しばらくつき合うことになった病
はじめに
重度の顔面神経麻痺から回復の途中にあります。誰かの役に立つかもと思って書いており、時々、加筆しています。
経過(発症から約6か月まで)
ある朝、目を覚ましたら、顔の半分が硬直して動かなくなっていました。年齢的にも最初に疑ったのは脳梗塞でしたが、どうもそういう感じではないので、近所の耳鼻科のクリニックに行ったところ顔面神経麻痺との診断が下りました。ネットで調べれば容易に見つかる情報ですが、高容量のステロイドを10日間ほど服用、これを飲めば少しはマシになるのかと思いきや、この期間は硬直がますます強くなるばかり、それから大きな病院に紹介を出してもらって受けた神経損傷の度合いを測るテストの結果は非常に悪くて、耳管開放手術というのを強く勧められました。
手術の必要性を強調していたのは最初にかかったクリニックの医師ですが、「鍼の効果はエヴィデンスがありませんよ」みたいな言い方をしてまして、それはなんだか患者の気持ちというものが分かってない発言だなと思い出されます。また、病院の医師の方は、「手術は私が希望するならやる、希望しないならやらない」という話でした。
その耳管開放手術というのは、早い時期にやればそれなりの効果がありそうだったけれども、クリニックと病院の間を紹介状を握って行ったり来たりしている間に、ひと月がすぐに過ぎてしまったものだから、タイミングを失ったのでしたが、何より、そんな大変な(大変に思えた)手術をしなければいけないのかな、これって、、、 という思いが強かったんですね。
発症から3か月頃には、パッと見た目では麻痺を患っているようには見えないところまで回復し、これは初期の予想よりは良いらしかったけれども、まだ、患側の目は完全に閉じず、飲み物は口からこぼれるという不自由さは相変わらずでした。
夜寝る時には、閉じない目が乾燥して傷むのを防ぐためには眼帯をします。バンドエイドを大きくしたような貼り付けるタイプのものや、「メパッチ」という便利な商品があるので、それを使っていました。
耳から首にかけての強いこわばりや、耳が塞がったような違和感が強く、異様に音が大きく響くのも苦痛、顔面神経というのは顔の表面だけを走っているのではなく、実際は頭から首まで影響があるためだろうと考えられます。
目が閉じるようになったのは、それからさらに一か月を要し、そのまぶたが閉じるようになったら、今度は涙目がひどくて、急激に目が悪くなったような感じがしました。そのように、症状は移り変わっていくように感じられました。
経過(発症から6か月以降〜現在進行中)
さて、発症から6か月頃には、思ったよりも回復が良いなどと楽観していられなくなりました。後遺症と思われる動きが出てきたのです。例えば、口を開くと目が閉じてしまう、何か食べようとすると涙が出る、頬の筋肉がかたくこわばり、患側に顔が引っ張られる、痙攣などです。
後遺症が起きてくることについては、ある程度予想していました。なにしろ、発症2週間後の予後判定の神経反応テストの結果が一桁で、軽症、中等症、重症の区分の中では、間違いなく重症だったからです。
6か月の時点で、かかりつけとなった病院の耳鼻科の医師からは、安静時の顔の左右差を少なくする処置は形成外科の担当となるが、適用は症状が固定した発症から一年後以降、今はまだ回復の途中なのでいじらない方が良いとのこと、耳鼻科の服薬は終了で、以後、経過観察のみとなりました。
では、これからはマッサージを続ければいいのでしょうが、それも望ましい形で行なっているのかどうか心許無い、そもそもマッサージを正しくやってこなかったから後遺症が出てしまったのでは?とも考えました。
以前、同じように顔面神経麻痺を患った友人からは、「(効果があると思われることは)何でもやってみたくなるよ」という言葉通り、私も、鍼、漢方、水素水、温泉、水素入浴剤、Healy、CS60、ネオヒーラーなどなどを試しました。どれが効いて、どれが効かなかったなどとははっきり言えません。ネット上には、いろんな情報があるけれども、重症の場合に有効な、信頼のおける情報がどうも見当たらないように思えました。軽症であったならば、何かこれが効いた! というものがあってもなくても短期間で治っていったのではないかというようにも思われます。
耳鼻科の経過観察と形成外科の処置の間を埋めるような何かはないのだろうか、元のようになるのは望めなくても、今より悪化しない方向でやれることはないか、それらを改めて探る必要があることを自覚したのです。
そうして、調べて、新潟医療福祉大学のK先生のところへ行き、改めて鍼治療を受けるとともにマッサージの指導を受け、定期的に経過観察をしてもらうことにしました。近くの医師を信頼せず(というわけでもないが)、交通費と時間をかけて、わざわざ行くまでのことはないのではないかと、さんざん自問自答を繰り返したあと、結局、このままでは筋肉が拘縮(こうしゅく)して終わりになりそうなことを危惧したからです。
