山を歩くスピードについて考える

山歩きをするときのスピードは、どのようなコースを、どのような行程で歩くのか、何人のパーティで歩くのか、どの程度の山行体力の持ち主と歩くのかで、臨機応変に変える必要がある。
大人数の山行にゲスト参加する際などは緊張する。どのようなスピードで歩けばいいか、わからないからだ。

たとえば、山岳会の日帰り「トレーニング」山行では、負荷の高い行程を、日没ぎりぎりの時間で設定することが多い。
参加者の山行体力はバラバラで、人数も10名を超えると、果たして日没までに計画通り歩きとおせるだろうか、時間切れになった時のエスケープルートは適切か、休憩時間のとりかたは小休止のみ・行動食のみか、大休止のランチタイムを設けるのか、参加者はもれなくヘッドランプを携行してくるだろうか、などと考えながら登山計画書を作る。
事故なく終われば、参加者の満足度は高いが、リーダーは、リスクを負う。

参加者の体力差があるパーティでは、はやく歩ける人は、一番遅い人にスピードを合わせなければならないので、ストレスがたまる。
そのストレスをリーダーはどのように解消しつつ歩き通すのか。歩くスピードの遅い人には先頭のペースメーカーといっしょに歩いてもらうと、取り残す心配はなくなるが、はやく歩ける参加者のストレスが高まる。遅い人が最後尾についてもらう場合は先頭を歩くペースメーカーは、遅すぎず(体力のある人がストレスを感じるほどにはスピードを落とさず)、リーダーがケアしながらいっしょに歩く最後尾の遅い人と距離が離れすぎないくらいにはゆっくりと歩く必要がある。
この塩梅が難しい。リーダーからペースメーカーに指名された場合、歩き始めの1時間、2時間は、最後尾から、参加者の歩きぶりをじっと観察しながら、日没前にゴールできる適切なペースを考えるようだ。
単独か、もしくは気心も山行体力もよく知っている友人たちとの気ままな山行が多い私などは、山岳会山行リーダーたちの、リスクを取りながら、多様なタスクを参加者たちに気取られずにこなしていく姿にいつも頭が下がる思いがする。

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