう易々と支払える金額ではありません。ですから、今回は、支払って逃げるという作戦は採ってこないのではないかとも一方で思いました。

不安が的中…


ところが残念なことに不安が的中してしまいました。
 
2006年12月、自民党区議団は、こちらが返還を求めている全額にあたる合計1126万円ものお金を品川区に支払ってきました。
 
「またか…」
 
自民党区議団は、1つ1つの支出について具体的に議論した挙げ句に敗訴判決を受けることをどうしても避けたかったのでしょう。おそらく区議みんなでお金をかき集めて区に支払ったのだと思います。

控訴審判決


控訴審判決は2007年1月17日に言い渡されました。
 
結論は、1審のこちらの勝訴判決を全部取り消し、こちらの請求を全部棄却するというものでした。第1次訴訟の時と同様、形式的には“全面敗訴”、実質的には“完全勝訴”の判決です。
 
判決後の動き
 
形式的には完全敗訴判決ですが、判決後の報道はみな、区議団の政務調査費の支出について疑問を提起し厳しい批判をするものばかりでした。またこの事件のあと、品川区議会は制度を改め、政務調査費を飲食費に支出することを一切認めないことにしました。
 
品川区民オンブズマンの会の地道で熱心な活動は、こうして1つの制度改革に結びついたわけです。

追記


ところがその後の2012年の地方自治法改正により、「政務調査費」は「政務活動費」と改称され、議員は、「調査研究」以外の「その他の活動」にもお金を使えるようになりました。
 
これは、全国の市民オンブズマン活動が、住民監査請求と住民訴訟によって「政務調査費」の濫費を正してきたのに対し、議員がルール自体を変えて自分たちの好きなようにお金を使いやすくしたものだと言わざるを得ず、制度の改悪にほかなりません。

佃法律事務所 弁護士 佃克彦
“正義の味方”にあこがれて弁護士になり、気がつけばもう30年。さまざまな事件に出合い、数多くの経験をしてきました。事案に応じて他の事務所の弁護士と連携し、フットワークは軽く、しかし強い信念を持って皆さんの人生やお仕事における前進のお手伝いを致します。お気軽にご相談下さい。

【住所】東京都港区西新橋1-20-3 虎ノ門法曹ビル403
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