重症判定、6か月以降のリハビリ
ここからは、私が習った内容のまとめです。誰かの役に立つのではないかと思い、書き留めておくことにしました。
顔面神経麻痺にかかると、顔の筋肉が動かないので、ほぐすために揉んだり、引っ張ったりして動かそうとしますが、これが後々問題を引き起こすわけです。しかし、動かない顔面は時に痛みとして感じられ、揉まずにはいられないというのが実際です。
指導していただいた手当法をまとめます。
やっていて工夫したこと、気がついたことを付け加えておきます。
① これは、顔面神経麻痺で通院していれば、必ず指導があると思います。コツは、力を加えないでやること。
② お湯で温めたタオルでなく、「こんにゃく湿布」がおすすめです。
③ この瞼を閉じる、開けるという練習がとても大事です。目を開けるのに、瞼を上げる動きができないと、それを補うために額の筋肉を動かします。特に健側の額の筋肉を使うようになります。なんとか垂れた瞼を上げようとする気持ちが、そうさせますが、これは間違ったクセです。額の筋肉を使わない、つまり、眉を上げないで目を開く練習をします。びっくりした時に、「白目をむく」表情をしますが、これを眉を動かさないまま、繰り返し行います。3秒開ける、3秒つむるの動作を10回、それを1日三回。メトロノームのアプリを使って、リズミカルに繰り返すとやり安い。
④ これは、ミラー・フィードバックという練習です。やや上方に構えた鏡を見ながら、正しい筋肉の動きを視覚を通して脳に覚えさせるつもりでやります。③の練習の後にします。それから、口を閉じたまま、目を開いたり、つむったりを繰り返す練習もします。目に行く神経が口に、またはその逆にと神経が混線していますが、ちゃんと伸びる方向に行った神経もあるので、目と口の共同運動が強くても、あきらめずに望ましい神経の方を使う訓練になります。
⑤ 「上唇挙筋」「小頰骨筋」「大頰骨筋」「頰筋」「口角下制筋」の5つの筋肉を伸ばします。これらは、唇の周りを取り囲むようにある筋肉ですが、一つ一つ、筋肉の上下に左右の指を当てて伸ばす、この動作を日に何度も行うようにとの指導がありました。
⑥ 歯磨きのついでにやってみるといいでしょう。
もちろん、これだけを参考にするのでなく、あなたに寄り添ってくれる専門家の助けを求めてみてください。
悪化を防ぐ
発症の直前の体調ですが、体の冷えが強くて、気温に関係なく悪寒を時折感じていました。それから、肩コリですが、デスクワークが多くて運動不足だと、肩コリなんて珍しくもなんともないと考えがちですが、肩こりって血行不良なのです。軽く考えない方が良い場合があります。
そういう体調のところ、発症の前日カフェで休んでいた時、古いエアコンからの風がいやに強く感じるなぁ、と、意識していました。これは、漢方医学でいう風邪(ふうじゃ)にあたるものではないでしょうか?
だから、現在は、体が冷えること、顔に冷たい風が当たることを極力防ぐようにしています。マスクは、案外顔が冷えるのを防いでくれます。また、就寝中は無防備なので、寒い時期にはバラクラバをかぶっています。
どのように考えているか
さて、細々と、でも長く続けてきたタロットを通して人に合う仕事も、顔がこんなで滑舌も悪いとなると休まざるを得なかったのですが、「あんな仕事をしてるから、そんな風になっちゃったのよ」と言う人もいたりして、、、 そうか、そういう風に見る人もいるんだな、と思ったり、色々と考えるきっかけにはなっています。
知り合いの中には、除霊、浄霊のできる人を紹介するという話もありました。私は、そういうのも「あり」だろうな、という考えなんですが、それならそれで、自分で知りたいよね、なんて思っちゃって、その話には乗りませんでした。
病院に通うようになってみると、世の中には、さまざまな病があって、それらを患っているさまざまな人がいることに改めて気づかされます。思いもつかなかった病気になったけれども、誰しも、突然のことに同じように感じるのかも知れません。
私の場合は、まだ回復の途中、マッサージを地道に繰り返したとしても改善するのは、ほんの一ミリでしかないかも、でも、それは大きな一歩に間違いありません。不自由が軽減していくことを目指していこうと思います。
もっと早い段階でK先生に会いに行っていれば違ったのでしょうか? しかし、それを言い出したら、町医者の服薬でなく、大病院でステロイドの点滴を受けた方が良かったのではないか(初診時選定療養費をケチった結果がこれだ)とか、手術が有効だったのではとか、キリがないでしょう。とりあえず、発症した時点でベストと思える選択をしたのは間違いないと考えているので、とにかく、これからのことに力を注ごうと思います。
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