キリコの憂鬱2

何度も焼いたトーストは黒く染められて
私の憂鬱がそこにあるように思えた
静かな不満が何でもない顔をする私に
怒っているかのように責めるかのように

回り続ける洗濯機の音が耳障りな何もない日は
底にいるような気がして酷く心地良い
天気の良い日に死にたくなるように
煩わしい苛立ちに安堵する日があることもある

大半は誰かにぶつけたい感情の塊を見つめているだけだけれど
笑顔で過ごす事に慣れ始めて愛想を無料で売っていたら
肋骨が折れるような音がして違和感を覚えて振り向いたりして

何でもないよと笑ってみるとほらまた何かが折れる音
何かが折れて何かに笑って何かが折れて何かに笑って
気付くと壁に笑いかけていた

焦った私は洗面所に行って鏡を見てみた
顔面が揺れている、歪んでいる、笑顔に侵されていた
私はどんな表情で笑っているのかしら

そんな風に個室に閉じこもってみたら陰口が壁やドアや床や便器から這い出てきて
あざ笑う世渡り上手の世間話に悪口を言い合える化粧直しが聴こえてきて
何でもない言葉が私の胸を突き刺していった
爪を噛む癖はずいぶん前に治ったはずなのに
血だらけのキーボードが私から私自身さえも遠ざけていった
孤独に愛想を上塗りしても身体が重みで軋むだけ
笑顔が私を支配するだけ
孤独に孤独を重ねると私は何かと同化したような気になって
こんな風に名もなき日に落ち着きを取り戻す
私は笑顔が嫌いだ

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