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日本一を謳う自信と保身。/池袋 Racine,Bread&Salad エッグタルト ¥270
数年前、香港で食べたエッグタルトがそれはもうおいしかったのを忘れられない。とろっとしたフィリング、さくさくのパイ。病みつきになってその場で3個頂いた。どうにか買って帰りたかったが、私のいい加減さでは鞄の中が大惨事になるという確証があったために断念した。今思っても英断だと思っている。偉い。
今回は池袋をぶらぶらと探索していた時に発見したベーカリー、池袋駅、ジュンク堂の少し奥、南池袋の一角にある「Racine,Bread&Salad」さん。そこで売っていたエッグタルトをいただいた。美味、この二文字が似合うエッグタルト。僭越ながらレポさせていただきます。
圧巻のドーナツについ寄り道。
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本を見た帰りにジュンク堂付近を散歩しようと思い立ち、歩いたことのない路地に足を踏み入れた。通りを少し歩いた先に小さな黒い看板を見つける。お洒落な看板だなぁ、と惹かれてオープンになっていた入口を覗いて見ると、ずらっとお行儀よく並んだドーナツ。それはもう✨キラキラ✨していた。
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吸い寄せられるように店内へ。店内では数名のお客さんがトングとトレーを手に、連れ帰るドーナツを見繕っていた。例に漏れず私も両手に装備する。
どのドーナツも大ぶりで魅力にあふれており、ついつい目移りしてしまう。つやつやとしているコーティングで彩られている子もいれば、シックな出で立ちでシュガーを纏っている子にも食指が動く。
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冷蔵スペースにも所狭しとくるくると巻かれお洒落を施したフレンチクルーラー、クリームがたっぷりと入っていそうな恰幅のいい子もいる。どのドーナツも個性が豊かで迷いに迷ってしまう。私の胃袋があと10個あれば端から端まで試したいと思うのに。
そんな中、タワーのようにそびえたっている一角が目に入った。
「おそらく日本で一番美味しいエッグタルト」
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そんなことがあっていいのか。たまたま立ち寄ったベーカリーで日本で一番美味しいエッグタルトに出会ってしまった。”おそらく”だが。
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しかしこのひしめき合っているエッグタルトよ。何といっても焼いている数がすごい。他のドーナツは多くても5、6個といったところなのにエッグタルトはぱっと見た感じでも20は下らないのではないか。
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この黄色の照り、少しついた焦げ目、パイ生地に包まれている姿が可愛らしい。私が求めるポルトガル式のエッグタルトだ。考えあぐねて何も乗っていないトレーにようやく一つ、黄色で色が付いた。
いざ実食。
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袋から出すところからぽろぽろとパイ生地がはがれ落ちてしまう軽さ。受け皿が必須である。剥がれたパイ生地をつまみ食い。さくさくと歯切れがいい。最初に感じたふんわりとした甘さから一変、噛めば噛むほど塩味を感じる。バターの芳醇な香りと共にもったりとした油分が口に広がり、これはやめられないとめられない。つい本体のパイ生地まで剥がしてしまった。
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誘惑に負けてつまみ食いしてしまったが、先に味わってしまった事に悔いはない。だっておいしかった。
お行儀よくナイフをいれる。すっ……と何の抵抗も無く、フィリング部分にナイフが入った。少ししっかりとした絹豆腐を切ったような切り心地。切ったそばから蕩け落ちる、ようなものではないが、しっかりと焦げ目がついていても柔らかいそのフィリングに期待に胸を膨らませる。これは、絶対においしいやつ…🤤
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手に持つと底はたわむくらいにパイ生地は薄い。一口齧る。端の部分、土手になりフィリングが溢れないよう守る重要な役割を担うパイ生地は、実に何層にも重なってきしっとした食感で存在を主張する。しっかりと端を噛み切ったその先には、反対に薄めの底の生地がさっくりと簡単に歯が通る。その上には見た目だけで柔らかそうな卵のフィリング。そこまで辿り着けば力を入れなくても重力で切れていく。
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フィリングのカスタード、卵の香りが非常に強い!パイ生地も口いっぱいに頬張ったつもりなのだが、卵の主張が何よりも勝っている。卵すごいや。
ふっと抜ける息に乗る卵の余韻すらおいしい…。舌で押しつぶせるような適度な硬さもあり、舌触りもいい。ただものじゃない。このフィリングで作られたプリンが食べたい。
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パイ生地もフィリングも甘さは控えめだ。慎まやかな甘さがカスタードの香りをより引き立てる。甘味同士の喧嘩をするわけではなく、お互いがお互いを譲り、少し距離を置いて見守るような優しさを感じられた。
口に入れてしばらくはカスタードで占められるが、後の方になってくるとパイ生地も自我が芽生え、総力戦を仕掛けてくる。後に残るはバターの風味。唇も少し艶があるリップクリームを塗ったような照りが出る。追いかけるパイ生地。その存在も強いものだった。
日本で一番、伊達じゃない。
おそらく、と店側で保険をかけているものの、このエッグタルトは絶品だった。ぱらぱらと崩れるパイ生地の掃除の手間すら愛おしい。おいしかった余韻に浸る時間に充てられる。
しかし、次回食べる時は広めの受け皿必須。おいしい!!と言った瞬間に小さな欠片が飛んだからだ。大惨事のカーペットでもう泣きたくない。
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