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上州武尊山(じょうしゅうほたかやま)雑感

夏の一日、人が少ない群馬県の武尊山に登ってきた。武尊山にアプローチするのは4回目なのだが、はじめて標高2158mの主峰沖武尊のピークを踏むことができた。1度目は秋の武尊牧場から、2度目は、川場谷を沢遡行で、3度目は冬の川場スキー場からアプローチしたのだが、それぞれ、悪天候や、ハイマツとシャクナゲの灌木地獄、猛吹雪に、山頂までの道を阻まれた。4度目の正直である。

今回は、須原尾根分岐手前の林道沿いにある駐車スペースまで四駆車で乗り入れ、最短距離で沖武尊、剣ヶ峰山(西武尊)の稜線を歩く周回コースにした。武尊山は、日本百名山、新・花の百名山などに選ばれている名山だが、隣に人気の谷川岳があるせいか、登山者は少ない。川場谷から山頂まで詰めるパーティは、ますます少ないだろう。今回も、朝、雨が降っていたせいか、登山道の所々がぬかるんでいる。噴火によってできた山は、富士山や浅間山など新しい火山は、水はけがよく、登山道にぬかるみはできにくいが、武尊のような古い火山は、雨や雪が山を削り、豪雪地帯特有の険しい山容になる(写真1)。登りに選んだ須原尾根も、5か所ほど鎖場があり(写真2)、垂直に立った岩は濡れていて滑る。ふだん、穏やかな山容の山を歩くことが多く、ガイドには「しっかりしたホールドあり、鎖をつかまなくても登れる」と書いてあっても、つるっと滑ったら重篤な事故につながるので緊張する。

武尊山から剣ヶ峰山までは、夏の高山植物が咲き誇る稜線を歩く(写真3)。難所は下山路。剣ヶ峰山から、武尊沢を渡渉するまでの急な下りがいつまでも続く。登山地図には、所要時間1時間と書いてあるが、たっぷり水分を含んだ粘土質の土、濡れた木の根、ぬめった岩と三拍子そろって、つるつる滑る。水流で削られた大きな段差を木の根やササにつかまりながら、そろそろと時間をかけてくだっていく。1時間半以上かかって、やっと武尊沢の渡渉点にたどり着く。
やれやれここからは穏やかな山道だと思い、休憩していると、この山で聞き覚えのある雷音が。すぐに土砂降りがやってくるサインだ。転げ落ちるように、痛む膝をかばいながら、駐車場まで下り終えたとたん、雨が降り出した。天候が猫の目のように変わる武尊山、十分な装備と時間の余裕をもってアプローチされることをお勧めする。

1 雲に覆われた武尊山の険しい山容

1_雲に覆われた武尊山の険しい山容

2 鎖場を登る

2_鎖場を登る

3 武尊山から剣ヶ峰へのお花畑の稜線

3_武尊山から剣ヶ峰へのお花畑の稜線


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