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三峯神社にオオカミを訪ねる

秩父、奥武蔵、奥多摩の山を歩いていると、山腹や山頂に、江戸時代の古いオオカミの石像を祀ってあるのを見かける。山畑の多いこの地方では、畑を荒らす鹿や猪を食べてくれるオオカミの群れは、ありがたい存在だったのだろう。また、送り狼という言葉は、暗くて足元の悪い山道を親切に家まで送ってくれたオオカミに感謝する意味だったようだ。

今回訪問した三峯神社の狼は、国生み神話のイザナギ神、イザナミ神のお使いの山犬である。広大な境内には、三峯神社のご眷属であるオオカミそのものを祀った社である御仮屋神社から、三峯神社奥宮である妙法ヶ岳山頂まで、15カ所に狼の像が祀られている。

かつて修験者しか近寄らなかった山奥にある三峯神社に、荒川沿いの大輪の集落から始まる表参道からとりついた。二抱えもある大きな杉の並木を標高差700m、2時間半ほど登ると鎌倉時代の武将畠山重忠が植えたという樹齢800年の杉を従えた拝殿のある境内に着く。そこからさらに1時間半ほど山道を上ると奥宮だ。尖った岩山で眺望が素晴らしい。この山頂には10体ほどの狼の石像がある。

現在は三峯神社までバスやマイカーでアクセス可能だが、昔の参詣スタイルにこだわって、裏参道の山道を2時間ほど下って大輪の集落に戻った。途中、荒川の激流に流れ落ちる見事なくの字滝や、多段滝を鑑賞できた。
20世紀初めに日本では絶滅したオオカミだが、低山ハイキングでは意外に身近な存在だ。

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