イギリスの貴族はなぜ領地を野生に戻したのか

南イングランドで、広大な土地を先祖代々所有して、農場を経営していた貴族が、土地を耕すことを止めて、野生の豚(著者たちはイノシシを導入したかったのだが、犬の散歩をする近隣住民が嫌がったらしい)や、鹿、在来種の野生馬、ロングホーン牛などを領地に放して20年。
何もしないでほったらかしにしておいたら、魔法にかかったように、ビクトリア朝以前の、中世の自然が復活して、野生動物の楽園になった様子を、本人(というか、領主の妻)が自分でもびっくりしながらリポートしている本を、今準備している。

たった20年で、農薬と除草剤漬けの近代的集約的に運営されてきた農場が劇的な変化を遂げ、中世の原野と森に戻っていく過程は、今、大きなうねりになりつつある「動態的景観生態学」の教科書を読んでいるようだ。自然が再生していくダイナミックな動きを目の当たりにして、著者は、イギリスで未だに力を持っている、静態的な箱庭自然保護の考え方へのいらだちを募らせるが、そのいらだちを抑え、この野生化プロジェクトを成功に導くためのキーパーソンを一人ひとり説得していく様が鮮やかだ。
百聞は一見にしかず、ロンドンからすぐのところなので、機会を作って訪ねてみたいと思っている。

下記に、著者のスピーチと自然の変化の様子の動画のリンクを貼っておく。
https://bit.ly/2lXvRWW

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