東京都水道局の森

この夏は、東京、埼玉と山梨にまたがる奥秩父主稜線の山を歩いていた。
多摩川の集水域の最源流部で、東京都水道局が、水道水源林として、ここ100年ほど森づくりをしている24,000ヘクタールの一部だ。標高1,700mから2,000mほどのなだらかな稜線を持つこの山域は、かつては、夏山放牧や、焼き畑が行われていたのだろうか、草地が発達している。
なだらかな稜線に草地とくれば、高山植物が咲き誇るお花畑を思い描くが、残念ながらその姿はみられない。おそらく暖冬で淘汰されずに生き延びた鹿が高山植物を食べてしまうのだ。丹沢などでは、シカが食べない灌木の馬酔木だけが不気味に茂っている稜線があるが、ここでは、丸葉岳蕗(マルバダケブキ)や毒草のバイケイソウの花が、夏の森を彩る。
若いシカの群れにであうと、ピキュイーンという、甲高い笛の音のような警戒音を出して逃げていく。観光地の奈良などでシカの群れに囲まれたことはあるが、奥秩父の稜線で、数十頭のシカの群れに出会うのは初めてだ。
青梅街道の国道411号線上にある柳沢峠から、板橋峠、倉掛山へ。また、黒川鶏冠山や大菩薩嶺へ。あるいは、国道411号から作場平登山口まで林道を上がってから、笠取山、唐松尾山へ。すべて日帰りで運動靴でも歩けるカラマツ、モミ、ミズナラなどの美しい森が広がる散策路だ(板橋峠には見渡す限りソーラーパネルが設置されていてびっくりするが)。
昨年秋の豪雨で林道が崩落して車両通行止めのところや、沢が山道を押し流してしまっていて、沢渡渉が必要なところなどもあり注意が必要だが、初秋の休日、水源林の散策をお勧めしたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?