生命薄弱

病巣を取り除くように過去を抜き出して
捨て去ってしまっても追い縋るように戻ってきてしまう
私を捨てないでどうかどうかと
血まみれの手に摘出した過去
茫然自失のまま海に運ぶ
流されて波に飲まれ沈んでいく
何も見えない深海まで深く深く
私を捨てないでどうかどうかと
小さな小さな罪悪が膨らんでいく
私が過去で私が未来
癒えぬ傷は癒えぬ傷のまま
私を捨てないでどうかどうかと
縋る私はどうかしているのだ
取り返しのつかぬ過去が未来につながる
生命が静かに音を立てて真夜中を刻んでいく
痛みと引き換えに生きているみたいだ
弱々しい感情に抗うことが難しかったら寝てしまおう
そしてもう二度と起きなければいいのに
生命に重みを感じない
重力に逆らうように浮遊する
空に浮かぶ人たちが解放されたと両手を上げる
空は祭りだ轟音だ
踊り狂え熱狂狂騒強風に晒されて
気づけばいつものように床に這いつくばって
凍えそうな身体とそれに対する皮肉のように汗ばんだ皮膚
落ちていけばそのまま窒息して海に辿り着けるかもしれない
そうしたら
そうしたら
何が起こるかな
何も起こらず
溺死体ができるだけ
文字通り生命薄弱
吹いたら飛んでいってほしい魂よ


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