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丹沢の県境山稜を行く

2023年アースデイは、道志川のほとり、「道の駅どうし」から、丹沢山地の西端である山梨・神奈川県境の稜線を歩いた。あいにく、どんよりとした曇り空に、絶え間なく響く、東富士演習場からの砲声で、静かな山歩きとはならなかったが、8時間の山行中、すれ違ったハイカーは数人。ふもとのヤマブキから稜線のマメザクラ、ミツバツツジまで、満開の花が咲きほこり、落葉広葉樹の森は、樹種ごとに変わるさまざまなトーンの新緑で、山肌を染め上げている。

小さな双耳峰がかわいらしい鳥ノ胸山(とんのむねやま)のピークを踏んでから、雑木ノ頭、平指山をへて、林道が通っている浦安峠にいったん降りてから、大界木山に登り返す。ここから、菰釣山(こもつるしやま)までの約5キロが県境山稜の一部だ。丹沢の懐の大きな山々の連なり、そして大きな富士が晴れていれば見える。稜線上には、1922年に植栽された百年ヒノキが残っており、「天然移行林」の看板が立っている。

城ヶ尾山、中ノ丸、ブナ沢ノ頭といった稜線上の小ピークを踏みながら、菰釣山山頂まであと20分ほどのところにある避難小屋につく。立地が良いのだろう、避難小屋特有のこもった湿気が全くなく、清潔でカラッと乾燥したきれいな小屋である。食料、水、寝袋を担ぎ上げて、泊まってもよいと思った。菰釣山山頂からは、山中湖の湖面の向こうに裾野から立ち上がる大きな富士が望めるはずなのだが、霊峰はあいにく雲の中だった。

西丹沢というと、小田急線、御殿場線からのアプローチが多かったが、数年前から、道志川の両岸に立ち上がる山々の手軽さと人気(ひとけ)のなさにひかれて、道志村を山行アプローチ拠点として、しばしば訪れている。富士山の眺めが大きく近いのも魅力だが、横浜市が管理する道志水源林の広葉樹林の季節ごとの変化も山歩きの楽しさを増してくれる。

この季節は、道の駅で求めることができるワラビ、ワサビの花、コゴミ、タラの芽、ヤマミツバなど、新鮮な山菜も下山後の楽しみだ。

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