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月影太陽光発電所 発電17日目 中級4

 今回は、太陽電池アレイ点検でのバイパス回路検査機器:バイパスダイオード・テスタ(日置電機社FT4310型)の動作を、逆方向特性を付加した太陽電池セルを使ってのシミュレーション解説#1になります。
(実機検証結果ではありません。月影個人のシミュレーション分析です。)
 このテスタはバイパス回路検査への期待製品ですが、以前に分析した太陽電池アレイ絶縁抵抗計より、困難な測定にチャレンジしています。なお、測定結果は日射変動の影響を受けるため、一定以上の日射変動時は点滅機能で知らせてくれますが、日射計はついていません。
注)住宅用太陽光発電の所有者は、保守点検の責任があります。太陽光発電は、知らない間に絶縁劣化や影がかかって劣化が促進する等のリスクがありますので、消費者安全調査委員会の調査報告書等でバイパス回路等の点検必要性をご理解ください。

・バイパスダイオード・テスタ(日置電機社FT4310型)概要と原理方式
 太陽電池アレイの保守点検において、バイパスダイオード回路の点検機器として、上記報告書:本文P.125に、バイパスダイオード・テスタ(日置電機社FT4310型)が紹介されています。同機は、最大DC100Vを、測定日射時のストリング短絡電流(Isc)に保護用定電流リミッタ回路を介し、ストリング出力負極⇒正極方向に、パルス的に印加します。
(電圧・電流の異なる点2回の測定を実施。日射変動チェック機能はありま  すが、日射測定は付属していません。アレイ短絡電流を計測し、日射変動
 をチェックしていると推定)

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なお、DC100Vのパルス電圧は、バイパスダイオードが正常であれば、太陽電池セルに逆方向電圧は微小ですが、バイパスダイオードが開放故障した場合は太陽電池セルに逆方向電圧が印加されてしまいます。
この為、FT4310機の取説注意事項欄に『降伏電圧が100V以下のクラスタは正しく判定できません』と注意が記載されています。
 しかし、太陽電池モジュールにはクラスタ降伏規格はありませんし、ホットスポット現象を解説しているJISC8990では、電流制限型セルは逆方向電流が非常におおきいモジュールの存在も示しています。
逆方向電流がおおきいモジュールは正しく判定できないのでしょうか?

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日置電機殿H.P.の、FT4310機の原理説明もあるのですが、太陽電池のI-V極性図で測定原理の要点を説明してみます。
・FT4310型のバイパスダイオード開放故障検出方法 
 バイパスダイオードの開放故障は、太陽電池アレイの逆方向に電圧を印加し、アレイ抵抗値(Rbpr)で判定します。電圧を印加し、電流計測をすれば抵抗値は計算できますが、太陽電池は発電電流があるため、発電電流分をキャンセルする必要がある為、発電電流の計測をしています。
(発電電流計測にアレイを短時間短絡し、短絡電流Iscで測定)
また、バイパスダイオードを数10個直列に測定するため、順方向電圧降下分を抵抗値から除外も必要なので、異なる測定電圧・電流点で2回測定することでアレイ抵抗値(Rbpr)を計算する手法にしています。
 バイパスダイオード(BPD)が正常導通時と断線時の、2か所の測定点を緑でプロットしてみましたので、電圧制限型と電流制限型モジュールの差異を下図で確認してみてください。
・電圧制限型モジュールの測定点

BPDが正常時(左図)は、印加電流はBPDに流れます。このため、測定点は逆方向電圧に依存せずに、電流リミット点I1、I2で決定され、2点間の傾斜がRbpr値になります。
   Rbpr=(V1-V2)/(11-I2)
BPDが断線時(右図)は、印加電流は太陽電池セルに流れます。このため、測定点は逆方向電圧に依存し、電流リミット点まで電流は流れずに、2点間の電圧差での逆方向電流差になります。
   Rbpr=(V1-V2)/(セルの逆方向電流差)
電圧制限型のモジュールではセルの逆方向電流差が小さいことから、BPD導通時と断線時の差の抵抗値差が大きく、検出可能だと推定できます。

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・電流制限型モジュールの測定点
BPDが正常時(左図)は、BPDに電圧印加されるので、同じです。
BPDが断線時(右図)は、印加電流は太陽電池セルに流れます。しかし、電流制限型のモジュールの測定点は、電流リミット点I1、I2に依存し、BPD正常時と同じく、2点間の傾斜がRbpr値になります。
   Rbpr=(V1-V2)/(11-I2)
つまり、電流制限型のモジュールは、セルの逆方向電流が大きいことから、正常時と断線時のRbpr差異が少ないことになり、セルの逆方向性能に依存した計測になりかねません。
また、『断線していても、導通(正常)と判定をしてしまう可能性』があるのも課題になることが考えられます。

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上記のことから、太陽電池セル等価回路を使用し、異なる直列数でシミュレーション計測手法的に検証することに価値があると月影は想います。
説明が長くなってしまったので、次回から、等価回路モデルとシミュレーション結果の説明をしましょう。

・今日のひとこと
 この製品は期待のテスタなので、日置電機さんの測定情報が欲しいな~。
 日射変動の影響キャンセルも必要なのに、2測定間の時間問題(1パルス
 5msecを、時間間隔を置いて測定?)など、測定確度の判断に必要な情報   が少なく、次回のシミュレーション結果も仮定でしか予測が書けません。
  採用されている方はコメントいただけるとありがたいです。。。
降伏電圧が100V以下のクラスタは正しく判定できません』を理解でき
 ないのは、月影が4流エンジニア野郎だからかな~。。。若干トホホ。

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素浪人シルバーエンジニア 月影四郎と申します。幕府学問所を卒業後、仕官したお城づとめも終了し、素浪人として歩き始めました。  皆さまに楽しんでいただけたらとふと思いたち、徒然なるままにnoteデビューした次第でございます。