先生と言う名の生き物は存在しない
「なあ、あの先生の授業つまんなくね?」
荷物を片して教室を出たときに、不意にそんな言葉が聞こえてきた。
しかし私は気づかないふりをして歩いて行った。来たくもない学校に来て、会いたくもない私に会って、受けたくもない授業を受ける。愚痴ぐらい容認しなかったら、生徒が潰れてしまう。
と言うか愚痴に対して態々文句を言う奴っているのだろうか?
そんなことを半分、次の授業のことを半分くらい考えながら私は、次の教室に行った。
チャイムと同時に教室に入り、号令をさせてから授業を始める。
その日の授業では、私が話している最中に駄弁っている人がいた。無論私は叱って、その生徒には廊下に出てもらった。
以前は叱るだけで済ましていたが、それだとまた駄弁られた。叱られれば苛つくだろうが、罰を受けて成長することも多いと、その日から私は、罰を導入することにした。
いや、一回目から出て行かせるのはやりすぎじゃね?とか言われそうだが、そう何度も何度も駄弁られていれば普通に他の生徒の授業妨害にもなるし、ノートは取れずとも廊下から授業なんて聞けるだろう(きっと)
「気をつけ、礼。ありがとうございました」
授業を終えると、私は駄弁った生徒を注意し、荷物を片付けて教室を後にした。
「意味分かんない、うるせえのはお前の叱る声だっての」
そうまた私への愚痴が聞こえてくる。直接ではないが言わせてほしい。……だったら最初から駄弁らないでよ。
「気をつけ、礼。お願いします」
その号令で始まった授業。静かな空間に私の声だけが響く。……しかしそれも最初のうちだけだった。
また関係の無い駄弁り声が聞こえてきた。後ろの席だったとしても聞こえる。普通に聞こえる。
私はまた、その生徒らを叱った。……しかし、今回はいつも通りにはいかなかった。
「だったらもっと面白い授業にしろよ」
生徒が言い返してきた。私は少し驚いたと同時に、また苛立ちを覚えた。
こちとら毎日必死こいて授業内容考えたり課題考えたり成績のこととか考えたり業務したりetcしてますけど?自分で選んだ職業とはいえ私だって頑張っている。
なのに何故そんな「お客様は神様だろ」みたいなことを言われなければならないのか。
私は怒りをぶつけないようため息を吐いてから
「駄弁った上に授業の不満を言うのならやる気は無いですよね、出て行ってどうぞ」
と生徒を廊下に出した。え無いよねやる気。駄弁ってるし集中してなかったし。こっち向いてないし……。
「……て感じなんだけど、どうかな?」
「これ本当に先生の感情を捏造で書いたの?」
「え、うん。だって先生も人間でしょ?こんな感じのこと考えてるかなーって」
「まあ確かに。……でも懐かしいね」
「うん、あの時の私達ってさ」
「先生って言う生き物がいると思ってたよね」
「人間なのにねぇ」
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