意味なんてありません
ここは戦いの世______どうもみなさん初めまして。名前は捨てたので自己紹介がしづらいです勇者(?)です。
自分の仕事は魔王を倒すこと……ではなく、最近荒れ狂っている魔物を倒すことです。魔王はいません。
そして自分は強いです。強敵もワンパンです。
そんな自分には大切と思う人がいます。最近できました。その人も同じく勇者で、自分ほどとまでは言いませんが、かなり強かったと思います。
そんな彼はよく言います。
「お前は強いな!俺も頑張らなくちゃな」
彼は本当に努力家だと思います。努力せずとも強かった自分とは大違いです。
しかし彼もやはり敵にはやられます。でもそのときは自分が助けてやります。
「いつもすまないな。お前に助けられてばかりだ」
「自分が好きでやっていることだ。気にすることはないさ」
先にも言ったように、自分は強いのです。強い者は弱い者を助けて当然です。
いつもそれの繰り返しでした。特に飽きたとかは感じません。同じ作業でも、出てくる敵はみんな違います。
それに、彼が居れば何でも楽しいと感じました。
そんなある日のことです。彼が死んでいました。本当に呆気なかったです。当時彼を見たと言う別の勇者に聞いてみると、昨夜……自分が寝てる間ですね。に、敵を倒しに出掛けていたのだそうです。それで強敵に出会い、殺されてしまったのだそう。
彼を殺すなんて、強敵もやりますね。
と思っていたのですが、やはり自分と比べてしまうととても弱かったです。ワンパンで倒せました。彼はこんな奴に殺されたのかと思うと、自分は彼を過大評価していたのではないかと思いました。
自分は彼の死体の元に戻り、そこの地面に穴を掘りました。お墓を作ってやろうと思ったのです。
人一人分が入れそうな穴を掘り終わると、自分は彼を抱き上げました。すると、彼の服の袖から、四つ折りにされた紙が落ちてきました。上の方がベタついていたので、袖の裏側に糊でくっつけていたんだと思います。
自分は彼の遺体を穴に置いてやってからその紙を見ると、何か書かれていました。
1枚目
『あいつは強い。才能があるんだろう。努力しているところなんて見ない。夜、寝ている間も特訓なんてしていなかった。しかし、俺は弱い。どれだけ特訓しても敵には勝てないし、あいつにも勝てない。逆に、当然のように守られる。俺を煽っているように見えた。憎かった』
2枚目
『そうだ。あいつが知らぬ間に死んでみよう。いつも俺を当然のように守っているのに、守れなかったら、このときばかりは俺の勝ちだ』
これは遺書なのでしょうか。自分は悲しくなりました。彼に憎まれていた、彼を思いやってやれなかった。
彼がここに書いたことに、間違っていることはありません。
自分は努力をしたことがありません。彼を守るのも当然と感じていました。
……そして、彼の言う通り、今回は負けてしまいました。
……自分は強いです。“力は”
しかし
「何だ、弱いじゃないか」
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