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樹に聴く―編集部より

サワグルミは種子を川に落として水に運んでもらう。
ササは森の奥まで根を伸ばし、競争率の低い場所の栄養をかき集める。
ノリウツギは幹を倒して地面を這い、根を伸ばして数を増やす。
数十年、ともすれば数百年に一度の芽生えのタイミングを逃さないよう、
親は子どもに個性的な能力を持たせて旅立たせる――。
大地に根を張って生きる樹々の、驚きの生存戦略を描く。

芽生えが育ち、若木になり繁殖活動を始め、そして老樹となり、朽ちて他の植物の糧になる。
そんな樹木の一生は、似ているようでいて、種によりまったく異なる道を辿ります。
菌類と協力したり、枝の伸長や開葉のタイミングを器用に調節したりと、
環境や天敵に対応して生き抜く樹々の姿は非常に面白く、飽きることがありません。

本書では日本列島で見かける12種の樹木をテーマに取り上げ、彼らの知られざる生活史を、たくさんのイラストとともに紹介します。

著者の清和研二氏は、北海道、東北の森で暮らし、数十年にわたって樹木の生き様を研究してきました。現在は東北大学で教鞭をとるかたわら、全国各地で森林に興味を持つ人や林業関係者に樹の声を届けています。

樹木と多種多様な生物、そして人間がともに心地よく暮らしていくためには、樹の声を聴き、樹が懸命に生きる姿を見ることが大切です。
秋の行楽シーズン、紅葉狩りが一層楽しくなる一冊です。

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