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南カリフォルニア

グアムで離婚し、向かったのはロサンゼルスの郊外の町へだった。

大手の日系旅行代理店のアウトバウンドの仕事に採用されたからだ。

グアムでの旅行代理店の仕事がとても楽しく快適だったし、
ロス近郊という都会にも住めるので、新しい生活に期待も希望もいっぱいだった。

しかし、私のこれまでの人生が一筋縄では行かなかったように、
今回も蓋をあければ、「こんなはずじゃなかった」ということのオンパレードだった。

まずは、就職したのは日本人なら誰でも知っている大手の旅行代理店だった。
よって私は、さぞかし高時給で好待遇なんだろうと勝手に思っていた。
しかし、入社後になってようやく知ることになるのだが、
その会社は知名度とは裏腹に、安月給でブラックなことで業界内では有名だったのだ。

そうは言っても日本の大手の会社だから、いろいろ住宅のことや新しい仕事を始めるに際し、手厚いサポートをしてくれるんじゃないだろうか、と期待していた。
だがこの時初めて、海外の日系企業では、
駐在社員と現地採用社員の間にまたがる、決して超えられない壁があるということを知ったのだった。

駐在社員であれば、赴任の際に会社が住む場所の手配なども全面的にサポートがあるし、ありとあらゆる手当もつく。

しかし、現地採用であるのなら、たとえ他の州から引っ越して働きに来るにしても、そういったサポートは一切ない。

それよりも根本的なこととして、これは各企業で差はあるのだろうが、
一般的に駐在と現地採用はたとえ同じような仕事内容だったとしても、
給料の差が恐ろしく開いているのだ。

私が配属された部署は現地採用のスタッフがほとんどだったのだけれど、
みんな会社からもうら給料だけでは暮らしていけないので、いくつかのバイトを就業後にこなしていた。

グアムも離島価格で決して、物価は安くなかったけれど、ロサンゼルスは相対的に、生活コストがかなり高くなる。
一番こたえたのは、当時ガソリンの価格が高騰し、
さらに長距離を車で通勤しなければならなかったので、ガソリン代がかなりかかってしまったことだった。
それに加えて車のローン、車の保険料、高い家賃となり、
支払い後何も残らないどころか、マイナスになる瀬戸際だった。

また、当時の私はインバウンドとアウトバウンド業務の違いがよくわかっていなかった。
グアムでのアウトバウンド業務は、普通の会社で言えば外回りの営業のような感じだったが、
それに対して、インバウンドは内勤の営業事務をしているような感じだった。
ちゃんと調べなかった自分が悪いのではあるが、
「こんなはずじゃなかった」という気持ちで日々いっぱいになってしまった。

物価が高い中での、少ない給料でのいっぱいいっぱいの生活。
その少ない給料での、自分が興味の持てない仕事内容…
そんな感じで、私の毎日は詰んでいた。

ガソリンの高騰は収まる気配もなく、
車関連の費用が、ほぼ家賃と同額ぐらいに迫るという状況だった。
さすがにこれではやっていけない、と思い、
どこか車がなくても生活できることろに、引っ越さなければ…と思うようになった。

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