夜の北千住西口逍遥

東京の玄関口と言えば、南は東海道の品川、北は中山道の板橋、西は甲州街道の新宿、そして、東は日光街道の北千住だろう。江戸時代、ともに日本橋起点の主要街道の第一の宿駅だった。16世紀末、隅田川に最初にかかった橋が、千住大橋だが、物資の集積地として、また日光街道の第一の宿駅としての賑わいは、多くの鉄道路線が乗り入れる現在でも変わらない。

仕事場の築地からは地下鉄日比谷線で20分足らずだが、なぜか、北千住駅で下車して、街歩きをしたことがなかった。この新年、機会があって、夜の北千住を居酒屋に立ち寄りながら散策した。

飲食店の密集度合いが高いのにまず驚く。そしてチェーン店もさることながら、この地で長年、店を開いてきた独立系店舗が多い。西口アーケードから右折して旧日光街道に入ると名店「大はし」がある。広々とした厨房がカウンターから見渡せて、気持ちよく働く調理人の姿がいい。千住の魚市場から仕入れた食材でつくった煮魚、刺身がうまい。大きな店舗なのだが、家族みなで力を合わせて働いているようすが立ち居振る舞いから伝わってくる。駅を出て、西口アーケードを左に入ると、居酒屋がびっしり軒を連ねる通りがある。東京の西側でいえば、中野駅北口に近いだろうか。

路地の中の一軒にはいると、珍しい生ホッピーを出してくれた。さっぱりした辛口の酒の熱燗は凍える冬の夜にはありがたい。

コロナ発生から3年。支援することもかなわず、多くの独立系飲食店が店を閉じ、夜の街が寂しくなった気がする。家飲みだけの生活から、そろそろ店で飲食することを始めてもよいかなと思っている。

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