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故郷

久留米市田主丸町
約10年この地にお世話になった


昔、まだここに住む前
田主丸という地名も知らない頃
ドライブでこの辺りを通るたびに
雄大な自然に惹かれていた

長く連なった山
広く広大な田畑
穏やかな気候

ここを通るたびに
車の窓を全開にして
思い切り深呼吸していた


植樹の町だからか
どの家にも立派な木がたくさんある
今では庭のない家が多くなってきたけど
ここは古くからの家も多いせいか
どの家も立派な庭がある

町の至る所に植樹を待つ樹木たちがたくさんあって
民家よりも圧倒的に樹木の方が多い


田主丸の代名詞的存在といえば河童
町の至る所に河童がいる

昔、ある作家がこの地を訪れ
川で勢いよく鯉を捕まえる男性が河童のように見えたことから
自身の本の中でたびたびその男性と田主丸の地について
書いたことが由来で河童で知られるようになったんだとか。
「鯉とりまあしゃん」
すぐ近くに住んでいたのに
一度も行かなかったことを今更ながら後悔する


田主丸は農業も盛ん
うきはから田主丸にかけて果樹園が多い

また麦作も多く
それは黄金色の絨毯のようで
風が吹くたびに
ナウシカの金色の野を思わせる所が素敵だった


高良山、耳納山、発心山、鷹取山から成る
東西約30kmに渡って連なる耳納連山

天気の良い日は山頂からハンググライダーが飛んでいる
田主丸はその麓に広がる町

どこにいても耳納連山の雄大さが目に入る

春は山桜で淡く優しい印象に
夏は緑が青々として光り輝き
秋は紅葉がとても美しい
冬は一転し険しくも荘厳な印象に

台風や大雨のあと
その雫が太陽の光を反射して
ものすごくキラキラ輝く
その光景が大好きだった
それが見たくてよく雨上がりの晴れた日にドライブした

どこに住もうと
その土地の素晴らしさに目を向けていきたい
ただ住むのではなく
その土地の空気を全身に取り込んでいきたい

それが『住めば都』ということじゃないだろうか


住んでいたアパートの鍵を大家さんに返した時
一気にこの地を離れる実感が湧いた

ここに引っ越してきたばかりの時
すぐ近くの郵便局さえ場所がわからなかった
当時子供たちが通っていた保育園のママさんたちには
本当にいろんな事を教えてもらい、感謝している
その人たちのお陰でここに馴染めたと思ってる


この10年、
私はずいぶんここに馴染んだ生活をしてきたように思う
こってこての日田弁だったのに
こってこての筑後訛りになり
もう日田弁がどんなだったのかも思い出せないぐらい

ここの気候が本当に好きで
小児喘息だった息子はピタッと治った
きっと彼らの故郷はここなんだろうなと思う


『故郷』は生まれ育った深い馴染みのある場所のことを言うけれど
生まれこそ違うが私も随分ここに育ててもらった気がする

あなたの故郷はどこですか?と聞かれたら日田と田主丸と答えると思う


故郷はいくつあってもいいと思う
それぞれに違う良さがあるから

何に対しても
良いところを見つけていこう
もちろん悪いところも足りないところもあるけど
それすら愛せるようになりたい


故郷
今までお世話になりました
たくさんの感謝を込めて…


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